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「保育士の月給1.2万円アップ」で本当に日本の保育は変わるのか?

今朝の日経一面を飾った「保育士の月給1.2万円上げ」のニュース。

政府・与党は2017年春から、保育士の賃金を月額で約1万2000円引き上げる方針を固めた。定期昇給制度を導入する保育所への助成金制度も新設する。介護職員の給与も月1万円程度引き上げる。人手を確保することで待機児童の解消を目指すとともに、高齢者介護の受け皿を拡大する。
自民党が21日、保育士と介護職員の給与引き上げを柱とする提言をまとめた。政府は月内に開く一億総活躍国民会議で議論し、5月にまとめる「ニッポン一億総活躍プラン」に盛り込む。

 保育士と介護職員の賃金アップに必要なおよそ1200億円の財源は、17年度予算などで措置する。政府内には税収の上振れ分を充てる案もあり、今後、政府・与党で調整する。

 保育士の給与は昨年秋と比べ4%分に当たる約1万2000円を上乗せする。政府はすでに1.9%分の引き上げ分の予算を確保済み。来年度予算などで2.1%分の予算を追加で措置し、保育所への加算額を増やして17年4月から賃金を引き上げる。約40万人の保育士と約170万人の介護職員が対象になる。

 保育士の月給は平均で約22万円。福祉施設の介護職員も同程度だ。いずれも全産業と比べ約10万円低いため敬遠されることも多く、十分な人手を確保できていない。

 政府は保育施設と介護施設の受け入れ人数を50万人分ずつ増やす計画を打ち出した。数年かけて賃金を引き上げて他産業との格差を縮める。
(日本経済新聞 2016年4月22日 朝刊より)

via 日本経済新聞 電子版

日本の未来を支える保育士さんの給料が低すぎる

保育関連では久々のグッドニュース。
自分自身が父親として子どもを保育園に預けていたり、義理の姉が保育士だったりするので保育士さんの大変さは痛いほどわかるし、大変さに見合った給料とは到底言えないので、月1.2万円でも待遇が良くなるのは本当に素晴らしいこと。

保育士の方々は日本の子育てを、日本のワーキングファザー&マザーを支えるインフラのような存在。そんな保育士さんが低賃金では、国の未来はないなと思います。

給料を上げるだけで本当に保育人材不足は解消するのか?

一方で、給料だけが問題なのではなく、日本の民間企業以上に旧態依然とした職場風土、保育士の就活のあり方を変え、保育志願者を増やさない限り、本当の意味で保育の人材不足は解消されないと思っています。

先日、縁あってとある保育園の開所式に出席させて頂きました。その時、その社会福祉法人の理事長が仰っていたのが非常にショッキングだったのですが、保育系の大学・短大・専門学校の卒業生のうち、保育士として保育園に就職する学生はわずか35%だそうです。

保育士になりたい!と思い数多くの選択肢がある中で保育系の学部、専門学校を選んだにもかかわらず、保育士ではない進路を選ぶ理由は、一体なんでしょうか。

多くの学生は「実習」を通じて保育士になりたくなくなる。

理事長曰く、保育士にならなかった学生たちが保育士になるのを辞めた理由のほとんどが「実習」がきっかけだそうです。

保育系の学部や専門学校では必修科目として、保育実習が必ずあります。学校の教員の教育実習と同じですね。

学生たちは保育実習を通じて、理想の保育とは余りにもかけ離れた保育現場の実態を目の当たりにして、「これは違うかも」と保育士になるという夢を諦めてしまうのです。

・「子ども第一」ではなく、園の方針・ルールを守ることが第一。
・新しいやり方や工夫を提案しても、「これが決まりだから」と全く話を聞いてもらえない。
・膨大な事務作業に追われ、子どもたちに向き合える時間があまりに少ない。
・そうした状況によって、職場風土が著しく悪くギスギスしている。

などなど、例をあげたらキリがありませんが、そういった「保育現場のリアル」を目の当たりにした学生たちは、100年の夢も醒めてしまうのです。

もちろん、保育園のすべてがそういった劣悪かつ旧態依然とした職場環境とは限りません。

が、保育系学生の3人に2人は保育士になることを辞めているというデータを見れば、全体として今どういう状況にあるのかはお分かり頂けるでしょう。

保育現場の「働き方改革」を進めることなくして1億総活躍なし

改めてですが、保育士さんの待遇改善は非常に良い政策判断だと思います。

ですが、それだけではあまりにも片手落ちです。

待遇改善に加えて、保育現場に山積する膨大な雑務から保育士さんたちを解放すること、園長や主任を含めた保育園におけるマネジメント層のマネジメント力を向上させること、旧態依然としたルール・方針をゼロベースから見直すことなどを通じて、保育現場の職場環境を改善することはマストだと思います。

ぜひ、国や自治体をあげて「保育士の働きがい向上」を進めてほしいですし、それは公立の保育園や保育サービスだけでは限界があるはずなので、保育の質を維持・向上する前提で、保育園・保育士にまつわる規制緩和もどんどん進めてほしいです。

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