助けることが出来なかった低周波騒音の事例
事業者である私は、一番貴重な経験として記憶しているのは、「助けることが出来なかった事例」です。
それは主な原因が分かっているにも関わらず、予算的に対処できなかったものが多く、そして施主の理解が得られなかったという要因も重なり、防音相談の先の段階である「防音設計」「契約」まで到達できなかった案件です。
本稿では、こういう問題が有るということだけ触れます。対処方法は、単純ではなく複合的な対策を必要とするケースが少なくないからです。
ちなみに、投稿した画像は、私の相談室の小部屋です。いまは、テレワークのため物置(資料・サンプル材)になっています(笑)。現在は、リビングで打合せしたり、大半の件は、メールとウェブサイトで対応しているので、殆どお会いすることがありません。
低周波騒音の事例
これは、戸建住宅とマンションの事例が大半を占めています。生活している居住者が被害者なので、テナントや事業所の事例は少ないです。(取引先は法人が主なので工場・オフィスビル・賃貸マンションなども多い)
私の防音相談は個人の施主や居住者が多いので、生活の場における低周波騒音に晒されている身近な事例です。誰にでも起きる現象です。
戸建住宅では、圧倒的に「エネファーム」「エコキュート」による低周波音が主成分であり、工場が近接している地域では稼働音になります。
精密測定すると、大半が30Hzから125Hzの音が主成分であり、低周波にシフトする現場です。私の防音設計では超低周波の20Hzは実績がないので、保証が出来ません。この場合は、音源での対策以外に方法がありません。
助けることが出来なかった事例は、この超低周波騒音の現場と、予算的に理解されなかった現場です。この問題は現在でも答えが見つかっていません。
超低周波騒音の対策はないのか?
現実的な対策は、被害者側では殆どないと思います。
なので、原因側の方で音源対策として、重い遮蔽物で囲むことが有効な対処方法ということになります。
ただし、基礎や地面を伝播して振動音として拡散している場合は、被害者側での対策と併用することになります。
私の方では工場騒音の対策として戸建木造住宅の寝室において成功した事例がありますが、その現場は超低周波だけでなく色々な周波数の音があり、たまたま被害者に聴こえていたのが30Hzから63Hzの周波数帯だったという結論になりました。
有効な方法を被害者側で施工できる仕様を確立できていないと言えます。私も最近は、一般的な騒音問題ばかりの依頼になり、特殊案件は取引先に紹介しています。
しかし、いずれも加害者側の協力や依頼者の理解が得られずに保留になっているようです。完成したあとでは改造の余地がない、予算的に無理という理由で交渉がうまく行っていないようです。
理論的には、高比重の遮音層で囲むという方法になります。超低周波音は普通の吸音層では殆ど減衰しません。