細谷のゴールを救うには
パリオリンピック、男子サッカー日本対スペイン。細谷選手のゴールがVAR介入によりオフサイドとして取り消されました。
この件について少し。
当該のシーンの細かい説明は、これを読んでいる方なら目にしていると思うので省きます。
・判定は妥当だったか?
これは間違いなくオフサイドだったと思います。
背負ってボールをキープした後反転して素晴らしいシュート。副審もオンサイドと認識し、主審にも問題ないゴールに見えただろうと。
しかしゴール後のVARチェックでオフサイドが判明。「これそVAR」と言った感じで、日本代表には酷な結果になりました。
あれをゴールとするには
さて本題。このオフサイドが本来のオフサイドができた意味にそぐわないという主旨の意見が多く出て話題になった。他国の記者や有名ライターが唱えたことも大きかったかもしれない。
個人的に日々VARと更新され続けるルールに毒されている僕には正直
その発想はなかった
毎週サッカー観てたら待ち伏せ禁止に当てはまらないオフサイドなんてよく見る気がするけどなんで突然?と思わなくもないが
なるほど。しかし現在のルールと状況ではオフサイド取らない方が誤審になってしまう。ではあれをオフサイドとしないとするとどうルールを変えたら成立するだろうか?
・VAR廃止
手っ取り早いのはこれ。VARを無くすか、オフサイドは対象外にする。
適用すると
当該シーンは、ほんの一瞬パスの出し手のインパクトの瞬間だけ足が出ており、おそらく副審の確認は困難。VARがなかったら担当が他の副審でも見逃していたと思われる。
デメリット
言うまでもなくVARがあることによって修正されてきた大きな誤審がそのままになる。仮に対象外にしたとするとVARがあるのに活用されないという不満も多く出そうだ。
・相手と接触してればオンサイド
相手を背負っていたり接触した状態ならオンサイドとなるルールはどうなるか?
適用すると
細谷はパスを受ける前から受けた後も相手と接触しており、オンサイドになる。
デメリット
ポストプレーが楽になったりと色々抜け穴がありそうだが、1番困りそうなのはファウルにならない程度にGKと接触してたらどうなるのか?というところ。別のスポーツになりそう。
・アドバンテージを得たかどうかで判断
そのオフサイドにより、攻撃選手がアドバンテージを得たかどうかで判断するのはどうか?
適用すると
細谷のシーンにおいて、オフサイドポジションに居たことによるアドバンテージは殆どなく、VARがオフサイドポジションであることを発見しても、主審に判断を仰げば「オフサイド無し」となりそうだ。
※但し、パスの瞬間細谷は半身で構えており、スペースへのパスが来たら抜け出すこともできました。その場合はアドバンテージがあるので難しいところです。
デメリット
全てのオフサイドに主審の「主観」が必要になるので、今までオンリーレビューで済んでいたものが、オンフィールドレビューを行わなくてはならなくなるかもしれない。
また、判定に納得できないという場面も増えそう。
・出てたらオフサイドとなる体の部位を変える
これはどうだろう?出てたらダメの場所を肩から腰に限定する。
適用すると
あのシーンは上半身は相手を背負っていて、足だけ少し(2センチくらい?)出てた。オフサイドの場所を胴体に限定すればオフサイドは取られない。
デメリット
相手のゴール時、大きく脚が出てた時納得できるかというところ。いつか慣れるかもしれない。
・ヴェンゲルルール採用
かの有名なアーセン・ヴェンゲルが唱えた新しいオフサイドルール。これを採用した場合は?
