病院に患者が使えるWiFiは必要か?
~はじめに~
こんにちは、白血病患者です。
この言い方にもそろそろ注釈がつきそうなので、
がんサバイバーとでも名乗り替えます。
最近、お勉強をしているんです。
「病院における通信環境について」です。
きっかけは昨年、白血病という病気を罹患し、半年位入院して通信環境に悩まされたからです。
色々な病院の入院のしおりとかみると
「電気機器のお持ち込みはご遠慮...」とか
「医療者の使っている電子機器はその他の電子機器に影響を及ぼさない...」とか色々と書いてあるんです。
でもさ、、、
WiFiってそもそも害悪??携帯電波って害悪??
いやね、今までの日常でそんな所にリスクを感じたことがなかったんですが、
病院に入ってみてそういう文字をみると
「病院側も万が一の事象」が発生すると良くないからしょうがないよね。
とか納得しちゃうんですよ。
でもね、実際に入院してみるとWiFiはバンバン飛んでいるんですよ。
患者さんは多くの人がレンタルの無線ルーターとか契約してくるからめっちゃ飛んでる。
実際に私も契約してましたし。そもそもスマホとか患者さんで持っていない人の方が少ないし。(まー当たり前。)
だから、色々と調べてみたんです。
そうしたら、イギリスのNHSという機関で医療に関わるWiFiのことが書いてあるページを知り大変興味深かったんで、それを載せてみようかと思います。
~NHS(国民保健サービス) ~
NBAみたいでしょ??
ちゃいますねん。
National Health Serviceの略です。
イギリスの国営医療サービス事業をさし、患者の医療ニーズに対して公平なサービスを提供することを目的に1948年に設立された機関です。
NHSは、地域ごとに4つ(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)に分割され、医療サービスの内容や予算編成、治療や管理における指針などもそれぞれの地域ごとに独立して設定・運営されています。
イングランドのNHSのみ、地域名をつけない「NHS」の名称を使用していて、また北アイルランドではNHSの名称を使用していないが、制度的にはNHSの原則に則っています。
ちなみに話は逸れますが、
NHS Constitution(NHS憲法)というものがありまして、
ワクチン接種などの公衆衛生プログラムには市民は参加すべきと
法律で義務付けています。
国が違えば公衆衛生の観点も違うもんだ。
そして、個人的に素晴らしいと思ったのがNHS Survey
患者に対してサービスに対する調査を実施し、フィードバックしているんです。
流石、イギリスの国費の1/4をかけている巨大組織。
恐るべし。。
また、話がズレる。。。
とこんな組織がブリテインにはあるのですが、その団体が出しているYotubeに目が行ったんです。
~NHSのYoutubeチャンネル~
このNHSはYoutubeのチャンネルを持っております。
その中でひとつ。
↑英語で喋っているので是非youtubeに飛んで「字幕on」&「翻訳を日本語」にしてみてみてください。
この動画は2016年8月に公開された動画です。
紹介内容を見ると無料のWiFiを利用が出来ることによって得られる"Benefit"(利益)について書いております。
5年前です。
5年前にイギリスの国営医療はこの利益を理解し、患者もインクルードしながらサービスを享受できる環境を整えています。
そして、ホームページを見ると現在ではイングランドだけでも8000を超える施設で無料WiFiを整備し提供されています。
この動画で描かれている利益について少し書いてみます。
~What is "realistic depiction of the benefits "~
ここでは色々な観点から描かれています。
NHSのホームページの情報や自分の経験なども含めて少し書いてみます。
※ここではイギリスのNHSの事例紹介です。日本と比較し電波や医療に対する法的な観点は鑑みておりませんので、ご了承ください。
(↑ここら辺はもう少し勉強が必要。。。)
~医療従事者へのWiFiがもたらす利益~
WiFi環境をまずは医療に従事する方にどんな利益があるか書いてみます。
→バイタルデータ
バイタルデータって調べてみても出てこない。。
私の言葉間違っているのでしょうか??
