過去の、もう会わないであろうひと#001〜CADを愛するふわふわ派遣女子

 人生には一体何人の人が通り過ぎていくのだろう。
 もう顔も名前も思い出せないような人々、ある一時期を濃密に過ごした人々が過去にも、そして未来にもたくさんいて、もう会うこともないのかもしれないし、再会することもあるのかもしれない。まさに一期一会とはよく言ったものだと思う。
 私にとって「棚卸し」のnoteでは、過去に出会った人について考えて書いてみるのももしかしたら意味があるのかと思って書いてみようと思う。

思い出の中の派遣社員:CADを愛するふわふわ派遣女子

 あるひょんなきっかけから思い出した人がいた。それは10年以上も前に、CADオペレーター(図面を書くためのソフトを操作する人=図面屋)をしていたときのこと。数ヶ月の間ある土木系の組織設計事務所で鉄塔の図面をひたすら書いていたのだけれど、その時に一緒に働いていた派遣の女性がとても風変わりで素敵な女性だった

AUTOCADというソフトと彼女

 CADはAUTOCADという一般的なソフトを使っていた。鉄塔(鉄骨)の図面というのは、詳細を書くにあたって結構めんどくさい。例えば、ある部材がクロスしているような図面の詳細を書く場合、手前にある部材と後ろにある部材の前後関係があって、後ろ側にある図面の重なりを消すという作業が大量に発生する。
 その大量に発生する「線の一部を消す」という作業は、普通の人はひたすら一つずつ消していくのだが、その彼女は、まとめて消すボタンを自分で作っていた。それを使うと、まあ「魔法のように気持ちよく」ポチポチポチポチ(マウスの音)、後ろの部材の線が消せる。ブラボー!
 当時、AUTOCADはLISPというプログラムで書かれていて(今はどうか知らない)、少しプログラムを書けば簡単なカスタマイズができ、自分流ボタンなども作成できる。それまで長らくAUTOCADを使っていたが、彼女に会うまでそんな技があることは知らなかった。

「可愛い♡」からくるすごい技

 LISPといえば、言わずとしれた伝説のプログラム、カッコだらけでちょっと近寄りがたい印象さえあったのだが、彼女は理系の人でもプログラマーでもなんでもなく、「CADって可愛くないですか〜??♡♡」という感じで、色々その愛するAUTOCADをいじっているうちにいつの間にか習得しちゃった♡ という、なんとも不思議ちゃんであった・・・。

 当時は私にも事情があって色々なところで派遣の短期仕事をしていて、CADの仕事に限らず事務職などたくさんの若い女性の派遣社員たちと一緒に働いたが、大抵は毒々しい(失礼!)組織を作っていて・・いわゆる派閥とか対立とか。ランチの問題とか・・そういうのとは無縁なその彼女、とても気が合い一緒に楽しく働いた。彼女はとても仕事にも真面目に取り組んだので、その会社から社員にならないか?と誘われたけれど、いいえ、わたしは派遣社員でCADを操ることを愛している。ときっぱり断ったのである。

 今あの彼女はどこで何をしているだろうか。やっぱり、AUTOCADを駆使してどこかで図面を書いているのかなあ。

 名前も顔も思い出せない素敵な人のことをふと、思い出した自粛の朝であった。

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