日本屈指の美食の街、福岡のいま
福岡ときいて美味しいものを連想される方も多いと思います。
水炊き、鳥皮、もつ鍋など、ローカルフードと屋台が有名ですね。
その福岡、ローカルフードに限らず飲食全体が充実しており、食べ慣れた人も唸らせてくれる美食の街でもあります。
今回は福岡に遊びに来られる方に向けて、また移住を考える美味しいもの好きの参考に、福岡グルメの全体像を紹介します。
福岡グルメの生態系
実際に住んでみると福岡は色々な特徴を持っています。
例えば福岡の方はワインが好き。
市内色々な場所でワインの提供やワインバーを見ると思いますが、ワイン大人気です。
素材を活かしたフレンチ、イタリアンのレベルも高く、ワイン人気に拍車をかけています。
パンも人気です。
福岡発のパン屋さん アマムダコタンが東京にも進出しましたが、あのお惣菜パンが福岡では一般的です。
パン屋の数も多く、福岡の朝を楽しませてくれます。
はしご酒とひとり呑みも福岡の特徴です。
徒歩圏内に多くの店が集まる福岡ははしご酒に最適で、はしご酒イベントも行われています。
またひとりで入りやすい店が多く、ひとり呑みを楽しまれている方もよく見かけます。
気軽に食を楽しめる雰囲気が福岡にはあります。
激戦区は三角形
特に飲食が多く集まるのは警固、西中洲、平尾を結んだ三角形の辺りです。
私は気になるお店を見つけるとブックマークを取るのですが、この三角形のエリアだけで数百軒の店がリストされています。
右上、博多駅 最寄りの頂点が西中洲です。
高級感ある石畳の小道が特徴的で、ミシュラン星付きを含む店が並びます。
そこから南に向けて下った春吉は、東京でいえば渋谷百軒店のような雰囲気。中価格帯の店が相混ざります。
街の雰囲気は怪しいのですがこの辺りは民泊も多く、グルメ目的なら春吉に宿を取るのもおすすめです。
春吉から下ると薬院エリアになり、明るい雰囲気の中にレストランが並ぶ人気エリアです。
薬院から更に下った平尾は高級住宅街に隣接しており、地元向けのお店が充実してきます。
三角形の最西端である警固・赤坂も落ち着いた雰囲気で優良店がひしめいています。
この西中洲、平尾、警固を結ぶと一辺が 1.5km 程度の三角形になります。
1.5km といえば、東京であれば渋谷から恵比寿ガーデンプレイスくらいの距離でしょうか。
端から端まで歩ける程度、タクシーで手軽に移動できる距離であり、その中に幾つもの飲食豊富なエリアが重なり合っています。
他にも大濠公園、六本松、西新、美野島など飲食の集積度の高いエリアがまだまだ存在しています。
それぞれ比較的近い距離にあり、このコンパクトさと密度の高さが美食の街 福岡を特徴づけています。
グルメメディアを使おう
福岡の難しさは、ただ歩いただけでは店を見つけるのが難しいということです。
福岡は商業区、居住区といった区割りが曖昧でミックスされています。
そのため住宅街の中に飲食店が挟まれるように存在しており、他の街を歩き慣れた方ほどアンテナが働かないと思います。
そのため、大体のエリアに目星をつけた上で Google Map で情報収集して出かけるのが基本戦略になります。
また一軒でよいのでしっかり良いお店に巡り合って、そこに紹介して貰うのもおすすめです。
福岡はお店同士が仲良く、店内も客同士がオープンに話し合う雰囲気あり、おすすめのお店を困るくらい教えてくれるでしょう。
また飲食の豊かさから専門のグルメメディアがあり、それに頼るのも正解です。
ソワニエは福岡でよく知られた雑誌です。
旅行ガイドのグルメ特集に満足できないような方はこのソワニエのバックナンバーを数冊ぱらぱらと目を通してみるのも良いでしょう。
UMAGA は私も好きでよくお世話になっています。
Web メディアながら編集部とライターのクオリティが確かで、信頼度の高い記事を上げてくれます。
UMARABI という速報性のある有料サービスも展開されており、こちらも重宝しています。
先ほど三角形の辺りに店が集まると紹介しましたが、その薬院、平尾に絞ったローカルガイドが最近出版されました。
こちらも内容が充実しておりおすすめできます。
福岡のレストラン事情
価格帯を上げたレストランの動向も紹介させてください。