googleさんにきくと「バイタルサイン測定」とか出てきます。
まーいいや、
体温とか、血圧、脈拍など生命に関わるような体内データのことです。
入院患者によって違いはあるかと思いますが、
私の場合は毎日3回は図っておりました。
決まった時間に病棟にある血圧計に並んで血圧はかり、
病棟にある体重計で体重をはかり、
体温計で体温確認してメモメモ。
メモした紙を巡回する看護師さんに渡し、看護師さんが持っているパルスオキシメーターで血中酸素飽和濃度や脈拍数をはかる。
これ1日3回やってました。私の入院していた病棟は約40病床。
簡単に計算すると40人×3回=120回それをやって、
看護師さんはその全ての病床を巡回をしながら、
イントラネットと思われるPCに記録を残す。
NHSではこれの電子化をBenefitの一部として描いております。
・動画内ではバイタルデータの無線化
・記録の簡素化
を挙げていました。
Health and care workers are using NHS WiFi to:
access information on the move, including increased access to summary care records
direct patients to online support
connect their mobile devices to deliver care
offer online consultations
→ベットサイドにデバイスを導入
看護時間のコストが下がることにより、看護師が患者をサポートする時間が増えるということが言われています。まさにWINWIN。
これ実は日本でも実証的に行われている事例を記事でみたんです。
導入されたのが結構前であまり普及されているイメージがないのは導入コストによるものなのでしょうか?
このシステムは電子カルテに入力するデータをすることをベット付近のデバイスを使って自動化する仕組みです。
これが日本で出来るならセキュリティの壁もクリアできそう。
正直、スマホのヘルスケアアプリとか使っているとこれこのまま送ればよくね??と思うんですよ。
お金かかるなら専用アプリの開発と、個人のスマホを繋ぐNFC的な仕組みを持つ機械1台ありゃ出来ると思うんですけどね。正直。
・将来的な展望も踏まえると、バイタルデータをデジタル管理することにより、許可された家族がそこにアクセスして患者の状況を把握できる。
・自分自身のデータの傾向が見ることが出来る。(太った痩せたなど)
・入院中から、退院後の生活も含めたバイタルデータの蓄積により、より精度の高い診療が実現できる。
・電子処方箋への切り替えなどなど
そして、なによりも一番
バイタルデータをデジタルで保持すること、
記録の簡素化をすることで得られるメリットは
看護師などが行っている入力の時間などが短くなることにより
看護時間のコストが削減されることが一番のメリットです。
看護時間がこういった業務が軽減されることにより人員配置の見直しも一つですが、患者とのコミュニケーションに時間を変換出来ます。
これは看護・医療・患者の全てに利益を与えてくれます。
そして、今後起こりうることももう一つ。
実際にNHSの動画では、患者との医療の説明時などに一部の医師がタブレット端末から参加している場面がありました。
これは医師や看護師の業務が一部テレワークを可能にする可能性を秘めています。
医療関係者に対するベネフィットはこんな所でよろしいでしょうか?
次にぺいしぇんとー。
~患者やその関係者へのWiFiがもたらす利益~
医療関係者への利益の部分でももう既に患者のメリットは沢山あげましたが、こちらではもう少し患者により近い部分をあげてみます。
→コミュニケーションツール
患者は家族や友人と連絡が取れるんです。
「スマホあればできるじゃん」
↑そんなことは言わないで~!!
独りで突っ込んでみました(笑)
入院して気づくんですよ。
ギガ数!!!
想像してみてください。
今まで会社からスマホ渡され、パソコン渡され、自分でスマホ持ってて、タブレット持ってたんですよ。
会社休職して会社から貸与されたスマホとパソコンを返却しました。
タブレットはWiFi専用端末です。
スマホは格安sim。5ギガ/月もありません。
「増やせばいいじゃん!!」
↑そんなことは言わないで~!!part2
今まで、仕事して給料を会社から頂いて、オウチにお金入れていた人間が
稼ぎ口がなくなるんですよ。
入院費用とか薬の費用とかでお金の支出が必要な人間になるんですよ。
そんな人間になるんですよ。
皆さん家族に言えます??
