建築士のフェアプレー・ファインプレー(木造現場)
この事例は、特殊な事情があって詳細をあまり記載できませんが、木造音楽室の新築現場の話です。※首都圏の住宅地ということだけで、具体的な場所も伏せます。
施主の都合でキャンセルになろうとしていた案件ですが、初めての取引で知り合ったある会社の建築士のファインプレーで復活した事例です。この建築士は施主と契約している建築会社のスタッフです。
建築士の正義感とフェアプレー
私が未契約の状態で、今まで詳細な計画書や見積書を施主を信じて渡していたことを聞いて、建築士は驚いていました。施主の甘い資金計画で防音設計の契約が中止になろうとしていた状況を、これはフェアじゃないと言いました。
私は、いまどき首都圏では珍しい建築士であり、こういうスタッフが居る建築会社なら私も安心して取引が出来ると思い、今回の案件が契約にならなくても何か有ったら、私に直接防音設計を依頼してほしいと、彼に伝えていました。
彼の方も木造の防音設計エンジニアを探していたので、タイミング的にお互いの目的が合致したということです。彼はここで一計を案じました。施主が大幅に防音資材の経費を削って防音設計まで建築会社に依頼しようとしていたことを察知して、意図的に市販品を使って防音工事費用を安くならないようにダミーを見積りました。
これを見た施主が「建築会社に一括して依頼してもメリットはないですね。」と言ったそうです(笑)。これを聞いた私は、施主はあまり信用できないが、この建築士だけは信用できると判断して、修正案を彼に授けました。そして彼が調整した結果、施主が私との修正計画の契約を決断しました。
建築士のファインプレー
以上の話を建築士から電話で報告を受け、私の方から施主に辞退することを伝えようとしていたのを思い留まり、連絡を待ちましたら、施主から契約をお願いしたいという旨をいただきました。
建築士はインチキな見積書を作ったのではなく、わざと市販品で見積を作って施主に渡したのです。そもそも私の受注生産の防音材は市販品より単価が低いので、同等品なら見積でも負けるわけないのです。
彼は私から事前に防音材の業界の事情と仕入れ単価の傾向を聞いて理解していましたので、手間はかかるがダミーの見積書を作ることが出来ました。普通の建築士なら、そんな面倒なことを忙しい最中にするはずもないのですが。彼は私が誠実に情報を提供したので私のことを信用したのだと思います。施主の考え方のほうが間違っていると判断したようです。
下駄を履くまでは分からない
今回の事例のように新築担当の建築士のファインプレーでうまくいくこともあれば、別の案件では建築士の背信行為で、私の契約が潰れたり、新築工事の最中に想定外の問題が発生した現場もありました。
世の中不景気になり、建築会社が防音専門業者から謝礼を受け取って、施主に推薦する建築士も居ます。施主との契約が完了するまでは油断できないのです。私の取引先のベテラン建築士は「建築士の敵は建築士である」「悲しい世の中になりました」と言います。その彼も同じようなことしているのですがww。
今年は面識のない二人の建築士に助けられました。これからもこの2つの建築会社(建築設計会社)とは付き合っていくつもりです。