消えていった知人業者と同僚たち(回想)
会社勤め時代の同僚や先輩(建築士を含む)、知人の店で紹介された建築業者(自営)は、15年以上前にみな廃業したり、転職しました。
国家資格を取得しても、技術を習得できなかった人たちは会社を辞めたり、異分野で開業することが多く、私の目の前から消えていきました。
ちょうど、建築業界の構造的な不況や建築許可申請の制限が一時的に強くなり、同業者も経営が厳しくなっていました。
人脈のない、差別化を図れない業者、再就職の場を確保できなかった人は、都市計画・建築デザインなど建築業界から去っていきました。
数年前には、大学の先輩建築士や昔勤務していた会社の社長も現役を引退して、フリーのコンサルタントになり、自宅できままに仕事をするようになりました。
限られた仕事のパイの取り合い
とくに東京など首都圏の専門業者やフリーの自営業者が、安定した仕事を単独で受注することは、ほとんど不可能です。
老舗の建築会社、中堅ゼネコンを含めた業者の廃業が増加した頃、防音工事の専門業者が急増しました。異分野に衣替えした建築業者が増えたためです。
ですが、知人は防音設計・工事の分野には手を出しませんでした。それは、専門知識と設計技術を習得するのに長期間を要するので、それまで生活する、スタッフを雇用するための仕事を確保できなかったのです。
独立開業して、一人始めたのは私だけでした。
厳しい建築業界と新しい技術開発
取引先のベテラン建築士は、本業の住宅・店舗設計の受注が少なくなり、騒音調査やスタジオ防音設計などに力を入れる一方で、防音製品の開発を始めました。
しかしながら、実験室の確保、生産工場の提携など自力での開発を諦め、提携先の商品開発に特化しました。事業パートナーを見つけて、新製品を含めた商品開発に活路を求めました。
私は、彼らの確保した製品を独自の防音設計の中に組み込み、設計コンサルティングの道を歩むことにしたのです。
建築業界では、同じ様な商いを続けても、業態の小さな自営業では生き残れません。大手企業の傘下に入らない限り、ほとんど無理です。
小さな業者は「自分だけのオリジナル技術」を持ち、実績を積み上げていくしか方法はないのです。
市販品から特注品に切り替える
市販品による設計仕様を色々と試しましたが、いまいち満足な結果を残せず、専門企業メーカーの特注品を主体に取引するようになりました。
しかし、専門メーカーは特定企業との取引以外には消極的であり、人脈がないと応じてくれません。
私は自分のホームページと実績を、大手企業に示して、代金先払いで発注を依頼しました。応じてくれたのが、現在の取引先です。幸い、私の欲しかった製品を生産できるメーカーだったのです。
とにかく、数年間調べて、多くの防音材メーカーの中から選びました。マンション・木造建物と相性の良い製品に絞ったのです。
特注品は知名度がなく、専門分野のプロしか知らない製品です。ネットのキーワード検索だけでは見つけるのは難しいです。やはり、取引先のプロにヒアリングするのが確実です。