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建築士や施主が勘違いする遮音性能

新築の木造住宅を中心とした話ですが、特に最近の建築工法における遮音性能の勘違いです。
ベスト3は「高気密高断熱の発泡材工法」「ALC工法住宅の遮音上の弱点」「遮音シートの過信」です。
これは、実際に提携先建築士と一緒に現場調査して精密測定した経験と現場で施主と一緒に長時間戸外騒音を確認した事例、および防音相談における情報収集の結果判明したことです。
*キーワード:発泡断熱材の気密工法、ALCパネル工法、遮音シート、石膏ボード、コインシデンス、空気層・断熱層の共振透過、つなぎ目の遮音欠損、面密度

ちなみに、専門外の人が、思い込みで発言した内容がネット上で独り歩きするので、自分で検証したコンテンツや信頼できる取引先のプロが発言した内容以外は、安易に発信しないほうが良いです。

特に私は、他の専門業者のコンテンツの流用はしないで、自分の目を経験を信じてオリジナルの設計仕様・施工要領を作ってきました。思い込みや他の建築士・専門家の情報を鵜呑みにはしません。
信頼できる提携先と生きた情報を交換しながら、必要に応じて、その道のプロからヒアリングして、その対価として誠実に取引をしてきました。
このブログでの投稿記事は、その中の概要の一つです。マニュアルや他の専門業者が見逃してきた事実を追求しています。

高気密高断熱の発泡材工法

近年の流行りの建築工法として、「高気密発泡材断熱工法」がありますが、壁内で複数の周波数帯の音が共振透過する現象が起きるため、従来型のグラスウール・ロックウールの断熱工法より遮音性能が低下するという致命的な欠陥があります。気密性が高いほど断熱層・背後の空気層が共振します。
*むしろ、高断熱の新製品であるグラスウールのほうが断熱性能と吸音性のバランスが良く無難な選択と言えるでしょう。

特に硬質系発泡断熱材の弊害は、30年以上前の遮音設計マニュアルにも明記されていますので、古くて新しい問題の有る工法です。
*このマニュアルは、私が購入した約30年前に、建築関係の書籍が置いてある一般的な書店で入手できるものでした。住宅の防音設計を担当するゼネコンの技術者・建築士が執筆した書籍です。
以下に、一般的な吸音性の傾向を示す参考のグラフを入れておきます。

硬質ウレタンフォームおよびポリエチレンフォーム等の発泡材断熱材は、一般的なグラスウールやロックウールよりも、吸音率がかなり低くなります。生活防音の設計仕様として、建築士は考慮すべき重要事項です。

ALC工法住宅の遮音上の弱点

私の担当現場の相談者(契約者)が新築業者の説明を信じて建築した新築のALC住宅(中身は木造)は、みなさんが期待するほどの遮音性能はありません。軽量気泡コンクリートパネルそのものが致命的なコインシデンスを持っています。
*ALCは低音域の音に対して遮音性能は低いです。このため、戸外の車の走行音などが住宅内部に透過してきます。
しかも、大半のALC住宅の外装のつなぎ目からも音漏れしています。低音域の周波数帯だけでなく、高音域の周波数帯においても弱点を抱えていますので、生活防音という目的としては費用対効果の低い建築仕様です。
唯一のメリットは耐火性に優れている工法であることです。

この事実は、私が約30年掛けて追求してきました。現時点ではすでに結論が出ている建築工法です。
従来型のモルタル仕上げの木造住宅よりも、建築費用が高くなる割に、遮音性能は低下します。
むしろ、従来型のモルタル仕上げの建築仕様の木造住宅の遮音性能は安定していますので、費用対効果は良いと思います。
*特に音楽防音室の用途には適しています。

遮音シートを過信してはならない

一般に市販されている大半の遮音シートは、施工要領が間違っているだけでなく、遮音性能自体が小さく実用的ではない製品ですが、使い方次第では、効果は出ます。
私は建築士が担当する新築住宅において、実際に市販品の正しい施工要領を指導してきました。
特に、提携先の建築士が予算上の制約でやむを得ず使用する際も、出来る限り効果が出るように詳細を提示しています。

結論から言うと、市販の遮音シートは捨て貼り工法では無力に近いです。遮音性能のアップは僅かです。
この事実は、日本音響学会が20年以上前に実験で分析しています。私の相談者の大半も効果は体感できないと言います。
もしも効果があると信じている人が居れば、それは他の建築材の効果そのものであり、遮音シートの特段のプラス効果ではないと思います。

面密度が小さく、制振性能が乏しい市販の遮音シートは、プロの現場では基本的に使用しません。あくまでDIYユーザー向けの市販品です。
その施工要領も正しく使ってこそ意味のあるものです。この製品には正しい施工要領(取扱説明書)が付いていません。

特に、木造のピアノ防音室では無力であると思います。新築の場合は、私の考えた施工要領で使用すれば、プラス効果は出ています。
提携先の複数の建築士がその事実を知っています。
しかしながら、リフォームでは使えない製品です。新築において手順を間違えなければ、使える場面があります。

以上の内容は、今まで防音職人のブログや情報サイトにおいて、複数回投稿した記事の概要の抜粋を少し補足して記述したものです。

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