矢立の杉 (と、笹子雁ヶ腹摺山)
[ルート] 甲斐大和駅→景徳院→大鹿峠→お坊山→米沢山→笹子雁ヶ腹摺山→笹子峠→矢立の杉→笹子駅 歩行距離18km、休憩込みで8時間の長旅
山梨県の笹子へ、樹齢千年と言われる「矢立の杉」を見に行った。どうせなら周辺の山歩きを組み合わせようと、上記の縦走を計画し実行。「笹子雁ヶ腹摺山」とは、大月市が選定した「秀麗富嶽十二景」のひとつであり、山頂から富士山の絶景が拝める山である。
「秀麗富嶽十二景」のコンプリートを目標としているわけではないが、山頂から富士山を見るのは好きである。なんだかんだそれが山登りの目的なのかもしれない。好きな景色は人それぞれだが、私は「富士山」を山頂から見るのが好きなのだ。よって晴天の日にしか山に登らない。
さて、今回の山歩きの話。いつものように山行記録や標高グラフ等のデータを事前チェック。同じ山でも、記録は登山者の経験や性格により幅が出る。特に「難所」。写真や動画を見ても現地は別物であることが多い。当日のコンディションにより印象も変わる。
「大菩薩」行きのバスの発着所である無人駅「甲斐大和駅」に6時10分ごろ到着。あと1時間もすれば、臨時バスが何台も出るほどのありえない数の登山客でごった返すのだろうが、下車したのはどうやら私ひとりらしい。調べたら近くにコンビニがあったのでまずは腹ごしらえ。
ここから少し長い一般道のアプローチ。数キロであればウォーミングアップにちょうど良いのだが「長すぎる」と感じることも少なくない。コンディションを確認しつつ、登山口のある「景徳院」という寺院に向かう。距離は2km強。寺院に着いたはいいが登山口がわからない。
ちょっと迷い、結局地元の人に伺い、ようやく登山口へ。車の中から「ああ、わからないのだな」と察し、待機していてくれたようだ。案内板が少ないのだ。GPSを見ていてもわからないところがある。そんな文明の利器や、詳細な地図もなかった昔はどうたっだのだろう。
まずは「大鹿峠」を目指す。送電線が多く設置されているので巡視用も兼ねているのであろう整備された登山道。しかし、落ち葉が大量に堆積していて全体的に不明瞭な部分も多かったように記憶する。GPSがありきでも迷ってしまったところがあり、少しロストしながら進む。
標高差400m弱を登り「大鹿峠」に到着。ハイペース。「楽することを覚えるのも何だな」と思いつつ、前回の滝子山同様、その場で見繕った木の杖を使う。先日リサイクルショップで見つけたストック (一本) と併用。較べると、どうやら木の杖の方がしっくりくるようだ。
次に向かうは、標高300m弱を登って「お坊山」。「お坊山」までは何の問題もなくスムーズだった。山頂からの景色もいい。富士山が思いの外、大きく見れたのが嬉しかった。さて、次は「米沢山」だが、ここから縦走には付きものの「アップダウン」がはじまる。
木々に遮られた「米沢山」に到着。ここからがきつかった。「鎖を使わなくても行けるレベルの鎖場です」なんて記録があったが、落ち葉で道が見えないことに加え、滑る。鎖場は数カ所あったが、今日の核心部だった。登りよりも確実に下りの方がきついと思われる。
アップダウンを繰り返す。20以上のピークがありアップダウンの多い「北高尾山稜」と似たようなトレイルを想定していたが別物。目の前に大きく立ちはだかる山と斜度のある下り道。下りイコール登り返し。まったくもって慣れない。この辺りではじめて登山者と遭遇。
先ほどの鎖場の話を「余計なお節介」になるかもしれないと思いつつ伝える。向かっている笹子雁ヶ腹摺山の山頂でその鎖場でストックを落とした人がいたらしくご存知だったようである。ストックを落とした方ともすれ違ったが、できれば戻りたくない様子だった。
ストックを探しに戻るのか、それとも、ピストンなのかは聞かなかったが、見つかったとしても、回収するのは危険だろう。通過時にストックを目にする事はなかったが、こちらもようやく滑落せずに済んだくらいだったので、周りを見ている余裕はなかったと伝えた。
最後のピークである「笹子雁ヶ腹摺山」に到着。それまでとは打って変わって賑わっている。「秀麗富嶽十二景」のひとつであるが、富士山は木々の隙間から拝める程度。写真を撮って休まずに「笹子峠」に向かう。その途中「尾根道」と「新道」の分岐があり「楽そうな」後者を選ぶ。
アップダウンもなく「楽だったが」ここも落ち葉が堆積していて道が不明瞭である。左側は切れているが滑落したとしても下まで落ちることはないな。しかし、こういう場所こそ気をつけなければならないな」と思った瞬間足を踏み外す。かすり傷程度で済んだが、初めての「滑落」。
這いつくばって山道に復帰すると小さなハート型の葉が見え、ほっとする。その後、親子連れとすれ違ったので注意を促す。堆積する落ち葉は曲者である。ルートを覆い隠し、その下に何があるかの把握もできない。その後も、落ち葉に悩まされつつやっとのことで「笹子峠」に到着。
しばし休憩し落ち着きを取り戻す。残すところは観光気分で「矢立の杉」見物と思っていたのだが、そうはいかなかった。車道を進んだ途中に消えかかっている「矢立の杉」方向の案内板を発見するが道がない。「まさかここではないだろうな」と少し登るとなんとそこで正解。
観光気分が吹き飛ぶ「旧道」。踏み跡もなく、何が出てきてもおかしくない雰囲気なので、熊鈴を再び取り出す。「矢立の杉」に着いたが、道がないので、攀じ登る。想像以上の大きさ。これで千年なら数千年の屋久杉はどうなんだろう。ここから一般道に復帰する。
「笹子方面から車で来れば気楽に観光できるんだな」と思いつつ車道を進む。後でマップを調べると「旧道」よりも二倍くらい長い。途中からバスで駅までと思っていたが間に合わず、笹子駅まで6km強の一般道を進む。いや、これが長く辛かったが、下りの電車の時間ぴったりに到着。
だらだら書いてしまったので、短めのリライトを試みたが、随分と長くなってしまった。いつものことだが「自分で確かめる大切さ」を再認識した。山に限らず、記録やデータは参考程度に。エビデンスの背後には膨大な不可知の要因があり、それには「多分」理由があるのだ。