「ルーター借りて良い??」って。
私は悩みました。そして最初の入院と2回目の入院時は言えませんでした。
そして、3回目の入院からはどうしてもその環境が辛く、妻に伝えました。
勿論、妻は快く了承してくれました。
知っていました。妻は了承してくれることを。
でも言えないんです。
英語で患者のことを「patient」とはよくいったもので、
この英語には「患者」という意味と、
「忍耐する」という意味もあるそうです。
患者は病気という肉体的な苦痛に耐えているだけではなく、
様々な面からくる精神的な苦痛もあるのだと思います。
ちなみに最近では英語でも患者のことを「client」と呼ぶような議論もあるそうな。
また、内容が逸れる。。
そんな訳で病室に無料WiFiが整備されていることはそんな悩みを解消してくれる一つの手段になりうるのです。
コロナ禍で面会は殆どの病院が禁止されています。
自由に使えるWiFiがあるおかげで
私は妻と毎日テレビ電話が出来ました。
子供とコミュニケーションが出来ました。
父や母と話が出来ました。
親戚や友人とくだらない話しが出来ました。
この全てがなかったら、僕は精神的に耐えられていた自信はありません。
そして、これはプライベートに限りません。
→仕事環境
無線環境があれば、仕事を続けながら病院で療養が出来る人も沢山増えます。
だって、テレワークになってから毎日家で仕事している人だっているでしょ?
病人は仕事しない方が良い??
答えははっきりと言えます。
「ノーーーーーーーーーーー!!」
人は生産的でありたいと願うのは通常起こりうる欲求です。
別にお金にならなくてもイイから、何かをしていたい。
これが普通の欲求です。
「毎日寝て過ごして何もせずに終える」
幸せなはずがありません。
人生には支配されない程度のコンテンツは多い方が満たされます。
→教育環境
小児病棟に長くいる子供たちに提供されるべきものは何でしょうか?
その一つであることは間違いないのは教育です。
コロナ禍で通常の学生の皆さんも大変な思いをされているかと思います。
しかし、入院している子供にはWiFi環境が必須です。
病気が理由で取り残されてはいけません。
「GIGAスクール構想」など文科省を主体に実施しておりますが、
教育におけるDXは小児患者においては教育機会が増える可能性があります。
知識を得ることは様々な関心に繋がります。
病棟から出れなくても教育から大きな夢を見ることが出来るかも知れません。
→エンターテインメント
もちろんこれも大事。youtubeをみて、アマプラで映画みて、アップルミュージックで音楽聴きながら、ネットサーフィンして、食事の内容をアプリで記録してクラウドに飛ばして、他の患者さんと話しをしていた内容が気になって検索して、そんで、服薬している薬調べたり、同じ病気の人の体験記みたり。
患者の家族はどうでしょう。病院で付き添う家族はそれによって得られる価値は患者同様にあるはずです。
日常ですよね。
そこにあるのは日常なんですよ。
そして、その日常は家でも病院でも同じような生活が出来るだけ実現されること。
WiFi環境はそんなことを実現してくれる重要なツールです。
~個人情報に関する考え方について考えてみる~
この問題を調べている内に海外の個人情報に対する考え方が気になったんですが、これもイギリスの事例を一つ。
イギリスには「Summary Care Record」というものがあります。
日本で言う「電子カルテ」のようなものでしょうか?
マイナンバーなど個人情報の管理に関して色々と問題点を指摘されていますが、
このSummary Care Recordの所を見ていた時に、Opting-outの導入について書かれていました。
日本語で言う「オプトアウト」ってやーつ。
実際にみなさんが知られているもので言いますと、グーグルのストリートビュー。
あれって土地の所有者が申し出ると公開しているその人の部分って削除されるんですよね。
ようは、基本公開するけど、「いやだ!」っていう人がいれば消しますよーという方式です。
イギリスのSummary Care Recordに関しても人権的観点からオプトアウトを導入しています。
要は、アレルギーや病院の履歴などをデータとして残して欲しくない人は削除してもらえる制度。
これ大事ですよね。
自分自身も小売業をしていて個人情報の管理ってとても難しさを感じるんです。
なので、とても保守的な運用に頼ってしまうんです。
でも、それで発生する機会損失もあるという認識の元、オプトアウトを導入しながら情報の流通を規制ではなく緩和していく。
この発想はテクノロジーにおいては特に大事な気がします。
もちろん、それだけでは守られない権利も沢山ある。
でも、だからと言って対立軸を作ってもしょうがないのでしっかりと互いの妥協点を見つけるべきだなと思いました。
ちなみに日本でも個人情報保護法には、法第23条第2項に基づくオプトアウト手続というものが担保されております。へぇーー。。
