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防音材・技術力と費用対効果

国内外の原材料価格や輸送経費など全て値上りしたり、資材不足が深刻化しており、価格競争は限界に来ています。

これからは、優れた製品・設計サービス・技術的な提案を重視していく時代になると思います。私の本業である防音設計においても転換期を迎えており、製品レベルや技術力の差が大きくなってきました。

価格差がなくても、防音効果や安全性などの面で差が開くという現状を、正しくユーザー・施主に伝える必要性が高まっており、私の場合は情報発信力において課題を抱えています。

せっかくの技術力や高品質の防音材を保有しているにも関わらず、伝えきれていないという課題を、今年は改善していかなければならない。

設計マニュアル・カタログにはない防音情報

古い設計マニュアルだけでなく、最新の遮音設計マニュアルにも記載されていない内容です。主に、防音相談と担当した住宅・防音室の現場を精密測定したり、提携先の内部データを突き合わせて分析したものです。

おそらく、私が現役の防音設計エンジニアとして活動する期間において、他の専門家によって書籍や論文として公開されることはないと思います。
あくまで、防音職人のウェブサイトのコンテンツとして、また私の頭の中に入れて活用するだけのマニュアルとなるでしょう。

では、情報サイトで執筆中のさわりの部分だけご紹介します。

マンションなど二重床・二重天井の重量衝撃音
・現在のマンションの二重天井は、重量衝撃音(主に30Hzから500Hz)に対して共振体になっている。
・主な原因は比較的浅い天井内部のフトコロ空間における空気層の共振
・石膏ボードそのものを共振透過してくる。
・このうち、足音や重量物の落下音など重低音のインパクトは30Hzから250Hzである。
・騒音を軽減するには多層構造が必要。吸音層+制振+遮音層の構築で対処。
ちなみに、軽量衝撃音(主に125Hzから2000Hz)については、二重天井は減衰効果はある程度期待できるが、空気層は最低でも30センチ以上必要となる。
*20センチ程度の場合は、空気層に吸音材を充填する必要がある。

防音材の遮音効果
・硬質遮音材(石膏ボード・ALC・鉛ボード・硬質シージングボードなど)は制振効果が小さく、コインシデンスによる大幅に質量則を下回る遮音低下が起きる。板状の硬質遮音材の共通した特性である。
・このため、重ねて施工しても防音効果は限定的であり、逆効果になる周波数帯も生じるため、防音設計には注意する必要がある。
・遮音材は、面密度4kg/m2以下では中低音(約500Hz以下)の軽減効果が小さい。
・面密度約3kg/m2以下の遮音シートなどの製品をボードに重ねて施工しても効果を、殆ど体感できない。
・低音(約125Hz以下)を減衰させるには、面密度約6kg/m2以上の防音材が必要になる。柔軟性がある遮音材が望ましい。

なお、市販品および専門メーカーの受注生産品では、遮音ゴム、樹脂(塩ビを含む)、ブチルゴムを主成分とする遮音材があるが、このうちリサイクルゴムは品質が一定しないだけでなく、劣化しやすいので製品選定には注意が必要です。

実践的な分析データが重要

机上の理論や既製品メーカーの防音材は、実際の現場での効果が精密測定されたり、分析されていないという問題があります。

これをクリアするには、現場データや体験によって補正するしかないです。

補正して自分の設計マニュアルとして、経験値としてストックすることが専門家としての裏付けになります。それには数多くの現場を経験することが必要であり、時間も経費もかかります。

通販業者や建築業者が使用する防音材の多くは、メーカーのカタログ資料しか根拠がありません。このため、実際の現場での効果と乖離するのです。これが他の専門業者や建築士などが失敗する主な要因です。

私は、このような状況に警鐘を鳴らしたり、施主などの依頼者が正しい目を養っていただくように、微力ながら「木造防音に関する資料ページ」を久しぶりに更新することにしたのです。

約28年間の研究と体験を振り返りながら、現在、少しずつ作成中です。もう、新しいコンテンツは作らないと思っていたのですが、あまりに建築士や施主が既製品メーカーや情報掲示板の内容を鵜呑みにすることが多いので、考えを変えました。

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