月明かりで本を読む事
どうしても、いつも、生きている事に違和感があった。
まるで海を漂う海月の様に、私の足は宙に浮いて、しっかりと土を踏みしめている感覚がない。
きっと私の時間はあの16歳の夜にとまってしまったのだと思う。
私は人に近寄る事が怖い。
誰かが私の中に入ってくる事が怖い。
その人を受け入れてしまう事が怖い。
それが当たり前になってしまう事が怖い。
誰かを好きになる事が怖い。
私の中で何かを好きだと思うことは簡単な事じゃないから。
はい、それで終わり、なんて出来ないから。
私はいつの間にか、とてもとても不器用な人間になってしまったと思う。
眠れない夜に、深呼吸をして自分の心臓の音を聞く。電気を消して夜の光だけで本を読む。
足の裏をゆっくりとベッドに貼り付けて、強く強く踏みしめてはこれが現実なのか確かめる。
爪先の先の先までしっかりと感覚があってここにいるんだって分かるのに、体はここにあるのに、迷子の様な気持ちになるのは何故なんだろう。
もしもこれが夢で、目覚めたら、また月明かりの差し込む16歳の四畳半の部屋で、オレンジ色のソファベッドに寝転んでいないように、今日も祈りながら眠る。
そうだ、今日はあの曲を聞こう。
おやすみって言葉がすき。
とてもとてもやさしいから。
おやすみ。