ぼくらの三万日間戦争 2024/04/16
・宗田理先生が亡くなった。享年95歳。心から冥福を祈ります。
・私が初めて読んだ長編小説は『ぼくらの七日間戦争』(ポプラ社)だったと思う。小学二年生くらいに図書館で手にしたのだが、中学生たちが廃工場に立て籠もって大人に立ち向かう姿に衝撃を受けたのを覚えている。そして子供でも理解できる表現の豊富さと軽妙なキャラの掛け合いに関しては、今でも私が小説を書く上でも理想に挙げられる。
・そして、一度だけ宗田先生にお会いしたことがある。
・私は中学を卒業する頃に小中学生向けの小説賞を受賞して、東京で行われる授賞式に参加した。その際の審査員として宗田先生と対面できたのは光栄だった。先程、会場で一緒に写っている写真も手元に見つけた。直接に言葉を交わしたわけでは無いが、憧れの人に会えたことを一生忘れることはないだろう。
・宗田理作品は、『ぼくらシリーズ』と『2年A組探偵局シリーズ』を愛読していた。主人公の菊地英治が大人になるまでの歴史を描ききったのは圧巻の想像力だ。冒険小説であり、社会派の文学であり、ミステリの側面も備えている。時に友が命を落とし、その別れに涙したこともあった。青春の、甘い味も苦い味も感じさせる傑作たちだった。
・95歳まで筆を折らなかったのは、きっとどんな時代でも子供たちへ伝えたいことが変わらなかったからだろう。同じことを異なる言葉で、異なることを同じ媒体で語ることには強い意味がある。私は、その思いを受け取った宗田理の生徒の一人である。
・人生は平均三万日。その中で沢山の戦いを経て、私達は何処かへたどり着く。その戦いの相手は、社会だったり大人だったり自分だったりする。諦めずに立ち向かう勇気、何よりも楽しむ心も忘れずに、一日ずつ前へ進んでいきたい。
・物語はきっと、その原動力になってくれる。
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