モデレーターは「事前準備」が9割。あくまで僕の場合。
先日、スタートアップの祭典「IVS2020」に登壇させていただきました!
IVSことInfinity Ventures Summitは10年以上の歴史のある起業家・スタートアップのための大規模カンファレンスですが、完全オンラインで開催されるのはこれが初めて。
今までも一参加者としてとても楽しみにしていたカンファレンスですが、ありがたいことに今回はモデレーターとして登壇機会をいただいて参加をさせていただきました。
こんな感じで日頃から「モデレーターは天職」と言い続けるだけでなく、コロナ前も年間50本以上、コロナ後にオンラインイベントが爆発的に増えた後は月間20本(!)ものイベントでモデレーターをやり続けてきた甲斐があるってものです。
とツイートしている通り、規模の大小を問わずいかなるイベントでも、
「語り手✖️聞き手✖️主催者の三方良しになるよう、モデレーターとして最高のセッションをお届けする」
ことに全身全霊を注いでいるのですが、今回ももちろんベストを尽くしました。
その結果、参加者の方にもお褒めの言葉をいただいたり、
これは同じセッションに登壇した友人・黄未来のありがすぎるメッセージですが、ほかの登壇者から全員こんな感じで嬉しいフィードバックをいただきました。本当にありがたいことです。
一人ひとりがものすごい影響力とトーク力をもったタレント揃いなので、面白くなるに決まってます。笑
こんな垂涎モノのタレントを目の前にして、もし仮に面白くないセッションに仕上がってしまったとしたら、それは完全にシェフたるモデレーターの責任です。
ということで、「これは絶対に失敗できない!!!」というなかなかのプレッシャーを感じつつ当日を迎えました。笑
ちょうど良い機会なので、今回のセッションを題材に普段ぼくがモデレーターとして何をやっているのか?について、備忘録をかねて解説したいと思います。まだまだモデレータとしては超一流にはほど遠い凡人なのですが、凡人だからこそしている努力として、こんなものがあるよーと参考にしてもらえたら幸いです。
モデレーターは「準備」で9割決まる。
これは極端すぎるかもしれませんが、どんなに良い素材でも、いや、優れた素材だからこそ、当日のセッションの出来は「事前準備で9割決まる」というのが僕の持論です。事前準備せずとも素晴らしいモデレートをされる方もいるので、あくまで僕の場合、ですが。笑
事前準備って何?というと、具体的には、
①イベント主催者側のニーズを事前に把握する
*セッションテーマの設定背景/登壇者のキャスティング理由/当日話してほしい具体的なトークテーマ案など
②当日の進行台本を作成する
③登壇者全員に進行台本を共有して認識をすり合わせる
の3つです。それ以外に、登壇者の書籍やインタビュー記事、SNS(TwitterやFacebookはもちろんのこと、YouTubeやってる場合はYouTubeも)を隅々まで読んでおく、という超基本行動はやっていますが、それは「イベントに遅刻しない」くらいのレベルの超基本行動なので準備項目からは省いています。
以下で、それぞれの項目について簡単に説明します。
イベント主催者側のニーズを事前に把握する
これは言わずもがな、なのですが、主催者のスタンスやマンパワーの状況によって、
①事前に主催者との打ち合わせが設定されるケース
②チャットベースで打ち合わせを進め、対面(オンライン含め)での打ち合わせは行わないケース
③チャットベースでの打ち合わせすらままならないケース
とざっくり分けて3パターンあります。
大き目の会社だときっちり進めたがるので①のパターンも多いですが、ベンチャー系だと②や③のパターンになることがほとんどです。
カンファレンスなどイベントの規模が大きい一方、運営サイドのマンパワーが不足している主催チームの場合、③になるケースも決して少なくありません。
その場合は、セッションテーマの設定背景/登壇者のキャスティング理由/当日話してほしい具体的なトークテーマ案など重要なポイントを直接ヒアリングすることができないので、想像力を働かせて仮説を立てるしかありません。
当日の進行台本を作成する
「どんなトークテーマをどんな順番で、どんな時間配分で聞いていくか」といった進行台本を作成します。
喋り慣れてる登壇者の場合、進行台本なんぞなくとも喋れてしまうのですが、登壇者全員がそうとは限りませんし、「本題からあまりにもズレた際に軌道修正がしやすくなる」という利点があるため、ないよりはあった方が良いです。
進行台本やそれに近しいものだったり、「こんなトークテーマでお願いします!」と主催者側からオーダーいただけるケースもあれば、「決まっているのはセッションテーマと登壇者だけ。あとはお任せします!」とモデレーターを信じて一任していただけるケースもあり、今回は完全に後者のパターンでした。
ということで実際に作成した進行台本はこちらです。
ご覧いただいてわかるように、
⚫︎イベントの世界観・ゴール
⚫︎進行スタンス
⚫︎タイムライン
⚫︎トークテーマ
⚫︎参考記事(他の登壇者の“人となり”がわかる記事)
極めてシンプルなもので、トークテーマのアイデアを出す時間も含め30分もあれば作成できます。
進行台本を作成する作業自体が「脳内リハーサル」になりますし、手元に進行台本があることで自分のメンタルの安定にもつながるので、進行台本の作成はとてもオススメです。
ちなみに今回の進行台本ではやってなくて後悔したのですが、トークテーマの抽象度が高い場合、「自分はこういう意味だと解釈していますが、どうですか?」と認識のすり合わせをしておくと良さそうです。
