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第0章#01「なぜ、車のセールスマンが介護施設をつくったのか?」(ガスパッチョ隊長の物語)

――さて。スープタウンの仕掛人は、照れ屋なガスパッチョ隊長を引っ張り出してみましょう。車のセールスマンがなぜ、こんなにもかけ離れた介護・福祉業界に飛びこんできたのでしょう?

ガスパッチョ隊長(以下、隊長)
いやいや・・・ぼくは、「育ててもらったおばあちゃんのために」とか「地域への恩返し」~みたいな動機がある人じゃないので・・・面白くないですよ。

――くるま屋さんだったんですよね?

隊長
はい。豊田生まれ、豊田育ちですから。大学卒業後は、ずっと車の営業マンをしていました。15年ぐらい車を売りまくってきて。そこそこ売ってきた自信もありました。そこから管理職にならなきゃいけないタイミングで、起業を考えました。車って、インターフォンを300軒ならせば、半年以内に誰かが買うんです。気合と根性があれば売れる。だけど、売れない人は売れないわけで。売れない人を管理する立場になるのは違うなって。まあ、やめたかったんです(笑)。

――なぜ、デイサービスを経営しようと思われたのでしょう?

隊長
最初はコンビニ経営なども視野に入れていたのですが、いろいろ探しているときに、「お泊りDAY」という介護施設のフランチャイズを見つけました。話を聞きにいってみようかなと思っていた頃に、小・中・高とおなじ学校だったローリエさんと再会したんです。ぼくは、学生時代からガチでバレーボールをやってきたのですが、活動しているチームに、ローリエさんが合流してきて。いろいろ話しているうちに、彼女が豊田市内の特養(特別養護老人ホーム)で働いていることを知り、「あ、介護のことがわかる人を見つけた!」というノリで、「お泊りDAY」のフランチャイズ経営の話をいっしょに聞きにいってみようか?となったんです。たしか、益富中(愛知県豊田市)の体育館で、バレーの練習がはじまるまえに「これ、どう思う?」といって「お泊りDAY」の資料を渡したと思います。

――ほほう・・・バレーボールがつないだご縁だったのですね。ちなみにどれぐらいガチ、でやってるチームなんですか?ポジションは?

↑ さて、どれがガスパッチョ隊長でしょう? ローリエ女史もいるらしい・・・><

隊長
ぼくはずっとセッターです。草バレーの世界では、全国で準優勝までいきました。週4ぐらいで夢中になってみんなで練習していました。ちなみにバレーボールみたいにチームでやるスポーツは好きなんですが、マラソンとかは全然ダメです。ちなみにローリエ女史も小学校からバレーボールをやってきた人。男性がほとんどのチームに合流したいというから「ぼくら、手加減しんよ」といったら「そんでいい」といったんですよね。そこから、ガチな練習も頑張ってくれていたし、根性ある人だなあと。ま、学生時代は一度も話したこともなかったんですけどね(笑)。当時、勤めていた特養での現場仕事がかなりきつかったようで、彼女もなにか別のことをしたいなと考えていたタイミングだったようです。

――豊田市内の同級生だったおふたりがバレーボールの練習を通して再会・・・そこが、スープタウンの母体である、ライフクリエイト・カンパニー「株式会社スマイリング」の出発点だったんですね。

隊長
そうです。「お泊りDAY」のフランチャイズの条件を調べたり、親戚のケアマネさんに相談するなかで、自分たちでデイサービスを開業した方が良さそうだなと。まあ、一番の理由は、ローリエさんが、「お泊り」は運営的にまじでたいへんなのでイヤだ、といったことでしょうか(笑)。ぼくは、介護の世界に対して何も知らなかったから、現場をよく知っていて技術もある(はずのw)ローリエさんの意見を尊重しながら、デイサービスの開設準備を進めてきました。勤めていた特養も2012年の12月で完全に辞めまして、いよいよ、こちらに合流することになったのです。

――もう、引き返せない!って感じですね。

くるま屋さん時代からは180度ちがうシゴトのスタイル。

隊長
ほんとに辞めちゃっていいの?と確認もしましたが、ローリエさんが覚悟を決めてくれたことはぼくにとっても、大きな力になりました。まだまだ介護福祉業界の現状もよくわかっていな状態でしたし、ほんとうに手探りで、勉強しながら、少しずつ準備してきた感じです。ただ、当時わりと大きな特養で働いていたローリエさんが「しんどい・・・」といってたので、「じゃあ、そうならないような場所をつくればいい」とは思っていて。小規模ながらも、ひとりひとりの利用者さんに目が届く、「お家」のようなアットホームな場所ができたらいいかな、とは思っていました。

――スタートは、ガスパッチョ隊長の「おうち」を改装してデイサービスをつくられたと聞きました。

隊長
そうです、そうです。とはいえ・・・準備が整っても、すぐに利用者さんが集ってくれたわけではないんです。利用者さん一人に対して、こちらのスタッフが3人ついて・・・みたいな日もありました(笑)。最初は「お家みたいなデイサービス」というのがいいなと思ってたんだけど、あるケアマネさんに相談すると、「お家みたいな」なら「お家でいいから行かないよ」とも言われて。デイサービスとしての特徴をどうやって出していくか・・・本当に試行錯誤していました。

――そうか・・・今からは考えられないけど。そのあたりのお話を、ローリエさんも交えて、次の回で聞いてみましょう。

PROFILE_ガスパッチョ隊長/(株)SMIRING 代表取締役社長
1976年、愛知県豊田市生まれ。趣味は、学生時代から続けるバレーボール。大学卒業後から30代半ばまで自動車のディーラー(15年間)として、トップセールスを記録。その後、36才で、独立起業。バレーボールを縁に意気投合した同級生と共に2013年1月、自宅をデイサービスに改造し、株式会社SMIRING設立。社名は、SMILE+RING(人生の「今」に笑顔を作る、の意。とくに、ING(進行形)であることが大事)。「ハレの日ではなく、ケの日こそ充実した日々になるように」を志にチャレンジを繰りかえしてきた結果、「介護施設AWARDS 2021 」で全国第3位に輝く。現在、「スープのさめない距離で暮らそう」をテーマに複合施設スープタウン設立予定(2024年秋)。スタッフからはたまに「鬼」と言われながらも、子どもからおじいちゃんおばあちゃん、障がいのあるなしに関らず、全ての人にスープのようにあたたかな「日常」がいきわたる為のアイデアを四六時中、妄想している。
【株式会社SMIRING】https://smiring.info/

what's ガスパッチョ:スペインやポルトガルで親しまれている冷製スープ。暑さの厳しい地方や、夏に食べられる。トマトベースが一般的。なぜ、隊長がガスパッチョと呼ばれるようになったかは…それは今後のお楽しみ。


※登場人物についてはこちら



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