何だか、オプトアウトの話しになってしまいましたが、他の記事をみても情報にアクセスした回数や誰がしたのかなど履歴を残すシステムなど様々な観点からよりよくしていく努力を運用を前提に積み重ねていくことが重要です。
~日本の医療関係の方に個人的なお願い~
コストがかかるんですよ。これ。
でも、NHSの事例では、業者と協力し成功させました。
最初は資金調達は難しいと言われていましたが、方法論を模索する中でこの実現に至っています。
日本には国の助成制度と病院の経営に対してのアンマッチを解決する手段が少なくて、ヒーローを求めています。
そのヒーローはこの課題に対して問題意識をもって下さった医療関係者の皆様です。
そのヒーローは様々な模索の元に所属している病院で成功事例を作り上げ、無料のWiFi環境を整備し、その成功事例が他の病院に波及されていく世の中を僕は夢見ています。
総務省では
ICT利活用の促進として、「医療・介護・健康分野の情報化推進」とありますが、
それ以外にも「テレワークの推進」、「教育情報化の推進」、「生産性の向上」、「オープンデータ戦略の推進」なども掲げられています。
これらの表題に「医療における」と乗っけてみてください。
とても壮大なテーマに変わります。そしてそれは総務省やデジタル庁もそういった事例を求めているはずです。
総務省の情報通信白書では医療等分野においても多くのことが書かれております。
応募受付期間は終わってしまいましたが、
課題解決型のローカル5Gの実証提案の公募などありました。
医療とローカル5Gはとても相性のよいものだと個人的には感じています。
7月7日には
自治体DX推進手順が発表されました。
標準化法では、地方公共団体の情報システムの標準化の対象となる事務には障害者福祉、健康管理、子ども・子育て支援が該当します。
加え、事務の共通性や住民の利便性の向上、行政運営の効率化に資するという標準化対象事務の趣旨に合致する事務については、対象に追加することも考えられます。
自治体が運営する病院は予算化される前段階で病院のDX化が子供の教育に資する内容であったり、医療におけるDXが自治体のDX戦略に取り残されない仕組みを作るのは自治体病院で働かれる医療関係者の方々の声が自治体に届いてこそ実現するのだと感じております。
厚労省では「コロナウイルス感染症拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」の対象としてWiFi設備整備が対象となっておりますが、補助金の申請期間が短く問題が多くありますが、厚労省のスタンスを踏まえた上でどうすべきか。
ツラツラ書いていきましたが、全ては課題解決に繋がるか答えはありません。
しかし、医療関係者の皆様と課題意識を共有し、解決手段を何とか模索し、行動することが近くにいる患者の大きな助けになる可能性があります。また、医療労働環境の改善に繋がるかも知れません。
日々の忙しい環境下の中かと思いますが、もし少しでも共感頂けたら、あなたが所属する病院に問題提起をして頂き、ヒーローになってください。
~終わりに~
医療におけるDX化というものは社会貢献度が高いサービスだと思っています。
例えば、現在病院を必要としている方がバイタルデータをオンライン上に載せられる世の中が来て、そこに担当医や家族など必要とされる人がアクセスすることによって入院をしなくても自宅で療養する方が増えるかも知れません。
それは多くの人の幸せに繋がると思いませんか?
老人ホームだって障碍者施設だって、もしかしたら児童養護施設の子供の自由を確保する手段にだってなりうるかも知れません。(その逆の作用もあるかも知れません←ここら辺も日々勉強。)
でもね、今ある生活を豊かにしようとする行為は
僕は将来の為に残せる小さな軌跡だと思っています。
大儀でなくて良い。僕は僕の子供と妻の為に人生を生きています。
少しでもそれらの人が良いと思える社会があって欲しい。
おっと、こんなことを書いていたら、目の前で寝ている我が家の犬に怒られそうです。
日本では2021年6月18日「経済財政運営と改革の基本方針2021」が閣議決定されました。
医療では、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から
2020年4月に始まったオンライン診療・服薬指導の特例措置を恒久化し、
感染の収束後も初診から行えるようにするなど、
医療のデジタル化を進める方針を鮮明にしました。
今後は介護施設の居住者なども含めて遠隔医療が薬機法の改正などもふまえ緩和されていきます。
医療のDX化がもたらす効果というのは医療従事者・患者・家族その全ての人が享受できる利益です。
是非、このDX化に向けて、環境整備の為、病院に無料のWiFi設備が広く普及されることを個人的には願っており、国の政策として優先順位を上げて頂きたく祈っております。
そんな訳で
こんな活動を端っこの方で支援しております。
多くの皆様にご注目頂き、叱咤激励ともに頂きたく、存じ上げます。
ではでは。