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防音製品の性能表示のリスク

この投稿記事は、前回の記事の続編です。通販業者や防音専門業者が掲載している防音製品の性能表示は信用できるのかという問題ですが、実際に現場で施工すると性能表示より防音効果が非常に小さいという事例は少なくないです。

また、民間・公的機関の防音製品の試験データと現場での効果が乖離する要因は主に3つあります。
「施工要領が間違っている」「試験体の拘束条件と規模が現場と異なる」「試験に使用した防音製品の不正加工」
このうち2点についてはすでに、ある程度、当ブログなどで説明していますが、防音製品の不正加工については、殆ど採り上げたことはないと思います。

施工要領が間違っている

これは、今まで複数の記事で何度も説明してきましたので、当ブログの読者の方は、ほぼご理解いただけているとは思いますが、主に2つのケースがあります。
1つは、製品メーカーの説明書が間違っている事実については、他の記事で説明したとおりです。つなぎ目の処理や壁と床の共振回避の絶縁が無視されている事です。

2つ目は、防音設計を理解していない施工業者が、安易に思い込みだけで施工して起きる遮音低下です。その典型が、遮音シートを捨て貼り工法で施工したり、床の振動軽減に使用したりすることです。
また、低周波騒音に対して、薄い吸音材と面密度の低い遮音材だけで対処して性能不足となることです。主に現場経験など設計施工の実績がない業者によって起きる問題です。※低周波には高気密高断熱工法は全く意味がありません。

メーカーの説明書に注意事項が落ちていたり、製品そのものが性能不足のため、重ねて施工しても殆ど防音効果が向上しないことが多いです。

試験体の拘束条件と規模が現場と異なる

これはメーカーの防音材試験の試験体の拘束条件と現場の区画規模の大きさが要因となって起きる防音効果の乖離です。つなぎ目の有無や音源から発せられる音エネルギーの強さや放射角度、対象となる構造体の表面積の違いなどによって誤差が大きくなります。
これはある程度仕方のないことであり、経験則によって、性能不足を補正する防音設計・施工要領が必要になります。
この補正技術がないと、専門業者でさえ木造建物において失敗する現場が増えます。

また、防音材を単体で計測したデータだけで、構造体全体の防音効果を想定することは無理です。複数の防音材と建築材を施工した場合の現場で精密測定した効果を経験則としてストックしないと木造の防音設計は出来ません。
単純な質量則の簡易計算だけでは対処できません。
対応できるのはコンクリート構造の界壁だけです。

試験に使用した防音製品の不正加工

この事例は、提携先と取引先のベテラン建築士による内部情報です。
メーカーに関するヒントは掲載できません。
起きている問題は「遮音フローリング」「リサイクル遮音ゴム製品」「鉛の遮音パネル」の3つに関して把握していますが、鉛の遮音パネルは、現在は殆ど使用されていないようですので、実害があるのは遮音フローリングとリサイクル遮音ゴムになります。

遮音フローリングは試験体と市販品の仕様が変更されて起きる現象と思われます。計測する技師には試験体と市販品が同一個体なのか追跡することは出来ないと思います。
リサイクルゴム製品は、リサイクルゴムチップを加工して製品化された遮音材であるため、品質にばらつきがあることと、経年劣化のスピードが早いため、新築時から年数が経過すほど、防音効果は低下します。

そういう特性があるにも関わらず、同じ名称の製品を途中で原材料の変更を行ったため、切断面が捩れるなどの劣化した製品が生産されたということになります。その事情は、コストの問題が影響したと思われますが、知らないで使用した建築士や施工業者は、解体して問題の遮音材を計測し直す以外に確かめる方法はないと思います。

防音職人において、その事実に気づいたのは、専属の職人です。切断面や使用中の重さが、いつもと違和感があるという報告を受けて判明しました。
なので、防音職人では、そのメーカーの防音材は一切使用しません。信用できないからです。

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