【映画感想】犬王
◯はじめに
この感想はネタバレを含みますので、未鑑賞の方はご注意ください。
◯あらすじ
この作品は時代背景が難しいなと思ったので、おさらいの為にあらすじを記載しておきます。
以下、感想です。
◯感想
まず、私は日本の歴史に興味がなく、詳しくはありません。なんとなく、学生の時に学んだ内容を思い出して、「猿楽、聞いたことあるな」程度でしたが、めちゃくちゃ楽しめました。
それでも、平家物語とか琵琶法師とか知っていた方がもっと楽しめたかなと思います。
感じたこと
本編を観て、まず感じたのは、「かっこいい」でした。やはりミュージカルなだけあって音楽がかっこいい。
そして、舞台が室町時代にも関わらず、琵琶を弾いているにも関わらず、ロック調。もっと厳かな音楽で展開されていくと思っていたので驚きました。
そして、キングオブポップやロックスターを彷彿とさせるパフォーマンスにも驚きました。
室町時代には有り得ないであろう、音楽とパフォーマンス。それでも違和感は無く、むしろ、ストーリーの中の観客達と同じ様に、一気に友有と犬王のファンになりました。
ミュージカル作品が好きな私は、「これぞミュージカル!」とワクワクしながら観ていました。
次に感じたのは、「こわい」でした。犬王の父が呪いの面(?)を手にしたところから、恐怖を覚えました。そして、他の作品に例えるのは失礼かと思いますが、手塚治虫の『どろろ』と同じ展開だと思いました。
『どろろ』も、百鬼丸の体を妖怪に差し出す代わりに、百鬼丸の父が天下を取ることを願う。そして、百鬼丸は自分の体を取り戻すために妖怪たちを倒していく。
しかし、犬王と少し異なるのは、犬王は自分の体を取り戻すためでは無く、平家の亡霊達の物語を伝えるために能を披露していたように思いました。
犬王の父は、犬王の活躍が気に食わず強欲になり、最期には呪いの面の罰を受けます。
このポップさとダークさの融合と、それをミュージカルにできる製作陣には脱帽です。これは世界に誇れる作品、評価されるべき作品だと思いました。
テーマについて
本作のテーマとして「名前」があったと思います。
名前のなかった「犬王」、壇ノ浦の「友魚」、覚一座の「友一」、そして友有座の「友有」。名前は自分の所属や在り方を表していて、当時は重要視されていたことがわかります。
友有は、友有座が取り締られても犬王の歌を伝えたい、自分が"ここに有る"ことを伝えたいために、覚一座の仲間が庇ってくれても「友有」だと言うことを止めなかった。あのシーンの、森山未來さんの演技が凄まじく、感動しました。
そんな友有とは相反して、友有のために自分のやりたいことを抑えることができた犬王。結局、友有は処刑されてしまいますが、その後も義満の言う通りに正本のみを歌い続けたのでしょう。
犬王は、自分が醜いと認識していたり、所々で世間をよく見ていることがわかるシーンがあります。人とは異なることを気にしていないように見えて、本当は誰よりも気にしていたからこそ、処世術を身に付けたのだと思いました。
そして、最後の再会のシーン。
劇中、散々友魚の父が「名前を変えたら見つけられない」と言っていた伏線の回収に感動しました。600年の時を経て、再会するエンターテイナー達。気づいたら涙を流していました。
あらすじやポスターにある、"600年" "時を超えた友情の物語"というワードはこういう意味か、と納得しました。
一点、最後に犬王が何と呼んで友魚/友一/友有を見つけたのか忘れてしまって、ラストシーンの解釈ができない…ので、もう一度観に行きます。頑張れ、私の脳みそ!
◯さいごに
この作品が学生時代に上映されてたら、日本史も興味持てたのにな〜と、感想を書きながら考えていました。日本史の先生がこの作品を観ていたら、ぜひ授業にも取り入れてほしいですね。
この作品を劇場で観れたことを光栄に思います。あのライブ感、静寂や恐怖は、あの真っ暗で広い空間でこそ伝わると思いました。
また、アヴちゃんや森山未來さんをはじめ、各キャラクターの声を担当された方の演技や歌が素晴らしかったです。
演出や脚本、音楽も素晴らしく、全ての関係者に感謝しかありません。この時代に生まれてよかった、生きていてよかったと、心から思えます。
この作品が世界中に評価されることを願っています。
ありがとうございました。