【映画感想】竜とそばかすの姫

○はじめに
これはネタバレ含みますので、未鑑賞の方はご注意ください。

ーーーーーー 以下感想です ーーーーーー

私自身新作映画の鑑賞前に、基本的に事前情報を調べたり、ネタバレに触れない程度の感想など見たりするのはOKなタイプだったのですが、なぜかこの作品だけ知りたくなくて予告映像だけの情報で挑もうと思いました。
でもTwitterには色々な情報が溢れているので、まっさら、とまではいけなくて、「美女と野獣の要素がある」という情報は入ってしまいました。
映画を観ながら、このシーンか!、とわかったのですがやはり事前に知らない方がもっと楽しめたのでは…、と少し残念な気持ちもあります。
しかし逆に言えば、知っていたおかげで不要な考えを持たずにそのシーンを集中して観れたのかな、とも思います。
情報社会は難しいですね。


本編の感想に移りたいと思います。

まず、今回の作品の感想を細田監督作品が好きな方達向けにいうと、"細田監督作品全部乗せ!"ですかね。
青春やネット世界(仮想世界)だったり、家族、兄弟など、過去作の要素を全て詰め込んだ作品でした。
そのためいろんな箇所に私の感情を揺さぶる場面があり、終始泣いてる状態でした。1席間隔あけての鑑賞だったとは言え、左右の人は驚かれたかもしれませんね、私が泣きすぎて。

ファンは気づいたかと思いますが、すずとしのぶくんの川沿いでのシーンは『時をかける少女』の千昭の名シーン「未来で待ってる」を彷彿とさせるシーンでした。『時をかける少女』が好きな私はとっても興奮しましたね。
これについては、映画鑑賞後に買ったパンフレットの佐藤健さんのコメントにも載っていて更に興奮しました。佐藤健さんと友達(同志)になれるのでは?と幻想を抱くほどに。


あとは、冒頭の方でも触れた、『美女と野獣』の要素もとても良かったです。
ディズニー映画『美女と野獣』の、ビーストがベルを突き放すけど徐々に打ち解けていくシーンや、ダンスのシーン、薔薇の要素などが『竜とそばかすの姫』の物語に綺麗に落とし込まれていて、ディズニー作品を全てリメイクしたらどうなるんだろうと、細田監督の才能をバンバンと感じました。(ただの一般人が何言ってんだという感じですが)

パンフレットによると、細田監督は人の使い方がうまいそうです。以下、プロダクションデザインを担当された上條安里さんのコメントの引用です。

「細田さんとはこれまでに何度も仕事していますが、人の使い方がうまいと思います。衣裳を実写のスタイリストの伊賀大介さんに任せたり、美術設定を実写の美術監督の私に任せたり、異業種も取り込んで新しい世界を創るセンスがいつもすごいと思います。今回はさらに〈U〉をデザインしたエリック・ウォンの使い方も見事でした。」
ーー『竜とそばかすの姫』パンフレットより引用

これを読んで細田監督の凄さの秘密がわかった気がします。上條さんの仰ることは、まさに"監督"に必要な要素なのではないのか、と普段監督のことなど考えずに単純に作品を楽しんでいる私も考えさせられました。
この異業種の方達によって、〈U〉の世界観や現実の空間もより魅力的なものになっていたのですね。



話を作品に戻します。
今回は、なんと言っても目玉は歌ではないでしょうか。
まずメインテーマ曲「U」で世界観に引き込まれ、すずがベルになって初めて歌う曲「歌よ」では、私も〈U〉の世界の一員となり聞いているような感覚になってすずの才能に感動したり、最後の「はなればなれの君へ」では〈U〉の世界のみんなが一つになっていることに感動したり…。
ミュージカル映画などを観ても思いますが、歌の力はすごいなと改めて思いました。

それと同時に、今作の主人公すずの声優を務めた中村佳穂さんの声の演技や歌声にとても感動しました。
すずの時の自信が無いような声も、スッと耳に入ってきてリアルな"普通の"女子高生に感じましたし、ベルの時の歌声は言うまでもなく素晴らしく、まさに歌姫という感じで中村佳穂さんご自身の曲もぜひ聴きたいと思いました。



個人的に好きなシーンは、ベル登場前のスターであるペギースーが当初はベルに対して嫉妬メラメラだったのが、ベルがアンベイルした時に「私と同じ普通の子じゃん」と気づくところです。
自分もベルも現実では特別な存在ではないが、誰かに非難されるべきではないと気づき「歌うのを止めるな」とベルを鼓舞します。
ここで"誰かが誰かの声(行動)に共感し応援する"というネット世界の良い部分が表されていたと思います。


あと、なぜすずのお母さんは命の危険があっても女の子を助けたのか、ずっと理解できなかったすずが、自分が素顔を晒してまで恵たちを助けたいと思った気持ちと同じだったと気づいたシーンが良かったです。
ずっと悲しみに暮れていたすずですが、そのことに気づき、悲しみから一歩踏み出せたのではないのでしょうか。


最後に、キャラクターの声についてです。
これはやはり細田監督の見抜く力もあるかと思いますが、どのキャラクターの声も素敵でした。どの声優さんもそのキャラクターの役に合った雰囲気を醸し出されていて、声だけで人柄もわかるようでした。

中でも、佐藤健さんの竜と恵の演じ分けには感動しました。
竜のミステリアスな低い声と、14歳の男の子である恵の、純粋に弟を守りたい声や大人を恨む声など本当に少年のように聞こえました。
今まで佐藤健さんの魅力に気づいていませんでしたが、この作品でグッと興味が湧きました。
これからは、佐藤健さんが出演されている作品をチェックしようと思います。



『竜とそばかすの姫』、想像を遥かに超えた作品でした。ぜひ、世界中の人にもこの感動を味わってもらい、国内外のアカデミー賞を受賞してほしいです。むしろ、これ以上面白い作品があれば教えてほしいぐらいです。

ストーリー、制作陣の背景を知った上でもう一度観に行きます。
今度は音楽や美術などに視点を置いて、楽しみたいと思います。


こういった素晴らしい作品に出会う度に、この時代に生きてて良かったと思います。
ありがとうございました。