今までは少しでもラインから出たらオフサイドだったのを、少しでもラインに残ってたらオンサイドにしよう!というもの。かなり話題になった。
適用すると
例のシーンは問題なくゴール。
デメリット
とんでもなく影響が大きく予測できない。
かなりゴールが増えると思う。退場者も増えそう。
・戻りオフサイド廃止
これはどうだ!?戻りオフサイドをオンサイドとする。
文言としては「ボールを受けた位置がオンサイドポジションであればオフサイドは取られない」みたいな。
戻りオフサイドとはボールが出たタイミングではオフサイドポジションに居たが、実際にボールを受けた際はオンサイドポジションに居た場合を指す。ルールで定められているわけではなく、そう呼ばれているだけで特別なオフサイドなわけではない。
適用すると
細谷がボールをトラップした瞬間は問題なくオンサイドポジションにいるように見えるのでゴールが認められる。
デメリット
これも影響が多いが具体的に思いついた点がいくつかあるので書いてみる。
①ポストプレーが楽
「相手を背負ったオフサイドなんか見たことない!」というポストを無数に見たが、これには違和感があった。というのも浦和レッズの興梠慎三は裏抜けの動きを繰り返しながらポストプレーも得意な選手で、相手を背負ってキープしたけどオフサイドという場面は何度も見てきた。
これは99%が戻りオフサイドで、DFからしたら死角から急に前に入られるので対処が難しい。戻りオフサイドをOKにしたらポストプレーはめちゃくちゃ楽になると思われる。
②サイドへのロングボールの対処が難しい
DFや中盤の低い位置から、ウイングの位置へ斜めのロングボールというのはかなり有効な展開だが、戻りオフサイドをアリにするとこれの対処も難しくなる。
なぜなら普通ボールが蹴られると同時にDFは自陣ゴール方向へ下がるからだ。キックの後はオフサイドのへ判定に影響がないので、オフサイドだろうとなかろうとDFは守備へ走る。それと同時に当然オフサイドラインも下がる。仮に戻りオフサイドがなくなった場合、ここが難点だ。
ウイングの選手が仮にオフサイドポジションに居た場合、そのままボールを受ければオフサイドだが、DFが下がるとそれによりラインも下がってオンサイドになってしまう。
つまりDFとしてはその選手がオフサイドかどうかのセルフジャッジを強いられることになる。
③ラインを元々の位置に固定した場合
↑の問題はオフサイドラインを当初の位置に固定すれば解決するが、そうすると今度は一時的に2本のオフサイドラインができてしまう問題が起こる。受け手の選手は当初のラインを越えなくては(戻らなくては)オフサイドになるのでラインが下がるリスクは消えるが、2本のラインを見るのに副審が1人では対応不可能だろう。
・超特例にしちゃう
もうこれしかない。
オフサイドのルールにこの文言を追加しよう。
ペナルティエリア内でパスを受ける前から受けた後まで相手(GKを除く)と接触状態にあり、オフサイドポジションへは足先のみが出ており、尚且つトラップした瞬間はゴールに背を向けていた場合はオフサイドの対象にならない。
よし、解決した!(冗談です)
ルールの本質とは
パッと思いつくあれをゴールにするルールと問題点を書いてみました。
いかがでしたか?良さそうなルールありましたか?または何か新しいルール思いつきましたか?
個人的な思いとしては
あの素晴らしいプレーが認められないのは残念だけど、ゴールにしようとすると弊害が多そう
です。
そもそも個人的にあのシーン見て違和感がなかったのは
「足が少しだけ出たオフサイド」
も
「相手を背負ったオフサイド」
も
よく見慣れたものだったからです。
それが合わさったので珍しいオフサイドに、しかも大舞台で起きた事象なので話題になったんだろうなと思ってます。
今回の件で何度も「オフサイドルールの本質と合っていない」という類の言葉をみました。
オフサイドというルールの目的が、あれをノーゴールにするためにできたわけではないことは確かでしょう。
しかしオフサイドがあるからサッカーは面白いと僕は考えています。
そして今のルールは総合的に見て合っていると。
ルールがあるからスポーツは成立します。
そして、そのルールとは「お互いにとって公平感があり、ゲームを円滑に進めるためのもの」ではないでしょうか?
確かに「待ち伏せ禁止」という言葉を元にすればズレているかもしれません。
しかし、ゴール前でポツンと待ち伏せしてても、最終的にオフサイドにかからないパターンもあります。
去年の神戸戦、大迫選手のあのゴールも(仮に適切なポジションに居たとして)待ち伏せです。
できるだけ汎用的にゲームを面白く保つ
のがルールの本質であり
少しでも、仮に相手を背負っていても、ラインを出ているかどうかで判断
というのはそれを実現しているんじゃないかな?
というのが現在の僕の結論です。
もちろんプロの方々や詳しい方は、こんなど素人より良いルールを考えられると思うので、何か新しいルールができればそれはそれで楽しみです。
読んでいただいた皆さんも、なにか思ったことがあったら教えて下さい!
では、長くなりましたがお付き合いありがとうございました!