妥協のないモノ選びは、自分の世界観を再認識すること。
住む場所、仕事、学校、家作り、どんな趣味にせよ、日々の些細なことにせよ、「選択する」ということ、それは、自分の価値観、つまり世界観を表現することそのものだと思います。「選ばない」ということも含めて。
今回、全く知識のない、「自転車」それもロードバイクにカテゴライズされるモノを決定するまでに再認識したこと。
私にとっては大事なプロセスだったので書いておこうと思いました。
自転車を探し始める
少し前から、弱虫ペダルの影響?もあって、春からサイクリングしたいなと思い始め、自転車を探し始めました。
(もちろん、レースするつもりではないし、あの世界観は、私のそれとはちょっと違うもの。)
しかし、コロナの影響で、パーツの供給が少ない上に、自転車の需要が増えているらしく、本来なら今の時期、まだ選択肢はあるはずなのに、今年はすでに品薄らしい。
さらに私の身長で乗れるサイズが限られていて、どのメーカーも、人気の色は売り切れだったりサイズは完売だったり・・・。
さて、どうしよう。
消去法的な選び方
まずは、「消去法的に」選んだバイクがありました。
消去法的に、というのはつまり、条件から絞り込んで行くということです。この場合、私が乗りたい自転車のジャンル、その中で、乗れるサイズ、さらに、存在する中で、好きな色(マシな色?)手に入れ方。複数あれば、買いやすい場所?それから、値段の安い方。店員の勧めるほう。とかね。
でも、これが私にとっては、ちょっと違うやり方だったなと結果的に思ったのです。やりたいことを曇らせる要因だったなと。
今にも買いそうだったバイク。
消去法的に選んだバイクを関東のお店の在庫で見つけ、メールで色々話を聞くとすごくお勧めだと。しかも、札幌まで送ってもらって販売することが可能。迷いました・・。
在庫がなくなるというプレッシャーで焦ったけれど、決断できない自分がいました。
決断できない。
いくら条件に合うからといって、安くもない買い物、ましてや楽しもうと思っているギアを、実際に見ずに買うのはちょっと・・・・
そして別のお店に行ってみることにしました。
そこは、何か別のモデルでもいいから実車を置いていないかな・・と期待せずに行きました。
あるお店で、さらなる情報と誘惑とで頭がパンクしそうになる。
そのお店は以前にも行ったことがあり、そこで買ったカバンを持っていたら、これはあの時の〜〜〜 と、店長さんがにこやかに話しかけてくださいました。
もともと、そのお店はロードの専門店ではなく、BMXとかファットバイク、MTBがメインのお店。
それもあって、そこにいた常連のお客さんからも、ロードバイクよりファットとか、MTBの方がいいんじゃない?と言われたり、店長さんにもそのあたりを勧められ・・・・・
確かに、ファットバイクなら雪道も走れて札幌なら楽しいだろうなあ、とか、MTBの方が札幌だったら使う機会多いですよとか、わざわざロードなの?という感じ。
そんな言葉に、だんだんと流され・・・・
情報も短期間に詰め込みすぎて、整理できていない。何を買っていいか、もうわからなくなりました。
それで、妥協で何か買うのなら、コレだ!と思うバイクが出てくるまで、買うのはやめよう、と決めました。
ただし、数年かかるかもしれない。
お店での小さなミラクル
最初にお店に入った時、大晦日から108杯のサービスということでコーヒーが配られていたのだけれど、私はお店の名前にちなんだ数字の順番だった。「おめでとうございます〜」ということで大当たり。小さなプレゼントをもらいました。
そんな感じで歓迎ムードで入店。思えばコレもミラクルの始まりでした。
最初の日は時間がなくて一度は帰って、本格的にバイクの相談に乗ってもらおうと別の日に家族総出で出直しました。
ファットバイクやMTBなど、色々紹介されたけれどピンとこず、私の欲しいバイクがハッキリしないので、お店の人もどうしようかねという感じでうだうだしていたところ、あるお客さんがやってきました。
その瞬間、「あ、あのバイクがいい!」と思わず叫んでしまいました。
それはsurlyというメーカーのディスクトラッカーというバイクで、色は数年前のもの。乗っていたのは学生さんで、メンテナンスに来たそうです。
最初にお店に来て勧められたバイクを見て知ったメーカー。色々調べて、買うなら、surlyがいいなと思っていました。そして、HPを見て、いいなと思っていた色でした。
実際に見るとくすんだブルーでとても素敵な色でした。
しかし、コレは数年前のモデルと色である。しかも在庫があるのか?
