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STが上昇していたらSTEMIか?

STEMIだったら循環器に即call

高血圧, 2型糖尿病治療中の55歳男性が胸痛を主訴に来院しました. 冷や汗をかいていて...こんな症例では誰もが心電図をすぐに確認し, STが上昇していたら(していなくても)循環器内科医をcallしますよね.


急性心筋梗塞の典型例 vs 非典型例

急性心筋梗塞など急性冠症候群(acute coronary syndrome ; ACS)は失神や前失神, めまい, 嘔吐など非典型的症状を主訴に来院した場合にはエラーが多く, 現場の対応も悩ましいこともありますが, 胸痛や呼吸困難など典型的な症状が主訴であればアプローチは比較的シンプルです. もちろん心電図や(高感度)トロポニンを時間を味方につけ上手に利用することが求められますけどね.


胸痛患者のST上昇

ACSを疑った患者の心電図でSTが上昇していれば”STEMI"として循環器医をcallするのは誰も文句は言わないと思います. 「大動脈解離や肺血栓塞栓症のこともあるじゃないか, その辺も鑑別しろよ」って言われるかもしれませんが, まぁこの辺りは循環器医を呼びつつでOKでしょう. STEMIと大動脈解離, 肺血栓塞栓症では頻度的には前者が多いですからね.

ST上昇は全て循環器疾患か

それでは, なんらかの理由で施行した心電図でSTが上昇していたら, その場合も即循環器医callでしょうか. 結論から言えば, これはお勧めしません. 如何なる検査も結果の解釈は検査前確率に大きく影響されます. 心筋梗塞以外にもSTが上昇することはあるんです. それも様々な疾患や病態で認めます. 今回は1つだけ覚えておきましょう. そ・れ・は, クモ膜下出血(subarachnoid haemorrhage ; SAH)です(1). クモ膜下出血では様々な心電図変化が認められることが有名ですが, STの変化も認めることがあり, ERでも忘れた頃に経験します(2). 毎月の様に経験するわけではありませんが, 毎年1例は遭遇する, そんな感じでしょうか. SAH以外にも前述した大動脈解離, 肺血栓塞栓症, たこつぼ症候群, さらには敗血症や高K血症などでもSTが上昇することがあります.

Hi-Phy-Vi>Test

大切なことは, 検査結果, 今回であれば心電図を読む際に, そもそも何を疑っているのか, 病歴や身体所見はSTEMIで見合うのか, この辺りを意識することでしょう. そもそも胸痛ではなく頭痛や頚部痛を主訴に来院している場合にはSAHを鑑別に挙げるべきです. また, 突然ないし急性発症ではなく, 来院前日から発熱や倦怠感を認め...などであれば胆嚢炎など敗血症かもしれません. また, 腎機能障害患者であれば高K血症に代表される電解質異常をまずは確認し異常があれば介入するべきでしょう.

心電図はベッドサイドで施行可能かつ非侵襲的な検査であり閾値を下げて行うべきですが, 結果の解釈に大切なこと, これを意識して行動しましょう. 病歴(History), 身体所見(Physical), バイタルサイン(Vital signs)をあたりまえに確認し, 検査(Test)の解釈を行いましょう.


#1. Cima K, Grams A, Metzler B. Subarachnoid haemorrhage mimicking a STEMI. Eur Heart J Acute Cardiovasc Care. 2017 Dec;6(8):736-737. doi: 10.1177/2048872616655942. Epub 2016 Jun 17. PMID: 27316565.

#2. Sommargren CE, Zaroff JG, Banki N, Drew BJ. Electrocardiographic repolarization abnormalities in subarachnoid hemorrhage. J Electrocardiol. 2002;35 Suppl:257-62. doi: 10.1054/jelc.2002.37187. PMID: 12539136.

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