理論式と現場の防音効果
机上の理論式や製品データによる防音効果の想定が現場の実測値と乖離することは、よくあることです。
それは現場の建物構造や構造体の規模などによって防音効果が異なるのは当たり前の現象です。
理論式や製品データの試験体測定は、通常小さな区画で行われるため、区画の規模も試験体の拘束条件も実際の現場の施工条件と異なるので、音響透過損失(遮音性能)そのものが乖離します。
このため、古い計算式やメーカーの製品データをもとに遮音性能を算出することは、かなりリスクがあります。
大半の専門業者は、この事実を知っていますので、現場の特性を考慮しないで、最初から過大な防音構造を設定して設計を行います。
費用対効果が低くくなるだけでなく、無駄に分厚い構造体は部屋を必要以上に狭くしてしまうことが大きな問題です。
では現場の防音効果と設計仕様の想定値が乖離することを、どのように補正すれば良いのでしょうか。
経験則によって机上理論を補正する必要がある
透過損失を部屋の規模別に計測して分析して、標準的な設計仕様を作成して、現場の個別状況に応じて補正する方法が無難です。
また、使用する防音材の単体のデータではなく、他の建材と重ねて透過損失を計算することで、現場の防音設計に適用できます。
このため、取引先の防音材メーカーに、出来る限り複数のパターンを実験してもらい、詳細な周波数別の遮音特性を把握することが重要になります。
*最も多用される建材の石膏ボードと重ねた場合の計測データが役立ちます。あとは、自分の担当する現場での施工完了後の計測データを分析することで、防音効果を予測できます。
経験則として沢山の事例を資料としてストックすることをお勧めします。
透過損失(遮音性能)を建築材とセットで数値化する
以上述べてきた内容を踏まえて、石膏ボードや合板、シージングボードなど一般建材と防音材の組合せによって計測された数値を防音設計の根拠とすることが有効です。
既製品の防音材メーカーの計測データを鵜呑みにしないで、自分が担当する現場での防音効果を検証することで、想定値をより正確に予測できます。
取引先メーカーの協力を得ながら、自分の担当した現場での計測データを経験値としてストックすることが、多層構造の防音設計仕様に非常に有益です。手間はかかりますが、理論値を補正することは、木造のような比較的薄い防音構造を必要とされる現場にとって、極めて重要なアクションです。
また、単一の防音材で計測するのではなく、複合化した場合の標準仕様の確立は、幅広い周波数の防音対策に、とても有効です。
とくに、音域の広いピアノ防音室における分析事例を分析することで、標準的な防音設計の仕様を作成できれば、多様な楽器の防音室に適用できます。
防音職人では、提携先の建築会社の計測などの調査、取引先メーカーの内部資料、契約者(依頼者)の完成後の具体的な報告内容を総合的に勘案して標準防音設計を補正してきました。
今後も、さらに効果的な設計仕様を作れるように、分析作業を継続していきたいと思います。
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