早速、お店の人が調べてくれると、なんと、数年前のモデル、小さいサイズが数台残っているようです。
しかも古いモデルなので少しやすくなるとか・・・・・。
急にコレだ〜と興奮しだした私に店主さんもなるほどという感じで色々と教えてくれた。
奥の方でバイクを組んでいたダンディな人が、
「そのフレーム気に入ったの?」と。
はい、と答えると、フレームの色はその年限定だったりするから、もう二度と手に入らない場合もある。フレームはクロモリだからかなり長く使えるので、他のパーツを交換すればどうにでもカスタムできる。なのでまずフレームが気に入ったならそれがいいと思うよ、
と、教えてくれました。
気に入ったのを買う。コレが一番。
心はほぼ決まりました。
そのお客さん、半年前くらいから来たことなかったそうで、このタイミングでやって来たのは、ミラクルでした。カタログではわからない、やっぱり実際に見て見ると、よくわかりました。
自由。
改めて、surly(サーリー)のHPを見て、その創業精神やデザインを眺めていると、そうだよな、この世界観、私の好きなモノそのものじゃないかと思いました。スキーと同じ。
見栄えのするハデな物なんて何もないのです。でも有用な物がすべて美しいようにオレたちの作る物は美しいんです。
シンプルな美しさ、効率、扱いやすさ、それから気が遠くなるほどの自由な感覚。
かなり風変わりなメーカーだ。彼らの自転車を見ていると、ふとvalhallaというスキービデオを思い出しました。
そうだ、私の好きな、パウダーの世界観と似ている・・・。
雪山に向かって、オンボロのビートルでスキーだけを持って、奥へと・・・・
パタゴニアのこのビデオの紹介文には、
ひとりの男が子供のころに持ち合わせていた「自由」をふたたび取り戻そうとする姿を描いた物語です。
同じ思想がコンセプトとなっていました。
「気が遠くなるほどの自由な感覚」
ああ、コレだったんだな、自転車にも完璧に表現されている。
私は、「自由」、それに強く惹かれているのだなと・・・・・・・
細かくいうと、自由を求めているならいいかというとそうではなく。その表現方法には色々あって・・・・それが世界観というもので。
モノに表現される思想
私は、自分が少しだけかじった建築の専門分野で何をしていたかというと、モノに表現される思想は何かを探ること、でした。そこに何が表現されているか。
建築はそもそも、そのために存在したのです。古くから権力はそれを利用して来ました。
現代では、むしろその実用性が取りざたされるようになっているので、そのことを忘れている場合も少なくない。けれど、どのような形のものを建てても、その形、素材の選び方、全ての中に、思想が現れます。
一見、同じようなデザインに見えても、必ず、その根底にある思想が浮かび上がって来ます。それは、人間の直感に訴えるものだと思います。
そういうものを感じて、自転車も、何もわからないけど、心の中にスッとコレだというものが入って来て、出会うことができました。
モノを選ぶ時、消去法的に選ぶと、自分が何を好きなのか、自分が何をしたいのか、わからなくなることを再認識しました。それはモノを選ぶときだけではなく、全てにおいて言えることです。
つまり、誰かの意見や、条件や、可能かどうか、などで判断すると、わからなくなるってこと。それは他人軸で選ばれたものだからだと思います。
不要なものを捨てたりいわゆる断捨離するってことは、そういう自分じゃないものを捨てるってことだから、色々見えてくるのだろうと思います。
今日はなんとなくデスマス調でした。