具体的には、セッション本番の中でdivの真子さんから「個の市場価値って、そもそもどういう定義でしたっけ?」という問いが投げかけられました。さすがまこなり社長として日々動画を配信している真子さんですよね。素晴らしい問いです。
この問いに対して、「〇〇ということだと解釈しています」とお伝えして腹落ちいただけたので良かったですが、抽象度が高いトークテーマの場合は、事前に解釈を揃えておけると良さそうだと感じました。
進行台本を共有して認識をすり合わせる
次に、作成した進行台本を登壇者全員に共有して認識をすり合わせます。
進行台本(やそれに近しいもの)をイベントの主催者側が作成し、登壇者全員に共有いただけるケースも多いですが、その場合はもちろん主催者側にお任せしてしまって全く問題ありません。ただ、主催者の方々とて人間なので、抜け漏れがあることだってゼロではありません。なので、イベント当日の「ゲームキャプテン」として、モデレーターが責任をもって提供された情報をチェックし、抜け漏れがあったり、登壇者同士で認識がズレそうな項目があったらしっかりとその旨をフィードバックし、進行台本をブラッシュアップしていきましょう。
進行台本を作成・共有したり、事前のやりとりでリーダーシップを発揮して議論を進めることは、登壇者同士の認識を揃え、セッション本番のクオリティを高める、という効果があるのはもちろんですが、「あ、このモデレーターは本番でもしっかり進行してくれそうだな」という安心感・信頼感を生んでくれるという副次効果もあります。
「このモデレーター、大丈夫かな…?」と不安感がある場合と、「このモデレーターなら大丈夫そうだな」という安心感がある場合とでは、当然後者の方がセッション本番でのトークがスムーズに行く、ということを経験上感じています。
大規模なオンラインイベントの場合、Zoomのバーチャル背景のトンマナを揃えるため、運営側で作成・提供されるケースも多いですが、今回はセッション1時間前になっても送られてこなかったので僕の方で登壇者全員分のバーチャル背景を自作しました。
これについてハヤカワ五味さんがツイートされててびっくりしましたw
バーチャル背景なんて1枚あたり1~2分もあれば作れてしまうので、それで好感度バク上がりするなら最強に投資対効果いいですよね。笑
*ムダにTwitterへのQRコードも付けてみましたが、bitlyで短縮リンクを発行してアクセス数を計測しましたが、登壇者全員ほぼゼロでした。文字通りムダでしたね。笑
「準備が9割」は真理だが準備したシナリオを躊躇なく捨てる判断も大切
事前準備は以上です。その他、初対面の登壇者がいる場合は個別にメッセをやりとりして相互理解を深めておくというのも重要なTipsです。
と、ここまでひたすら「いかに準備が大事か」ということを書いてきましたが、ライブ感が重要なイベントにおいては、準備したシナリオを躊躇なく捨てる判断も大切だと思っています。
事前準備をしっかりすることのデメリットを一つ挙げるとすると、「せっかく準備したのだから」と、事前に用意した進行シナリオにこだわりすぎてしまう可能性が高まる、ということです。
せっかくトークが盛り上がっていよいよこれから!というタイミングで「時間になったので次のトークテーマにいきましょう!」と良い流れを遮ってしまうのは、参加者にとっても登壇者にとってもメリットは薄く、「シナリオ通りに進めたい」というモデレーターのエゴでしかありません。僕もかつてこの「シナリオ通りにキッチリ進めたい病」にハマり、イマイチな進行をしてしまったことが何度もありましたが、失敗を重ねる中で徐々に準備したシナリオを躊躇なく捨てる勇気が持てるようになり、話の盛り上がりを見ながらその場で「今の盛り上がりを大切にしたいから、このテーマをもう10分延長して、次のテーマはカットしよう」というような判断ができるようになってから、イベントの満足度は格段にあがりました。
こちらが事前に用意したタイムラインですが、「どうやったら〜」のパートが盛り上がったので10分ほど時間を延長し、その代わりに「有名税」の話は「高め続ける理由」のパートで軽く触れたのでカット、「次なる主戦場」の話は優先度低いのでカット、という判断をしています。
「事前準備」はしっかりしつつも、ライブ感を最優先して、必要とあらば準備したシナリオも躊躇なく捨てる、という勇気を持つのも大切なポイントだなと思っています。
もちろん、天才肌のモデレーターの方であれば、事前準備なぞなくとも素晴らしいセッションに仕上げられるでしょうし、事実そういう方もいらっしゃいます。「事前準備」をすると、ライブ感がなくなってつまらなくなる、と。
ただ、凡人の僕は「レシピなしに美味しい創作料理をつくる」という天才じみたマネはできません。「事前準備をしっかりやりつつ、必要に応じて捨てる」というのは、僕なりの戦略なのです。
以上、ざっくりと僕自身が「事前準備」や「セッション本番」でやっていること、意識していることについて備忘録も兼ねてまとめてみました!
そして、いよいよ今週からモデレーター&ファシリテーター養成講座(通称「 #モデファシ 」)の第1期がスタートします!
僕が「モデレーターの神」とあがめるプロフェッショナル、河原あずさんが講師としてモデレーション・ファシリテーションのノウハウを惜しみなく伝授してくれるそうなので、僕自身もめちゃくちゃ楽しみです!!
*第1期は即日満員御礼!ということで急遽追加開催を決定した第2期も即満員!ということで第3期の開催を早くも決定したので、興味ある方は以下から事前登録してみてください!一般公開に先がけて先行案内します。
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