満月の焼きカレー
失恋10日目。
キャンプ好きの上司たちから、平野の果てのキャンプ場でキャンプしているからご飯食べに来なさいという、業務命令連絡が来たので、(私は仕事だった)仕事が終わって仕方なく顔を出す。
ありとあらゆるキャンプ飯道具を使いまくって、2名の管理職の上司たちが競い合うようにして炭火で作ってくれたものを片っ端から食べていく。
ビーフシチュー、アヒージョ、焼きカレー、あんバタートーストサンド、アップルパイ、焼き鳥、ラーメン...
お昼過ぎから来ていた若手女性職員たちは、上司たちの片腕みたいに気を利かせて、具材を切ったり、食器を洗いに行ったり、火の番をしたりしていて、私も一応「何か手伝おうか?」とは言ってはみたが、限られたスペースに群がるのもアレなので、
「思ってないですよね」と笑って言われるほどあっさりと、キャンプチェアにどっしりと
座った。
明るく夜空を照らした満月の下、私たちはキャンプファイヤーを囲み、ひたすら食べたり飲んだり作ったりした。
ワイワイやるのがキャンプかと思いきや、上司たちのスタイルは無駄な会話はいっさいナシ。パチパチと薪が燃える音を聞きながら、程よく酔っ払った上司①は、
「美味しいか!?いいねー平和で。平和がいちばん。ずっと続いてほしいねぇ〜」
と食べ続ける若手女子職員たちに向かって言った。
この上司、彼とほぼ同い年...彼もこんなふうに、何かを掘り下げるでもなく、ただただリラックスして、イージーにこのシュンカンを肩のチカラ抜いて過ごしたいんだろうな...
そんな時に、恋愛のエネルギーは、やはりノーサンキューなんだろうな...いや、単に好きな人が出来ただけなのかも。
週末がきても
月が満ちても
遠いキャンプ場に来ても
まだまだこのことから逃れられない。
月が綺麗だ。