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草創期 2(小児がんと向き合う家族の記録)

救急外来で即入院が決まり
各手続きをこなしながら入院病棟へ

初めは外科病棟だった
頭の手術をするとのことだ

執刀医が決まり、説明を聞く
小脳に腫瘍があると伝えられた

活動性のある腫瘍だそうだ
おそらく髄芽腫だろうと伝えられた
水頭症も併発している

その後も聞き慣れない言葉が並び
素人丸出しの私の反応に
なんとかわかりやすく伝えようと
してくれているのは伝わった

この腫瘍を取り除く手術をするのだそうだ
オペ室が金曜日に空いているので明後日行う

一刻も早いほうが良いこと
準備も万全な状態で手術ができること
今回のケースはラッキーだと言ってもらった

事の重大さを
素人の私は
まだよくわかっていなかった

今まで原因不明の頭痛で苦しんでいた息子が
もう苦しまなくて良い
もう心配しなくて良い

快方に向かうのだと安堵していた

ここまでの説明で、
お母さん、大丈夫ですか?
そう聞かれた

大丈夫です!夫にしっかり伝えます!

たぶん担当医は
私がこの病気がなにかわかっていないのを
察知していたのだろう

広めの大部屋に案内された
周りはそうちゃんより小さな子たちばかり

しばらくして執刀医とは
別の先生方がやってきた
なにやら深妙な面持ち
血液腫瘍科の先生だそうだ
聞き慣れない名前

外科手術が終わったら
投薬治療をすることを伝えられた
手術で終わりじゃないの、、?

今まで薬は避けてきた
食べ物もなるべく気をつけてきた
自然に、育てたかった

薬は嫌だ

大量の投薬で治らず苦しんでいる人が
身近にいる
抗がん剤治療と放射線治療で
苦しんだ知人がいる

投薬が始まると自己判断能力を失うから
いつのまにか医者の言いなりになっていくから

目の当たりにしていたから嫌だった

だから、率直に嫌です、と言った気がする
身体に悪いものを与えるなんて
あり得なかった

まだ息子は3歳
これから作られていく大事な身体だ

その後のやりとりはあまり記憶にない
私の日記的な記録にもない

先生方と話している最中
抗がん剤治療と放射線治療以外の
治療法はないか
手当り次第当たろうと心の中で決めていた

この辺りのやりとりから
事の重大さにようやく気づいてきた

"活動性のある腫瘍"
優しく伝えてくださり感謝している
おかげで大きなショックを受けずに済んだ

私の鈍感な脳はじわじわと理解した
息子の脳にあるのは悪性(進行性)の癌なのだ


どれだけ痛かったんだろう


癌は痛いっていうけどどんな痛みなんだろう
普通の頭痛とは違うのかな?


お産のおなかの痛みが
食当たりのハライタと違うように
比べものにならないくらい痛いのかな


バカみたいだけど私の幼稚な頭は
こんなふうに考えていた


薬漬けにされて手遅れになる前に
守れるものを守れるうちに
時間がない、なんとかしなくては

もしや手術も避けられるかも?
友人に漢方と食事療法で治療した人がいた
すぐに電話

こちらの状況を泣き泣き伝え
励ましとアドバイスをもらった

切羽詰まったあの状況で
相談できる人がいることが
本当にありがたかった

もう一度自分の不安や想いを担当医に伝えた
親身に耳を傾けてくれた気がする
(ここも記憶にあまりない)

とにかく腫瘍が大きい
今日か明日なにがあってもおかしくない
数回に渡り説得された

このあたりで夫も職場から駆けつけたと思う

自分のことではないから
なにを決め手にすればいいのかわからない

助けたい命
私のではない、息子の命

私の力ではどうにもできない
命を守るには託すしかないのだ

医師の説明に納得し、承諾した


2021.4.23

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