木造ピアノ教室の改善対策事例
この事例は、場所を特定すると、ピアノ教室だけでなく新築設計者に迷惑がかかりますので、使用されている製品名も伏せます。壁面の色彩も少し変えています。
場所は関東です。新築の木造建物(木造軸組在来工法、2階建て)で、ピアノ教室と他のテナントが入っています。相談内容は、ピアノ教室の音漏れが酷くて、他のテナントに迷惑をかけるレベルであり、せめて他のテナントに迷惑にならないように音漏れを減らす防音対策を設計・施工して欲しいというものでした。
新築の設計施工を担当した建築会社は、一応、音楽防音室の実績がある専門業者に音響と防音設計を依頼していました。
主な内容は某大手メーカーの音響材と防音材を組合せて設計したもので、防音職人が使用するような専門の受注生産品ではなく、普通の市販品です。
新築設計図の分析結果
通常は、グランドピアノを使用する音楽防音室には、床に無垢材のフローリングを施工するのですが、この教室は薄皮一枚だけ無垢の化粧材で中身は合板の複合フローリングでした。フローリングの製品選定から間違っていました。
また、下地合板の上には大手メーカーの遮音ゴムマット10ミリだけ敷き、その上に捨て貼りして直接合板フローリング12ミリが施工されていたので、防振対策は不十分であり、大半の固体音は床から室外に伝播していました。
防音壁の内部には面密度の低い遮音シートとグラスウールしか施工されていませんでした。表層は音響化粧板で仕上げてあるので、これを潰して改修すると、経費などの無駄が大きくて、ご予算的にも無理でした。
床の防音対策で音を減らした
検討した結果、床の防振対策をして防音効果を高める薄型の施工を実施してから、状況に応じて次の対策を考えるということで進めました。
写真のように防音ドア付近に、上がり框を造り、既存の床に防音材とカーペットを敷いて、床の固体伝播音を減らして他のテナントに迷惑にならないレベルまで調整することにしました。
対策施工が完了したあと、ピアノを1台搬入して演奏していただき、防音効果を試していただきました。その結果、音漏れが半分以上減ったということで、壁の追加施工は実施しませんでした。
要するに、私の分析・想定通り、床の防音性能不足が大きな問題だったのです。壁からの音漏れも少なくなり、テナントがドアを閉めていれば気にならないということで、了解していただいたようです。
専門業者といっても、得意分野がありますので、新築を担当した業者は、木造ピアノ防音室は得意ではなかったということになります。
*関連記事(補足):グランドピアノ防音室と床対策
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