2024/06/14 お遊びと流用の境界線を考える ~ロッテメルセデスを事例に~
今年の交流戦も終盤に入りましたが、交流戦と言えば、普段打席に立つ機会のないパ・リーグの投手がどんなバッティングを見せるのか、その打席中どんな応援歌が流れるか、といったところが見どころですね。
この記事を書いている時点で、今年の残り試合はほぼほぼ指名打者制度が採用されるパ球団主催試合なので、相変わらず時機を逸している感が否めませんが、この投手応援歌絡みで一つ取り上げたい案件があります。
お遊びと流用の違い
今回のテーマを語るにあたり、前提として押さえていただきたいのが、応援歌におけるお遊び演奏と流用の違い。
この両者に対する認識は、人それぞれ異なる部分もあるところですが、私なりのざっくりとした定義としては、単発的な使用がお遊び演奏で、継続的な使用が流用と考えます。
この辺りの詳細は、以前に単独で記事を起こしておりますので、興味のある方はそちらをご覧ください。
個人的な応援歌の整理の手法として、流用と認められる場合には使用歴に含めるのに対し、お遊びの場合は使用歴に含めないよう、取扱いに差をつけています。以下、この認識を前提にして、本記事も書き進めてまいります。
メルセデスのロッテ移籍後の応援歌使用実態
ここで本題。昨年2023/5/24のロッテ対西武戦、ロッテが試合に勝利した後の二次会にて、この年からロッテに移籍してきたC.C.メルセデスが交流戦で打席に入る際の応援歌として、過去G.G.佐藤らに使われてきた応援歌を使用する旨発表されました。
この発表当初、私はお遊びというよりも流用とみて、その認識のもと、いくつか文章も書き残してきたところです。
まあ最初から扱いに迷っているわけですが、少なくとも、昨年私が書いてきた新応援歌第一印象シリーズの中で取り上げている時点で、お遊びというよりは流用かなあという認識でいました。
これもすみません、メルセデスに関係する部分の文章だけ引用すると、何が言いたいのかよくわからないかと思いますが、ポイントとしては、メルセデスも使用歴に含めた上で論じているところにあります。
すなわち、メルセデスに対してG.G.佐藤らの応援歌を使用するのは、お遊びではなく流用という認識のもと、上記の文章を書いていました。
実際、今季'24シーズンに至るまで、メルセデスが打席に立つ際、投手汎用が流れてきたという話は聞いたことがなく、G.G.佐藤らに使われた曲が一貫して使用されている状況が続いています。
これに加えて、メルセデス特有の事情としては、本節の冒頭で申し上げたとおり、交流戦開始前に二次会の場で使用する旨を発表していた点。この事前発表があったので、打席に立った際に突発的に使用したというのにも当てはまらず、流用とみてよいのでは、と思っていたところです。
ロッテの投手応援歌は歌詞カードに載らない
ところが、ふと原点に立ち返って、ロッテの球団公式ホームページ内の選手応援歌のページを確認してみると、昨季'23以降現在に至るまで、メルセデスの応援歌は掲載されていません。歌詞カードに関しても同様です。
そもそも、ロッテの投手応援歌事情はというと、古くまで遡ればジョニーこと黒木知宏の登板時に歌う曲などが存在したりするわけですが、少なくとも投手汎用が作られた'10以降、新たな個人応援歌は作られておらず、歌詞カードに掲載された投手もいません。
一応、使用実態としては、先ほど引用文中にも出てきたイ・デウン←金泰均であったり、昨季もルイス・カスティーヨに対してホセ・カスティーヨらに使われた応援歌が使われたり、助っ人投手に対しては過去作をちらほらと引っ張り出してくる傾向が見られます。
ただし、これらはいずれも、当該投手が打席に立った時のみの演奏。特に、イ・デウンに金の応援歌が演奏された'15に関しては、ホーム最終戦にて応援団が背番号順応援歌メドレーを演奏したのですが、この中でイ・デウンの応援歌が演奏されることはありませんでした。
以上の状況を踏まえて、少なくともイ・デウンに関して言えば、私としてはお遊びと認識しています。また、カスティーヨに関しても、状況的には突発的な演奏であり、お遊びの範疇を超えないものという認識です。
パ他球団の投手応援歌事情
使用曲は一貫していそうだが歌詞カードに載らないオリックス
ここで、投手が打席に入った際、過去の応援歌を演奏する他球団の状況を見てみましょう。こういう演奏の仕方って、そういえばセではあまり聞きませんね。
まずはオリックスから。この球団は、投手汎用応援歌というものが存在せず、その代わり、投手が打席に立つ度、過去の個人応援歌が何かしら引っ張り出されてきます。どの曲が演奏されるのか、注目している応援歌好きの方も多いのでは。
有名どころでは、一昔前になりますが、オリックスのエースを務めていた金子千尋には、名選手つながりでイチローの応援歌が演奏されました。最後の一節も、「走れチヒロー」とうまいこと韻が踏めるやつです。
