世界のニューズウィークさん 「ジャニーズ事件」を天皇制と結びつける?ちょっと強引じゃない?
西谷格(フリーライター)(にしたに・ただす)氏の書く内容に基本同意するのですが、この「天皇制」だけは一言いいたい。
【西谷格氏参考】
【筆者のコメント】
戦後、天皇が国民と同じ目線に降りて来たと言う事は誰もが異論がない事ですが、それが芸能界の地位が上がって来て
「芸能人=賎民という区分も無効化した。」
との主張には違和感があります。
戦後直後の映画ブームは、もちろん進駐軍の指示・監督によるところが多かったのだが(3S戦略)、その主役たる多くの俳優がスター扱いされたのは、賎民・ヤクザとは関係ない「オーデション」というもので選別されたエリートだという差別化を図りたかった「映画会社」の戦略上から庶民から崇められる存在を作り出した。
又映画会社は、それを助長すべく芸能メディアにしか情報を流さない『情報の秘匿性』を手に入れた。芸能メディアもそれで雑誌及び新聞が売れたので、そのスキームが「win-win」の形で双方が儲かった。
そこに今も幅を利かせている芸能メディアの端緒が有る。そのパートナーシップの一方の映画会社から芸能事務所に代わったのが現在であり、ジャニーズだけの手法ではないが、あまりにやりすぎた事で事件が隠蔽された。
映画の製作者である、東映・日活・松竹・東宝・大映は、ヤクザではなく当時のエリート社員が運営していた。だから、この映画会社所属の俳優は、戦前からの芸能界=賎民・ヤクザと切り離された存在で有った。
それがスターを崇める庶民感情の基である。
一方メディアの人間は一応有名大学卒のエリートだというプライドがあり、「お前ら芸能界人をスターにするのも貶めるのも俺らの指先一本だ」という悪辣な意識が芽生えてしまった。メディアの記者はエリートであり、賎民ではないし、ヤクザでもないが売れている芸能人の問題ネタを芸能事務所側が金でもみ消すと言う悪い習慣が付いた。
美空ひばりは完全に「3代目山口組」のしのぎの道具にされてしまったのは、美空ひばり自体が賎民だったからではない。
テレビが芸能事務所に支払う出演料を押さえて利益を増やしたいたいと思って、「スター誕生」の様なド素人を募集してテレビ界で育成して売れっ子にする事で、芸能事務所との力関係を有利に進めた。
一方、ジャニーズのビジネスモデルは、一番儲かるのが「ファンクラブ」であり、その会員数を増やすためのテレビ出演・雑誌出演なので格安のギャラ(新人は無料)であり、メディア側も歓迎した。ファン数が増えたら、大箱でのライブコンサートを行う、数十億円~100億円超という収入源となった。
経営上、テレビは無料出演でも良いし、ある程度の視聴率が稼げるので、ジャニーズ様様となってしまった。
そのジャニーズ商法を一部取り入れたのが「秋元康プロデュース女性アイドルグループ」であり、競合しないからジャニーズからの圧力を受けない。
そこで、西谷格氏の記事に戻ると、
どんなタレントもしくはグループカラーが売れるか?という商品戦略上で、「私生活が解らない崇めるようなスター様」ではなく、「身近な存在としてのタレント」しか出現しないかという主題を語ると、主な要因として
①テレビが即席でも・瞬間でも売れる素材原価が安いので歓迎する
②芸能事務所も、金かけずに短時間で儲かりたい
③芸能人になりたいド素人が大量に応募してきて選別できる
④売れなくなったら事務所が金を払わなくても良い契約にするので不良債権処理が簡単
⑤そして一番大きな要素は、「自分でも代替えできそう」と思ってしまえる仕組みを始めた「スター誕生」等のテレビで繰り広げられるスターへのドキュメンタリー風な番組である。番組の視聴率が高い。
応募したのが視聴者の友人・知人・親戚であり、自分が生活している地域の学校に昨日までいた人である。
情報は駄々洩れなので、神話や特別な物語を作りようがなく、拝めようがない。まして、昭和天皇が身近な存在になったから庶民がスターになったわけでは無い。
特に女は、生まれながらに芸能人になりたがる人が多い。
戦前には関西の富裕層の娘が芸能人になりたがって困るという話を聞いて小林一三が「宝塚学園」を創設した。富裕層の娘がヤクザな世界に翻弄され富裕層に取り付いて金を吸いあげる様な事を避けたかったから。
スター誕生からスターになったのは、森昌子であり桜田淳子であり山口百恵であった。その後、中森明菜、森昌子、桜田淳子、岩崎宏美、片平なぎさ、ピンク・レディー、石野真子、小泉今日子と続々とスター様が誕生して行った。
その後、「ホリプロタレントスカウトキャラバン」等から榊原郁恵、井森美幸、山瀬まみ、深田恭子、綾瀬はるか、石原さとみらを輩出した。
同様の芸能事務所主宰のオーデションが開催され数多く輩出されて行った。
キャンディーズのメンバーは、3人とも東京音楽学院のスクールメイツ出身。
その男版を作ったのがジャニー喜多川であり、顧客は母性溢れる女性層である。崇めるのではなく、ペットとしてのポジションである。
裏が見えてしまえば、価値は下がるのは、俳優・タレントに限らず、音楽家も同じであり、音楽の価値も激減した一因は、
「あいつ知っている、隣の高校だった」
である。
タレント・アーティストの価値の低減を始めたのは、テレビであり、だからテレビの視聴率が下がっている。
それを未だに業界関係者は判ろうとしない。
1.プロフィール 取材記者の妄言多謝
西谷格(フリーライター)(にしたに・ただす)
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日本人が「ジャニーズの夢」から覚めるとき の一節
2.ジャニーズ問題と天皇制
2023年11月01日(水)
文春裁判が確定した2004年という年は、まだギリギリ「芸能界は特殊な世界」という治外法権が機能していた時代だった。加えて、同性愛や性被害への偏見も今以上に根強かった。LGBTの文脈で言えば、性同一性障害特例法が施行されたのも2004年である。それまで性的少数者は「見えない存在」だった。だからこそ、ジャニー喜多川の行為も「見えないもの」として扱われた。
それから約20年が経過し、貴賤の薄れた平準化された社会のなかで、日本人はジャニー喜多川の所業を「再発見」しまざまざと見るようになった。旧ジャニーズ事務所を取り巻く日本社会の「空気」に水を差すことをできたのは外国メディアだったが、それも必然だったのだろう。集団の「空気」を内部から変えることは難しく、仮に変えようとしても聞く耳を持たれないからだ。
今から20年後、私たちはどんな問題を「再発見」することになるのだろう。それを今知ることはできないが、その時々の「空気」に支配されていることは間違いなさそうである。