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防音設計にカンストはあるか?
通常、カンスト(カウンターストップ)はRPGなどゲーム用語として使われるのが一般的です。
ですが、最近は、これ以外の分野でも若い世代では、普通に使われることが増えているようです。
何かを達成したときに、これ以上ない出来栄えなどと自画自賛するときに使いますね・笑。
私の世代では、RPG自体をしない人が多いため、カンストの意味が分からず、この言葉を使う人はレアです。
では、私の専門分野である「防音設計」において、現実として有りうるのか。私自身および提携先において事例を振り返ると、結果オーライで施主(依頼者)から高評価を受けて、完ぺきに近い、すなわちカンストと言えるくらいの成果を得ることがあります。
しかし、これは防音設計に関しては、通常はあり得ないと、私は考えています。それは、必ず予期しない要因が途中で判明して軌道修正することが多いからです。
大半はリフォームや改修工事現場の設計施工で軌道修正が起きます。
新築の場合は、予算が十分にあるときは、カンストに近い音響・防音効果が出ることは、ありますが、私自身は、もっとこうしたかったという心の声が湧いてきます。
自分でカンストと思った瞬間、それ以上のレベルアップはしないと思います。
なので、施主には、高評価に対するお礼を申し上げることはありますが、必ず次の現場にフィードバックして生かせるように分析・考察を続けます。
生活防音におけるカンストはない
マンションでは、まず殆ど経験はないです。ですが、施主から十分な効果が出ていると言われたことはあります。構造的にマンションの防音リフォームはブラックボックスです。それは躯体の性能評価や設備配管などの制約が多く、難しい課題が複数出てくるからです。
それにコンクリート構造は絶縁をするには、大規模改修となり、ほとんどスケルトン工事に近い状況でないと無理です。
生活騒音を完全に遮断することはできません。
一方、木造住宅では、戸外騒音をほとんど遮断するレベルまで防音設計をすることはできますが、現実的にはご予算の壁があり、ご家族の同意を得ることができないことが多いです。
ただし、施主個人の仕事部屋や寝室をカンストに近いレベルで設計施工することは可能です。
新築の音楽防音室はカンストに近い事例がある
新築木造の音楽防音室の音響・防音設計をベストな内容にするためにも、施主のご協力が不可欠です。参考記事をご覧ください。
*参考:新築の木造ピアノ室のコンサルティング
防音設計及び施工担当者が良い仕事ができるように、施主(依頼者)も一緒に意見交換をしながら、現場担当の建築士や工事の職人と相談しながら進めてください。
私の説明図や施工要領について理解できない箇所は、かならず質問してください。そうしないと建築士や施工業者との打ち合わせ内容を理解できなくなります。
カンストに近い事例の大半が、施主も一緒に懸命に努力された建築現場です。専門的な内容が理解できなくても、できる限りの情報提供や意見交換を行うことで、レベルアップすることができます。
予算的な制約をクリアできない場合は、優先順位を整理してください。優先順位は必ず防音設計担当者と施工担当者には伝えてください。
カンストに近い事例の多くが木造ですが、マンションの成功事例もあります。共通点は施主が誠実に対応していただいた現場です。情報提供やご家族の協力も大事です。
特に、新築現場は、防音対策の費用対効果を高めることができる場面として、計画案の作成・基本設計の段階が最も重要です。これが実現できるかどうかに、かかっています。
防音設計のカンストは理想ですが、マンション案件は難易度が高く、事例としては少ない。
木造についても、リフォームや改修工事においては難易度は制約条件によって、かなり高くなります。
新築の木造は、ご予算が確保できれば可能な場合があります。できる限り早くご相談ください。
なお、防音設計のカンストとは、私は費用対効果としてベストな成果を得られた案件だと理解しています。
*ちなみに、RPGのカンストの大半が個別のアイテムの上限に到達したことを意味しており、設計業界のカンストとは異なります。
いずれにしても、自画自賛のような世界ですので、個人によって評価も異なるでしょう。あくまで目標に向かって懸命に努力を続けることが重要だと思います。
施主と一緒に努力することによって、より良いものを目指すという方針が前提です。施主の情報提供などご協力が不可欠です。*関連リンク:木造音楽防音室