制約条件と木造ピアノ防音室
木造ピアノ防音室は、通常、住宅地の中に新築またはリフォームとして計画されることが多いです。このため、近所との距離や建物構造・予算的な制約の中で、「できる事と出来ない事」を仕分けすることから始まります。
さらに、費用対効果や耐久性・安全性を重視するための対策を計画書(提案書)の中に盛り込みます。これらの条件整理と計画の仕様書の段階が最も重要な場面であり、相当な時間がかかります。
画像のような比較的広いピアノ音楽室では、面積が大きい分、予算が厳しくなり、特に費用対効果が求められます。逆に、狭いピアノ室は、薄い防音構造しか対処方法がなく、天井裏・床下・壁内の空間を最大限に活用することが重要になります。
薄い防音構造は狭い防音室だけでなく広い音楽室にも適する
予算が厳しい場合や防音工事の専門業者に依頼できない場合、地元の大工職人が問題なく施工できるように考案したのが「薄いコンパクト防音仕様」です。防音職人の特長の一つになっています。
逆に分厚い防音構造は、広いピアノ音楽室には施工可能ですが、狭い部屋には採用できません。最近の防音相談の案件では、約4.5帖から約8帖の計画が多く、リフォームでは、これが普通になっています。
中には、木造の2階にグランドピアノを入れる計画もあり、重量的な問題も大きな制約となります。このため、過重量にならないように薄く構築することと構造的な補強が同時に求められます。たまに構造柱を補強しながら間仕切り壁を一部撤去する木造ピアノ室もあり、薄い防音構造以外の選択肢がない現場があります。
防音職人の防音設計仕様は制約条件を解決するために生まれた
「必要は発明の母」とは、よく言われる言葉ですが、防音職人のコンサルティングスタイルや設計仕様も同じことです。
直面する問題や技術的な課題を苦心しながら克服してきた経験値や取引先に依頼した試験データ、自腹で取引先に音響精密測定を発注して検証するという行為の積み重ねで、机上の理論や防音材などの製品効果を補正してきました。
ですが、万能な対策や防音設計・工法というものは有りません。様々な制約条件の中でベストを尽くす取り組み以外に、我々が出来ることはない。限られた経験の中で、一緒に仕事をする建築士や職人と情報交換をしながら、足りない点を補うことが私に出来る事だと理解しています。
出来ることは最善を尽くし、出来ないことは、依頼者に分かるように説明することが重要だと思います。特にリスク回避の重要事項は施主にはできる限り説明することにしています。なので、提案書の段階で見送られる案件も少なくないです。
ただし、聞く耳を持たない人もいるので、深追いしないようにしています。特に他のウェブサイトから情報を仕入れて押し付けようとする人は要注意です。根拠のない、実績のない製品や施工要領不在の設計仕様を鵜呑みにすることは相当なリスクがあります。
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