YouTubeのラウドネス値は-13LKFSじゃなかった
この記事では、YouTubeでのラウドネス値は公開されていませんが私独断での解釈により2020年7月にラウドネス値の検証を行いました。
※2021年6月に再検証&加筆を行いました、YouTubeの仕様は変わってなさそうです
この記事は最後まで無料で読めます
1 .ラウドネスは知っていたけど...
もともと今回の記事を書くきっかけになったのは、自分でmixしたものをYouTubeにUPするとなんとも言えない、ざらつき感といいますか、狭くなるといいますか、ちょっとだけオリジナルと音質が変わるような気がして仕方ありませんでした。
そこではたと思いついたのがラウドネス値です
実はお恥ずかしながら今までフルビット(ヘッドルーム-0.5dB)でマスタリングを行なっていましたので、当然YouTubeは強制的に下げられて再生されていました。そこでまず再生で音量を下げられない状態でUPしなければと思いました
色々調べてみるとYouTubeのラウドネス値は-13LKFSだという情報がほとんどでしたが私が軽く実験をしてみるとどうしても-14LKFSになる。。。
そこで
現在のYouTubeでのラウドネス値を自分なりに検証をしてみました
ただし、ラウドネスのターゲット値に合わせたノーマライズをすると変わりますが、ラウドネス値の変更で音質が変わる事はありません
正しいラウドネス値に設定したのちに、プラスアルファとしてYouTubeの音質も検証したいと思います。
※追記
ラウドネス値とは、人間が感じる音の大きさを、例えば5分の曲がある場合5分間の音量の平均値を計測した値をいいます。単位はLKFSもしくはLUFS、文字は違えど同じものです。また、1LKFSは1dBと比較的同じで5分の曲全体を1dB下げると、ラウドネス値も-1.0LKFS下がります。
ラウドネスの計測にはいくつかのアルゴリズムがあり設定しだいでラウドネス値が変わります。(変わらないアルゴリズムもあり)海外では、ITU-R BS.1770〜2などが使われていますが、日本では主にTR-B32を使用しています。
2 .検証方法
まず、後々の音質チェックのためにも
1)女性ボーカルでピアノ・ギター等の曲と、男性ボーカルで厚めの曲を準備
2)マスタリングを行い、ラウドネス値を-15.0、-14.0、-13.0、-12.0、ヘッドルーム-0.5dB(海苔波形)のもの、-14.0LKFSでだんだんと音量が小さくなる、-14.0でだんだん音量が大きくなる
の、7つ×2曲=14曲を作る
3)動画を作りYouTubeにそれぞれUP
4)PC(Mac)のオーディオIN・OUT設定をPro Toolsで使用しているインターフェイスに変更
5)YouTubeの検証動画を再生しつつ、Pro Toolsで録音する
6)録音したYouTubeの音声のラウドネス値をチェック&オリジナルmixと比較
7)YouTubeの再生中にCONTROL+クリックで「詳細統計情報」が表示されます。その中の項目「Normalized 」「content loudness」にも注目
↓こういうのですね
3 .マスタリングと動画
今回の検証につきまして、お二方にご協力をいただきました
女性ボーカルでは、フリーBGMサイト「DOVA-SYNDROME」より
風可&葉羽様
「Friend」
https://dova-s.jp/bgm/play8946.html
をご本人様の了承の下、使用させていただきました
ご協力ありがとうございました。
男性ボーカルでは
DekTria(デクトリア)様 @SanoDekTria
「Hole In The Heart」
https://youtu.be/-VFTLFM0frY
こちらもご本人様の了承の下、使用させていただきました
ご協力ありがとうございました。
わがままを言いましてマスタリング前のmixをいただきました。これをマスタリングして各ラウドネス値になるよう調整をしていきます。
動画はMacを使っているのでiMovieを使用しました、動画の写真は私が撮影したものを使用。iMovieの吐き出し設定は、
解像度:720p 60
品質 :高
圧縮 :品質優先
この設定で動画を作成しYouTubeにUPしました。
4.YouTubeから音の取り込み
さて、今度はYouTubeにUPした音をPCに取り込みます
まずMacのオーディオOUTをインターフェースに設定します。
次にYouTubeの検証動画を開き待機します。
そしてPro Toolsを立ち上げ、トラックの入力を1/2chに設定します。OUTは1/2chのままだと音が回ってしまうので適当に変更します、
この設定で、Pro Toolsを録音しつつ各動画を再生して録音します。
問題はこの設定で1:1になっているかどうかですが、それは後ほど
5.ラウドネス値計測
波形の上段はPro Toolsでラウドネス設定をしたUP前のオリジナルです
下段がYouTubeにUPしたものを再度取り込んだものです。この下段の音を
NUGEN のMaster Checkを使用しラウドネス値の計測をしました。
「Friend」
UP前オリジナル :-15.0LKFS
YouTube :-15.1LKFS
Normalized :100%
content loudness:-1.1dB
「Hole In The Heart」
UP前オリジナル :-15.0LKFS
YouTube :-15.1LKFS
Normalized :100%
content loudness:-1.0dB
どちらの音楽も、ラウドネス値-15.0LKFSで作成しYouTubeにUPしても、再生で変わらず-15.0LKFSになっていました。
また今回、音量を極端に変えたものも実験しました。これはラウドネス値を部分的に測定をしていないか確認をするためでした
「Hole In The Heart」オリジナル-14LKFS、YouTube-14.1LKFS
だんだん小さく↓
「Friend」オリジナル-14.0LKFS、YouTube-14.1LKFS
だんだん大きく↓
以下リストにします...
