星の王子さまという哲学と対峙してかんぱい
星の王子さまの本を
最初に手にしたのは小学生の時。
あの絵自体も流行っていて
絵本の感覚で読み始めるのだが
文字の多さと何が何やらさっぱりわからず
漠然と【これは哲学】と思いながら静かに本を閉じた。
私は文学と無縁のまま中学に上がる。
幼稚園時代からウィットに富んでいた
<サアヤ>とは小学校が別になったものの
中学で再会。彼女は秀才になっていた。
小学校時代からのライバルらしい田崎くんが
テスト返却の度にサアヤに点数を聞く。
彼女はどの教科も90点台だった。
体育が苦手、それだけだった。
マンガが好きで、よく絵を描いており
よく盛り上がった。「上手い~!」と褒めると
照れながら笑うのがとても可愛らしかった。
夏休み明けしばらくして、
現国の先生が嬉しそうに
読書感想文コンクールで賞を取った生徒がいます!
と発表した。
私は絶対にサアヤだなと思い、
俯く彼女を見ていたけれど、
田崎くんに視線を送る生徒も多かった。
結果、賞をとったのはサアヤ。
しかも選んだ本は<星の王子さま>
さすがサアヤ、哲学を理解している!!
田崎君は「サアヤかよー!」と叫び、
みんな拍手を送った。
先生もとても感動したので、
みんなの前で読ませてもらいます
と読みだしたのだが、私は気づいてしまった。
彼女の表情はずっと無で、
横の子が声をかけてはじめて
あっ、リアクションを取らなきゃ…
という感じでありがとうと笑った。
全然嬉しそうではなかったし他人事みたい。
胸がざわついて、感想文の内容は覚えていない。
違和感を抱きつつ、帰宅後、母とした会話。
私:「サアヤ、読書感想文で賞取ったよ、凄いわ」
母:「あそこは兄妹みんな賢いねぇ。
凄く歳離れてるけど、お兄さんは中学受験組だし、
姉は地元で一番賢い高校に進学、何でもできて
勉強よし、絵も賞を貰ってたし、スポーツも万能。」
私:「そんなすごいの!?」
母:「そう、みんな優秀。サアヤのママはいつも
サアヤは本当に勉強しない!って言ってるけど。」
そういえば家に遊びに行ったとき、
サッカーのクラブチームのユニフォームを着たお姉さんを見た記憶。
優秀な兄妹を持つと大変なんだな。
その後、教師がテスト範囲を誤り
平均が47点(100点満点)の地獄のテストがあった。
最高点はサアヤの78点。
私はテストを受け取るサアヤの、世界の終わりのような顔、
ただでさえ白い顔が青白くなるのを目撃した。
事情はどうあれ、彼女が最高点だろうとも、
100点満点中の78点 という結果以外評価されないのだろう。
読書感想文も、賞を取って当たり前だったのかな。
彼女は原因不明のある病気を抱えていたのだが、
どう考えてもストレス以外、考えれられない。
サアヤのお母さんとうちの母は、割と仲が良くて
「学校もちゃんと行くし、いじめられている感じもないし
病気の原因が何かわからない。」みたいな会話をしていた。
私は心の中で「学業のプレッシャー!」と叫んだ。
心で見てくれ!肝心なことは目に見えないんだ!
サアヤは無事、姉と同じ一番上のレベルの高校に入学。
それ以降は知らない。
なんせ携帯電話なんてなかった時代だからね。
病気が治ってたらいいなと思う。
幼稚園時代のように気を使うことなく
クククッって笑っていてほしい。
そんなことをぼんやり考えながら、
38歳になり、本屋さんで星の王子さまを手に取った。
人生経験を積んだ今なら、
大好きな伊坂幸太郎さんの小説(砂漠)に
作品は違えどサン=デグジュペリの
【人間の土地】の話出てたし、
なんだか理解できる気がする!
ゾウを吞み込んだウワバミ、
バラ、キツネ、やっぱり哲学!!!
うっすらと感じる
確信持てないけどこういうこと?みたいな。
サアヤ、やっぱすごいな。
38歳でもこれの読書感想文は書けない。
どうか親にこの本で読書感想文を書きなさいと
言われていませんように。
サアヤ自身が選んで、
子どもの心を忘れていませんか?という
様々な訴えが含まれていたのだったらいいな。
とにもかくにもいつかこの哲学を理解する日が
私にくるのでしょうか?
年に一度読み返してみることにする。
小さな王子さまにかんぱいしながら。
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