ただ、この手のオリックス投手応援歌、使用状況だけなら、確かに金子千尋に対して一貫してイチローの応援歌を演奏しているようにも見えるのですが、正式な個人応援歌として発表された覚えは一切ありません。
となると、これらの応援歌は流用というよりも、お遊びとして整理するのが妥当でないかと、私の中では線引きしています。
汎用曲作成後にも過去曲の使用例がある西武
'19に個人応援歌持ちの投手が絶滅すると同時に、投手汎用テーマが新調された西武ですが、この汎用曲一辺倒になっているかというと、実はそうでもありません。
例えば、平良海馬が打席に立った際、名字の「たいら」つながりでしょう、タイラー・バンバークレオ(NPB時代はバークレオの登録名でプレー)の応援歌が使用されたのが有名でしょうか。
ただし、同じ平良の打席でも、別の試合ではアレックス・カブレラらに使われた応援歌が演奏されたり、使用状況はまちまち。これはまさしく、典型的なお遊び演奏と言えましょう。
流用曲でも個人応援歌として歌詞カードに掲載した日本ハム
一方、お遊びっぽい選曲ながら、れっきとした個人応援歌として歌詞カードに掲載した事例が存在する日本ハム。
現在の伊藤大海の応援歌は、前奏『エースをねらえ!』までそっくりそのまま、岡大海が日本ハム在籍当時使用されていた応援歌です。名前の「ひろみ」つながりとしか思えません。
そしてこの応援歌、ロッテやオリックス、西武の投手応援歌と扱いが異なり、歌詞カードや球団公式ホームページにもきちんと掲載されているのです。
ここまでしっかりはっきり、個人応援歌としての取扱いを明示されたのであれば、私としても、伊藤←岡はお遊びではなく流用であると、迷わず判断できるところです。
ちなみに日本ハムは、基本的には投手に対して応援歌を作ることはほぼほぼありませんが、大谷翔平という二刀流選手を抜きにしても、伊藤以前に、個人応援歌が作られた選手がいました。
それはダルビッシュ有。こちらは流用曲でもなく、ダルビッシュ専用に作られたオリジナル曲でした。
投手だろうとお構いなく個人応援歌を作るソフトバンク
ここまで挙げてきた球団とは逆の方向に振り切れているのがソフトバンク。この球団に限っては、野手も投手も構わず全員に対して個人応援歌を作っていた時代がありました。
その後時は流れて、育成投手汎用テーマや外国人投手汎用テーマができ、'20には個人応援歌の無い支配下選手を前提に、投手汎用テーマも作成されたので、これでも個人応援歌持ちの投手は減りつつあるのですが、今季'24には流用曲も含めて投手の新応援歌が久しぶりに復活。
これはこれで、ソフトバンク特有の尊重すべき応援歌事情であり、私としても、過去の曲が使い回された際、流用として整理することに全く異存はありません。
ロッテメルセデスの応援歌はお遊びか流用か
楽天に関しては、投手に対して過去の個人応援歌を演奏する話を聞かないので、これにてパ球団の投手応援歌事情をあらかた振り返れたところで、ようやく話が戻ってきて、結局メルセデスの応援歌はお遊びと判断すべきか流用と判断すべきか。
先述のとおり、はじめ私は、メルセデスの応援歌が披露された場が、打席とは別の二次会だったことをもって、突発的な演奏にはあたらず、流用と整理できるのではないかと考えていました。
ただ、他球団の事例と並べてみたときに、現状のメルセデスの応援歌の取扱いに近いのは、オリックス辺りのような気がします。少なくとも、歌詞カードに掲載されている日本ハム伊藤大海と同じように取り扱うことには、どこか違和感が残るのです。
最終的な判断材料として望みたいのが、'15ロッテのような全選手応援歌メドレーを聴くこと。本当は昨季'23にそういう場があればよかったのですが、全選手メドレーが演奏されたという話は聞いていません。
仮に歌詞カード等に掲載されていなくても、応援団が演奏する全選手メドレーの中に、メルセデスの曲が混ざり込んでこようものなら、お遊びでなく流用と整理する線も出てくると思います。
ただ、そういうチャンスがこの先も訪れないままであれば、現存する判断材料を総合して、メルセデスの応援歌はお遊びの域を抜け出ていない。これを現時点での結論としまして、過去の記事で書き残した私の認識も、改めさせていただきたいと思います。
というわけで、私なんぶふじが個人的に応援歌をどう整理するかという話に帰結してしまい、読者の皆様におかれましては心底どうでもいい結論だったかと思いますが、元々私が作り出すコンテンツはたいていが自己満足の産物なので悪しからず。
パ各球団の投手応援歌事情を水平的にまとめた文章というのは、この世にはあまり存在しないと思うので、その点で少しでも価値あるものになっていれば幸いです。
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