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薄型の木造防音室(音楽室)

この現場は神奈川県内の住宅地に新築で計画された木造音楽室です。今年完成したものですが、主に依頼者からのご報告を中心に投稿します。

以下、依頼者の生の声です。「もとよりバンド練習に使っているような本格的なスタジオを狙ったわけではありませんが、個人が自宅で練習をするのに、周囲への音漏れを気にせずに済むのは精神衛生上、大変ありがたいです。見た目も含めて居住空間として心地良いのが気持ちを上げてくれますし、必要以上に部屋が狭くなっていないのも助かります。」

「入り口のドア(新築業者が取付けたもの)に関しては、正直性能面で物足りないモノがありますが、この点は最初から分かっていたことですし、インテリアの統一感を優先した結果として受け入れております。いずれにしても、トータルでの満足度は非常に高いです。これから同じような部屋を作るのにも同じ金額ではできないと聞くと、なおさら感慨深いです。」

防音職人の分析

今回の件は、ご予算以外にも、床に関しては大きな制約があり、簡易防音施工になっています。
*ギターと電子ピアノなので床の振動は少ないという判断です。
*全体的に薄型の施工であり、周辺環境などを考慮したものです。測定は、私が渡した機器による簡易測定ですが、懸念された床下からの音漏れは予想以上に小さく、他の同様な仕様の現場よりも体感的には小さいようです。

さすがに、持ち込んだ大型スピーカーは床・壁への固体音伝播が大きいので、グランドピアノ以上に振動させて計測しています。(計測した結果を見ると上階のリビングに音が伝播しているのがわかりますが)今回はご予算の都合とご使用の楽器を考慮して、床などの防振対策は特段していません。今後、他の事例と比較して検証しますが概ね想定内です。

依頼者の後日の補足報告によると、仕上げもきれいで、音響も大満足だそうです。
使用した防音材と床材は十分な効果が出ています。ベースギターを使用して、気になる音漏れが無いのは、手前味噌ですが、設計仕様と職人の丁寧な施工がいつも通りうまくいったと言えると思います。

木造・木製品が音を吸収した

上記の依頼者の声と私(防音職人)の分析結果から言えることは、木材など木製品が音を吸収したため、予想以上に音漏れがなく、薄い防音構造とよくマッチしたと思います。

やはり、木造軸組在来工法の建物には、木材・木製品をフルに活用することが音響・防音効果を高めるのだと、改めて認識しました。
床に使用した杉無垢材のフローリング仕上げも効果的だったと思います。

杉材は共振を抑える特性があり、吸音性も高く、プロの音楽家が好む材料です。弱点は表面に細かいキズが付きやすいことですが、それを余り気にしないで、経年変化として味のある素材と考えていただけると幸いです。

私の中学・高校時代の音楽室は床と腰壁は、塗装もしていない杉板張りでした。素朴な音色ですが、心地よい響きがありました。

とにかく、私が選定した防音材(受注生産)は、木材・木製品と相性が良いと言えると思います。

なお、木造軸組在来工法の防音設計・工事の実例情報は少なく、出典不明の情報は玉石混交と言えると思います。鵜呑みにしないようにご注意下さい。

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