高価格帯のお店が充実することで中価格帯、ローカルのお手軽な店のレベルも充実します。
また地域の生産者を大切にし、その価値を掘り起こし、テロワールやそのエリアの四季を料理を通じて感じさせてくれるのは少しお高めの価格帯であってこそと言えます。
トップのレストラン動向を知ることで、その地域の特色も見えてきます。
期待の新店が続々と集まる
2023年から期待のレストランが続々とオープンしています。
新店ラッシュの皮切りは六本松にできた Syn です。
オーナーシェフの大野尚斗氏は 2024年の期待の若手シェフ賞にも輝きました。
他県からの移転オープンが多いのも近年の特徴です。
12月には鹿児島の二つ星レストラン NOCE が平尾に移転、
2月には広島で一つ星を取った L’Ermita が大濠公園に移転、
鮨では佐賀から鮨 多聞が、また 鮨 仙八が熊本から移転しています。
これだけ移転が重なる背景には、人口減と流通問題、インバウンドと国際競争といった数々の事情があります。
流通でいえば東京が強く、福岡でさえ流通が弱いと感じる関係者もいらっしゃいます。人口減の進む他県においてはますますそうでしょう。
シェフの引き抜き、海外移転も耳にします。
いまや羽田から飛行機で海外に魚が運ばれる時代、よい素材は取り合いであり、レストランの世界もグローバル化、フラット化しています。
シンガポール、タイ、インドネシア、引き抜かれる先も様々ですが、より高く評価される場所に職人が流れていくのは仕方のないところで、料理界もその引き合いに晒され、日本の中でも各都市への集約が進んでいます。
福岡は人口増と共にアジア圏を中心にインバウンド客も集めており、福岡にはまだ求心力が残っていると感じます。
福岡郊外が面白い
一方であえて福岡の中心部を離れ、郊外を選ぶシェフも増えています。
福岡は北に玄界灘、南に有明海を抱えて海の幸に恵まれています。
山岳にも恵まれておりジビエが豊富、土壌の力も強く、旨い野菜も揃っています。
糸島は酒米である山田錦の産地として有名であり、山田錦の全国品評会では福岡の農業法人がグランプリを獲得しています。
この自然の豊かさは福岡だけでなく九州全土のものです。
熊本、大分、長崎、宮崎、
食べ物好きの目線でいえばどこも大いに魅力的な地域であり、そこに惹かれて郊外に店を構えるシェフも増えています。
最近ではスリランカ料理のバダピリラが大分に、Kazu が唐津へと移転しました。
事情はそれぞれあると思いますが、中心部から郊外へというのはひとつの流れになりつつあると感じています。
それに伴い、郊外の自然豊かなエリアが食の楽しみを広げています。
那珂川はその新興エリアのひとつです。
ピエモンテで研鑽を積んだシェフが日本に戻って一軒家レストランを開かれており、ピエモンテを感じさせる空を気に入ってこの場所に決められたそうです。
昨今デスティネーションレストランが注目されていますが、そのコンパクト版のようなものが増えています。
デスティネーションレストランほど重厚ではないのですが、車で一時間ほどで行け、そこそこ豊かな自然が楽しめる、そんなエリアが増えてきました。
福岡は日本の中では珍しく転入超過で人口増が続いており、年齢層も若く、ファミリー層が力強い都市です。
そういった都市の周辺部に、いわば福岡民に向けてのデスティネーションレストランとして楽しめる場所が充実しつつあるのは嬉しいことです。
九州他県も面白い
福岡から話はそれますが、九州自体が面白い土地です。
長崎、天草はホテルや美食で注目度が上がり続けており、南には熊本、阿蘇が、東には大分があって瀬戸内海に面しています。
食べ物好きにとっては遊んでも遊び尽くせない空間が広がっています。
Instagram を見ていても九州に絞った美食アカウントが存在します。
もし福岡、九州の食に興味がある方はそんなアカウントをフォローしておくと雰囲気がつかめるかもしれません。
ちなみにお酒も充実しており、由布院を筆頭にワイナリも存在感を上げています。
日本酒であれば福岡だけで 50を超える蔵があり、これは都道府県別の日本酒醸造所数で全国5位となります。
私も福岡生活を中心に、九州の魅力と食の楽しみも引き続きお伝えしていきたいと思います。