「Friend」
オリジナル(LKFS) YouTube(LKFS) Normalized content loudness
音楽A -15.0 -15.1 100% -1.1dB
音楽B -14.0 -14.0 100% -0.0dB
音楽C -13.0 -14.0 90% 0.9dB
音楽D -12.0 -14.0 80% 1.9dB
音楽E -11.4 -14.0 74% 2.6dB
音楽F 小さく-14.0 -14.0 100% 0.0dB
音楽G 大きく-14.0 -14.1 100% -0.9dB
「Hole In The Heart」
オリジナル(LKFS) YouTube(LKFS) Normalized content loudness
音楽A -15.0 -15.1 100% -1.0dB
音楽B -14.0 -14.1 100% 0.0dB
音楽C -13.0 -14.0 89% 1.0dB
音楽D -12.0 -14.0 80% 2.0dB
音楽E -9.2 -14.0 58% 4.8dB
音楽F 小さく-14.0 -14.1 100% -0.1dB
音楽G 大きく-14.0 -14.2 100% -0.1dB
だんだん大きくと、だんだん小さくの曲は、どちらも誤差±0.1LKFSとほぼオリジナルと同じになり、YouTubeが1曲をトータルで計測していることがわかります
6.計測結果を見て
この結果を見ると、音楽A-15.0LKFS、音楽B-14.0LKFSで作ったオリジナルは、YouTubeにUPした後再度取り込んで計測してもUP前と同じ値となりました。(±0.1LKFSは誤差と見ます)という事はこの計測方法でYouTubeのラウドネス値が正しく計測できていると判断しました。
注目はここ、ラウドネス値を音楽 C-13.0、音楽 D-12.0、音楽 E-11.4、音楽 F-9.2LKFSで制作しても、YouTubeで再生されるのは-14.0LKFSになるという事です
また-14.0LKFSより小さい-15.0LKFSでUPしたものは-15.1LKFSで再生されていました。小さい音は小さいまま再生さている事が確認できました。
またYouTubeで表示される詳細統計情報ですが、私の見解としては
「Hole In The Heart」-12.0LKFSでUPの場合
詳細統計情報の場合 ↓
Volume(100%) :現在のYouTube再生音量バーの位置
Normalized(80%) :UPされた音量から20%下げられ80%の音量で再生中
content loudness(2.0dB) :規定のラウドネス値(-14.0LKFS)からの差
(2.0dBは-14.0LKFSより2.0dB大きい)
という事ではないかと思いました。
YouTubeは-12LKFSじゃないかとか、-13LKFSだよとか、検証されている方もいらっしゃいましたが、おそらく仕様が順次変更がされているのではないかと思います。詳細統計情報の表示方法も数回変更がされているようですし。
そして大きな音量でUPされたものが-14.0LKFSで再生されるのに対してコンプで叩かれているとか、潰されている感覚はなく単純に全体的に音量を下げて再生されているように感じます。(私の聴感上です)
最後に
以下の実験もしてみました
下の画像は、波形上段が強調した海苔波形でCD用マスタリングしたもの(-9.0LKFS)
中段がそれをYouTubeで再生し、取り込んだもの(-14.0LKFS)
下段が最初から-14.0LKFSでマスタリングしたもの
ピークを攻めて音圧を上げ詰め込んでも(上段)
YouTubeではその音がそのまま下げられ-14.0LKFSで再生されますが(中段)
最初から-14.0LKFSでマスタリングすれば(下段)ダイナミクスも保たれオリジナルに近い音が再生されます。
音質も若干の違いがありました。
UP前のマスタリングとYouTubeからの音で比較しましたが、女性Voが若干なまる感じと、Hole In The Heartでは音が狭くなったように感じます。ただしこれは動画に変換もしていますので、YouTubeのせいとは言い切れません。
ということで私が計測した結果、YouTubeのラウドネス値は2020年7月31日現在(2021年6月再検証済み)、-14.0LKFSという事がわかりました。また過度に音圧を上げるよりも-14.0LKFSより下がらないようなマスタリングが良いかもしれません。
という事は音圧戦争が終わった現在、CDレベルのマスタリングではなくそれぞれの曲に合わせたダイナミクスのあるマスタリングをすればいいのかなと思いました。
以上、長々と読んでいただいた方ありがとうございました。
多少なりとも参考になればと思います...