みんなの僕らの俺たちの「小野伸二」
2023年9月27日小野伸二の引退が発表された。
44歳。時が経つのは早いものですね。
信じられないようなテクニック、スルーパス、ループシュート…思い返せばいくつでも褒めるポイントは出てきますが、彼を語るうえで欠かせないのが「人柄」ではないでしょうか?
当時新聞記者をやっていた僕の父親に小野について尋ねたことがありました。具体的に何を聞いたのかは覚えていないけど、帰ってきたのが「伸二ほどメディアに人気のある選手はいないんじゃないかな?」という返事でした。
ピッチ上でも、練習場でも、テレビの中でも、彼はいつも笑顔を見せてくれました。ファンの前だけでなく、メディアの取材にも嫌な顔せず真摯に対応していたのでしょう。引退発表を受けて多くのメディアそれを報じましたが、みんなこぞって人柄を誉め、「じつはこんなエピソードが…」と表に出てこなかった話がいくつも見られ嬉しくなりました。
僕が一番印象に残っているのが2001年、オランダへ旅立つ直前のホームの試合。そのあとの退団セレモニーです。
その日は赤いデカ旗に伸二へのメッセージを準備していました。
「世界で輝け伸二」と。
当時歌っていた伸二のチャント
小野伸二・小野伸二・小野伸二
みんなで獲ろうよ世界一
俺たちの小野伸二
この時から浦和サポは世界を意識していたし、何より「こいつがいれば夢じゃない」そう思わせる選手だったということ。
まだ子供と言えるような年齢だった僕でもその移籍の重さというのはわかっていましたし、周りのサポーターは報道された移籍金(3億7千万円)を口をそろえて「安い」と言っていました。
値段の妥当さはさておき、それほどまでに小野伸二は選手としても、「俺たちの小野伸二」としても特別だったということでしょう。
加入後即レギュラー、代表に選ばれ、大怪我をし、J2に落ちて、キャプテンになり、坊主にもなって、数年はあっという間にすぎました。
本当にいろいろな思いをあの7文字に込めたんだろうなと思います。
無事にデカ旗を出し、伸二が歩いてきました。
マイクの前に立ち、お別れの挨拶をします。
そこで伸二は僕たちへ最高の言葉をくれました。
今、たった今見たはずのメッセージの答えをその場でくれたのです。
僕が見た中でこれは初めてのことであり、唯一のことです。
この瞬間、僕は選手としてだけでなく人間として大好きになりました。
そして(リップサービスの可能性もあるけど)少しでも伸二のためになれたならよかったと思えました。
その後伸二は浦和に戻ってきてまた色々なものをくれました。
国内の他チームへ行くことに複雑な思いになったのも事実です。
でも伸二はどこに行っても変わらずの笑顔でサッカーを楽しみ、テクニックと人柄を絶賛されていました。
2023年10月現在、引退がどういう形で終わるのかわかりません。
引退後どうなるのかもわかりません。
でもいつまでも「俺たちの小野伸二」。
仮にですよ?もし浦和が世界一に挑戦する時が来て、伸二が浦和のベンチにいたら?多分泣きますよね。
そして僕はあの時の僕に伝えたい。
「伸二と一緒に世界を獲るよと」
お読みいただきありがとうざいました。
そして小野伸二さん。プロ人生お疲れさまでした。