木造防音工事より大事なもの
投稿画像は同じ職人が担当した別の木造ピアノ室の関連写真ですが、話をイメージできるように載せました。今回投稿する事例は、守秘義務があり、デリケートな内容を含んでいますので、当該現場の記録写真は掲載できません。
事例の現場は、東京都杉並区内の木造ピアノ室の防音リフォームです。施主(ご家族を含む)の安全性を防音工事よりも最優先した話です。
新築時点で構造柱と2階の床を支える梁が繋がっていなかった
既存のボードや内装を解体した時点で、梁と重要な柱が接続されていない箇所があり、ピアノ室の防音施工を実施する前に、施主の命を守る対策を、最小限の追加費用を捻出して検討しました。
地震が発生したときに大事なのは、建物が潰れる場合に避難する時間を確保することです。対策として、梁と構造柱を新規の横架材と補強金物で緊結して補強しました。追加で掛かった費用は構造材・補強金物と大工の手間賃だけです。私の経費は我慢しました。
明らかに新築業者の手抜きでしたが、これを見ぬふりして適当にリフォームを完了させる業者も少なくなくないと思います。※他の現場ではリフォーム業者によって切断された柱を補強し直したこともありますので。
事例の現場では、私は職人と相談して、防音工事を1日延期して補修を先に実施したのです。
構造補強と防音工事を両立させる対策を現場で瞬時に考えた
防音工事よりも大事なものは何でしょうか?
それは施主・家族の命です。安全性を確保しながら防音対策を考えるのが専門家の責務だと思います。
対策内容は構造的な補強をしながら、防音材(吸音材を含む)を計画通りに施工できるように、現場で考えました。しかも、予算が厳しく、使える建築材も費用対効果を重視して選定する必要がありました。
後日、ピアノを演奏していただいたのですが、部分的に音が響きすぎる箇所があり、手弁当で吸音材とカットするハサミを施主に提供しました。ここまでする必要は無かったと思いますが、自分が納得できるようにしました。
残念だったのは、施主は私の苦労や構造的補強の意味をご理解されていなかったようです。私の自己満足だったかもしれませんが、専門家として何を重視するかというスタンスは、防音設計の専門家として最も大事な職能だと考えています。「防音職人」という屋号の理念を表しています。
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