Cosmic gates in the sky(青空への門)
「何……これ、この……植物?」
足元にもあたり一面にあるのも、庭園や鉢植えのものとは違う、見たことも無い植物ばかりだった。
『第三星空回廊』は毎日の朝礼や晩餐の度に通っているのに、その足元にこんな大きな庭園があることなんて今まで知らなかった。
(チュニカ、マデコ先輩の分の修了プレゼントはあんたが用立てるはずだったでしょう?恥かくのは代表のワタシなんですから!)
期末で18歳に上がって知識養成課程を修了し、それぞれ従事課程に就く先輩達の中でも、マデコ先輩は生殖母体として2年間の次世代繁殖個体の選別課程に就くことになった優等生だ。そのプレゼントを疎かにしたら修了祝いが台無しである。
生産従事部にプレゼント用の調達申請を出した帰り、『第三星空回廊』を通っていた時、偶然窓の外に大きな星の光が流れていくのが見えた。
窓の外、その向こうには回廊の名前の通り『星空』が見える。本当は窓の外に広がる空……『宇宙』では星の光はあまり見えず、センサーで拾ったわずかな光を位置関係を合わせて窓ガラスのスクリーンに映しているらしい。
考えながら歩いていたら突然体が下に落ち……気が付いたら、見知らぬ庭園の中にいた。
「うっ……なにこの匂い……この、草?」
鼻を刺激して鈍く浸み込む強い匂いは、普段の庭園の草花のほのかに優しく撫でる匂いとは違う。
彼女が横たわっていたのも、見たことも無い沢山の葉を茂らせた植物だった。そこから色の違う芝草の生えた床の上に降りて、あたりを見回す。
「どうしたの、君?」
不意に声が聞こえた。呼ばれた方を振り向くと、そこにいたのは少年……自分と同じ位の身長の、見たことも無いほど『青い』色をした髪の少年だった。
「えっと、私は気づいたらここに……あなたは」
「……ユキノ?君なの?」
「えっ?」
「いや、違う……ごめん、人違いだ」
「あなた誰?誰ですか」
「そうか、また何百年か経ったんだな。今は……半分位来たのかな」
【続く】