見出し画像

木造の吸音材と断熱材

建築士や建築会社が最も勘違いするのが「吸音材」と「断熱材」です。製品そのものが異なります。「高気密・高断熱仕様」と「吸音仕様」も異なる場合があります。

吸音材の製品

木造やマンションで使用される断熱材は、発泡材(スチレンフォーム・ウレタンフォームなど)と繊維系断熱材(グラスウール・ロックウールなど)があります。前者は現場吹き付け・注入するものとマット状の製品です。後者は防湿フィルムに包まれたものと防湿フィルムが貼ってある製品です。いずれも「吸音材」としての専用製品ではありません。

防音工事で使用する吸音材は防湿フィルムのない裸の製品です。単価も断熱材よりも高く、見た目が似ていても価格がかなり違います。もちろん、繊維系の断熱材には吸音性もありますが、発泡材の吸音性は極めて低く、音の周波数によっては逆効果になる場合があります。30年以上前の遮音設計マニュアルにも明記されています。

発泡材による高気密・高断熱仕様は、木造住宅など木造建物に使用すると従来の仕様に比べて防音効果が、概ねツーランク程度低下します。昔の木造住宅はD-35からD-40程度の遮音性がありましたが、最近の住宅はD-25からD-30程度のレベルです。窓と壁の遮音性能が大差ないです。内窓を取付けても殆ど防音効果が体感できないのは、このためです。壁とセットで対処しないと無理なのです。

吸音材などの吸音率の変化

一般的に吸音材の厚さが大きくなると、大半の周波数帯において吸音率が大きくなります。密度の大きな製品を使用すると高音域の吸音率が向上します。低音域の吸音率は製品によって大きな差があり、製品選定に際しては留意する必要があります。密度の高い製品でも低音域の吸音性の弱い製品が多く、これが防音設計を難しくしています。

ちなみに、防音設計においては、「空気層」と「吸音層」は意味が異なります。前者は吸音材が充填されていない空洞を意味します。後者は吸音材が充填された構造体のことです。概ね厚さ25センチ未満の空気層は低音の減衰効果は殆ど無く共振体になることが多く逆効果に作用するようです。典型的な事例がマンションの二重天井です。一般的なマンションの天井裏の深さが10センチから20センチ程度しかないからです。上階の重量音が増幅されて響く要因になっています。

防音設計の専門家の見分け方

木造やマンションの防音設計の専門家を見極めるには、設計仕様における吸音材の扱い・製品仕様を見ることです。これは経験値や経験則に大きく左右されるので、経験の浅い建築士やエンジニアには専門的な知識や施工要領が不足しています。

とくに木造建築における防音設計には、吸音材と木材の知識・経験が重要です。木造軸組在来工法においては、通気層・換気空間と防音構造の共存が不可欠のため難易度が高くなります。建物の寿命を縮めるような無理な防音設計はナンセンスです。

いいなと思ったら応援しよう!