音の周波数・素材特性を活かす木造防音
木造住宅など木造建物においては、木材や防音材など素材の透過損失・制振特性、空間における音の減衰効果を考慮した防音設計が重要です。
音の周波数帯・主成分と素材特性に着目
木造の生活防音は、音の周波数帯に着目した建築材料や防音材の効果、天井裏・壁内・床下の通気層(空気層)における音の減衰や共振回避などに留意した設計・施工が必要です。
力任せに遮音材(石膏ボード・遮音パネルなど)を多用し、空気層を大きくとる手法では、構造体への過大な負担をかけ、空間を狭くすることになり、費用対効果が低くなります。
高い周波数の音は、音源からの距離に応じて減衰させることができ、吸音材などの活用で効率的な防音効果を出すことができます。
また、低い周波数の音でも、音源に近い遮音・制振層によって減衰効果を高めることが可能です。
木造の防音設計は、周波数・素材・空気層などの特性を考慮して、効果の高い防音材・工法によって、必要な防音(空気伝播音、固体伝播音の遮断・減衰)性能を確保することが重要です。
木材は遮音性と吸音性をもつ素材である
木造は遮音性能が低いと思いこんでいる専門家・専門業者が多いようですが、木材は同じ厚さの石膏ボードに比較しても劣ることはありません。得意な周波数帯が異なるため、複層構造を構築すると防音効果が高まります。
一方、石膏ボードは重ねて施工しても、弱点となる周波数帯が低い方へずれるため、今まで気にならなかった周波数帯の透過損失(遮音性能)が低下する現象が起きるため、木材よりも防音効果が低下する周波数帯が生じます。
これは木材と石膏ボードの素材特性による差です。木材は吸音性があり柔軟性があるため、重ねて厚さが増すと、遮音効果がほぼ右肩上がりで向上します。硬質遮音材とは異なる特性を持っています。
また、木材は合板のように積層化すると剛性と粘りが増し、制振効果が大きくなります。典型的な製品が「構造用合板」です。構造用合板を壁や床に併用すると防音効果が高まります。木材と相性の良い防音材を重ねると、質量則を上回る相乗効果が出る場合があり、とくに木造音楽室では効果的です。
ちなみに、吸音性は広葉樹よりも針葉樹のほうが大きく、杉無垢材(針葉樹)は、木造音楽室の羽目板やフローリングに使用されています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?