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「同性婚合法化が特別養子縁組件数に与える影響について」という卒業論文を書いています。

「養子縁組」という制度をご存知ですか?

映画「朝が来る」で日本でも少しは認知度が上がったのではないかと思われるこの制度。簡単に説明すると、実親が育児放棄をしたり、育児に問題がある子供達を他人の家庭で育ててもらうというもの。(”特別養子縁組”だと戸籍上も家族となり、”普通養子縁組”だと戸籍上は家族にならず親権は実親のまま)

日本で生活をしていて養子縁組で子供を設けた方や、養子縁組で育てられた方と出会うことはかなり稀なのではないでしょうか。(日本では未だ血縁関係の無い家族に対して偏見が無いとは言えないので公にはしていないだけかもしれませんが…)対して、アメリカやイギリス、オーストラリアでは要保護児童(諸問題があり実親や親戚には育てられない子供)の70%以上が養子縁組をして家庭で育てられています。しかし、日本の養子縁組委託率はわずか12%。日本で認知度が低いのもうなずけます。しかし、「養子縁組=善とも限らないのでは?」「児童養護施設で育てられればいいのでは?」と思う方もいると思いますが、要保護児童が生活する児童養護施設では体罰やいじめのケースが報告されていたり、教育や進学に必要な経費を公費でまかないきれておらず進学率が著しく低いことも問題視されているため、要保護児童らが養子縁組を利用して家庭で育つ環境を整えることが重要だと思っています。


そのような「養子縁組」をテーマにしようと決めたのは1年前。卒業論文のテーマを提出する1週間ほど前のことでした。


当時、私は養子縁組という制度があることは知っていましたが、その制度を用いるのは不妊の夫婦や同性カップルだけだと思っていました。映画「朝が来る」で養子縁組をした夫婦も長年の不妊治療の末に子供を設けることができず、養子縁組を選択したように。

しかし、ある記事で、オーストラリアの夫婦が養子縁組で子供を2人設けて育てたのですが、子供が大きくなってからその理由を尋ねたときに「養子縁組をしたのは不妊だからではなく、新たな命を生み増やすよりも、今ある命を大切にしたいと思った。」という内容の話を読み、感動したことがきっかけでした。夫婦が子供を望んだときに、新たな命を生み増やすのか、今ある命を大切にして養子を引き取るのか、どちらが正しいなんてことはありませんが、それまでの私は将来いずれかのタイミングで子供は欲しいと思いながらも、不妊ではない中で後者の選択肢を取ることは考えてもいなかったので衝撃的でした。日本よりも養子縁組の割合が遥かに高いオーストラリアではこのような考え方をする人がいて、家庭環境に恵まれなかった子供達も家庭で安全に育てられ、子供の教育格差が少ない。日本でももっと養子縁組の委託率が増えればいいのにと考えて、このテーマに決めました。


養子縁組について調べる中で明らかになったのは、欧米諸国では同性婚を合法化していて同性カップルが養子縁組で養子を設けることが多いこと、また結婚していないカップルや単身者にも養子縁組を認めていること。日本ではそのどちらも認められておらず、養子縁組をした家族への補助も諸外国に比べて少ない。「多様性を認めよう」と謡いながらも同性婚を合法化していない日本ですが、同性婚を合法化して養子縁組の制度も見直せば養子縁組をする人も増えるのでは…と考えました。


ここでは分析の中身は省略するのですが、実際にアメリカの同性婚を合法化している州と合法化していない州に分けて、それぞれ合法化前後の変化率が有意であるか、それはどの程度の影響力を分析しました。

その結果、同性婚合法化は養子縁組件数に有意に影響を与えていて、日本で行った場合およそ1万2000人の要保護児童が養子として家庭で育てられる計算になりました。


かなり省略しての説明ですが、ざっとこのような卒業論文を書いています。今よりも1万人以上の要保護児童が家庭で安全に育てられるのであれば、より多くの人生が豊かになるのであれば、それは素敵なことだと思っています。しかし、同性カップルに育てられた子供への教育的な面での影響や、日本では家族の血縁関係へのこだわりが強いので欧米諸国と同じようには上手くいかないのではといった懸念があるのも事実です。


私自身、将来的に養子縁組をするかは今はまだ考えられませんし、この記事を通して皆さんに養子縁組をしよう!と勧める気は全くありません。
ただ、私がいま論文にしている「養子縁組」について日本が諸外国よりも遅れをとっていることを知識として知っておいてくれたら嬉しいです。



最後まで読んで下さりありがとうございます。
みなさん今日も良い一日を!




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