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空洞

 動物園に行った。
 入り口を抜けると、すぐそこに動物のイラストの顔はめパネルがあった。誰も顔をはめていなかった。ただの空洞だった。
 動物がたくさんいた。いちばん最初に目に入ったのは意外にもサイ。サイはその辺の岩と変わらない色をしていた。それでいてまったく動かない。ほぼ岩。
 つぎにキリンが出てきた。メインどころがこんな序盤で来るとは思わなかった。キリンは木の葉っぱを食んでいて、ときおり見える巨大なミミズみたいな舌が気持ち悪かった。
 チュロス屋さんがあった。おれはチュロスが好きだ! 買った。まあ砂糖が落ちる落ちる。チュロスをうまく食べられる人はいるのだろうか。チュロスを食べながらカピバラを見た。カピバラは無表情でこちらを見ていた。
 カンガルーもいた。カンガルーは筋肉の発達がすごかったし、デカい金玉がぶらんぶらんしていた。「すごかったし、」の「し、」がなんら意味をなしていない。

 動物園を出た!

 通りまで無料のシャトルバスが出ている。5分置きに来るらしいが、スタッフはできるだけパンパンに乗せていくスタイル。おれは補助席に座ることになった。絶対に座りたくないことで知られる補助席。両隣の人になんかすんません、みたいな顔をしながら。
 通りに出る。そこから駅までバスに乗る。今度はふつうの席。バスのふつうの席は快適。あの揺れが気持ちいい。
 がたがた揺れるバスの窓に頭をもたれながら、顔はめパネルの空洞を思い出す。

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