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私の木造防音室の設計方針

建築設計では、木造防音室の設計・施工はコアな分野です。それは専門の建築士やエンジニアが少ないからです。私も大学の建築学科では一度も学んだ経験がなく、木造建築の設計課題も講義も極めて少ないという教育現場の環境も影響していると思います。

私が現役として本業を続けるには、体力的にも一人で全部の作業をこなすことは厳しくなってきました。そこで提携先の若い建築士に少しずつノウハウを伝授しています。彼らからすると、私の設計仕様・施工要領は独特であり、取引先のベテラン建築士ともコンセプトが異なるので面白かったようです。この投稿では技術論は今回は触れません。主に精神論です。

担当現場の建築士の設計を活かすことが重要

私は新築など建築設計を担当した建築士の設計内容を出来る限り活かすことを重視しています。建物構造を台無しにする専門業者が多いのですが、私が最も嫌う手法です。新築建物は基本的に不要な改変を強行すると10年保証が受けられなくなります。また、建築士のモチベーションを下げるような手法は大きなマイナスです。

私が担当する地方の木造現場の設計担当者(建築士など)は、大半の人が素直に私の提案を設計仕様に反映させてくれます。それは不要な改変を要求しないからです。彼らのモチベーションを下げるような提案は論外だと思っています。

取引先のベテラン建築士との対極的な手法

取引先のベテラン建築士はスタジオ防音や防音製品を開発する会社を経営しています。彼は防音性能に固執して、木造を活かすことを忘れてしまいます。そして施主の気持ちから乖離した設計仕様を防音効果重視で提案します。私の場合は、音響バランスと使用する楽器の特性を重視することからアプローチします。そして木製品・木材にこだわります。

私は、過剰な防音施工は好きではないです。木造建物は楽器の一部だと考えています。近所に音漏れするのは、ある程度は仕方ないと考えます。心地よい音で多少漏れるなら迷惑にはならないと考えています。

もちろん、必要最低限の性能は確保します。ですが、木造の長所や見た目の良さも大事だと思っています。多くの施主が、私の最初の提案を見ると他の専門業者と内容がだいぶ異なるので、家族間で意見が割れるようです(笑)。私の提案は、むしろ設計を担当した建築士から支持されることが多く、完成するとピアニストや音楽家から評価されます。それは違和感のない音楽室になるからだと思います。私の案件は、リピーターが比較的多いのが特徴です。

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