見出し画像

防音材とサイレント修正

サイレント修正というと、ウェブサイトのプラットフォームやRPGの「こっそり修正」を思い出す人が多いと思います。
私の本業の契約者には、RPGを含めたゲーム業界の会社員や自営業のかたが居ますが、彼らに言わせると修正ではなく、ユーザーから見ると改悪に近いものが多く、問題になることがあります。

私の担当現場で使用する防音材についても、類似した問題が起きています。それは一般ユーザーだけでなく、取引先の建築士さえ知らないうちに起きているようです。
その多くが、製品加工や原材料費の値上がりを吸収するために、取引価格を変更しないで、こっそり行われています。
「防音材の材料配合の変更」「面密度の変更」に大別されます。防音材は通常、複数の原材料と充填材を混合して加工して生産されます。
サイレント修正が判明した製品の大半が「合成ゴム・リサイクルゴム」「アスファルト基材と金属粉の混合品」です。
業界大手のメーカーの市販製品だけでなく、中小企業の受注生産品においても例外ではありません。

防音材の材料配合の変更による問題

当初の製品の試験データをそのまま使い、更新していないことが多く、この時点で信頼できないことです。
リサイクルゴムなどの配合比率が大きくなると耐久性が低下して耐用年数が短くなります。リサイクル素材の品質が低いと、遮音性能だけでなく、制振性能も一緒に低下するので、総合的な防音効果が低下します。

実例として、ある大手メーカーの遮音シートは、面密度が低くなっただけなく、切断面が捩れて突き付けたときに隙間が生じるので、遮音欠損が大きくなりました。※その現場は、施主と相談して、別の遮音材を重ねて施工することで対処しました。
また、別メーカーの遮音ゴムマットは柔軟性が落ちた分、もろくなり、面材に張り付けた状態でも、面材に捻れの力が作用したときに割れてしまうことが明らかになりました。張力に対する耐性が弱くなったためです。
※現場で施工する前に返品扱いにして、不足分は別メーカーの遮音材を補充しました。

防音相談の段階で、相談者が防音材のサンプルを持参されて判明した問題や別の専門業者が使用した現場の解体調査で確認したこともありました。

防音材の面密度変更による問題

とくに遮音材の面密度が小さくなった場合は、透過損失(遮音性能)が小さくなりますので、防音効果は低下します。
遮音材としては致命的な問題だと思います。

とくに、低周波音を含んだ騒音対策における防音設計で想定していた効果が出ないことになり、防音工事そのものが費用対効果の低い状況になります。

なお、制振材の場合は、面密度が小さくなっても、遮音材のような防音効果が低下するわけではないです。むしろ、原材料の配合変更による問題のほうが大きくなります。

サイレント修正の大半は現場担当者が見つける

大半の問題は現場担当の職人が見つけることが多いですが、私自身が現場調査したり、防音相談で依頼者のサンプルを確認して判明した件もあります。

現場担当の職人が防音工事の経験がない場合は、問題に気づくことはないと思いますので、他にも私が知らない事例はあると思います。
このため、防音職人の担当現場では、信頼できる契約メーカーの受注生産の防音材を納品することにしています。
*これが最も確実だと思います。

防音職人では、約10年前から15年前に、問題を起こしたメーカーの取引を中止するだけでなく、市販の防音材を防音設計の仕様書から除外しました。

いいなと思ったら応援しよう!