「かわいそうだけでは、生きていけないんだよ」と彼女は言った。
毎回、参加しているお母さんと子どもたちのポートレートを撮影させてもらっている、母ちゃんずの保養キャンプへ行ってきた。
今回の会場は、神奈川県相模原市にある「やませみ」という施設。
いつもはポートレートだけ撮って帰ってきてしまうことが多いが、今回は泊まらせてもらった。裏の神社や河原で撮影した後、夕方からはキャンプファイヤーが催され、受け入れ団体である母ちゃんずの子どもたちが考えたダンスや嗜好を凝らせたゲームが行われた(母ちゃんずからは、白アフロと黄アフロのかつらを冠り、スレッドの入ったスパンコールドレスで仮装した人も)。
そして、焚き火が燃え尽きる頃、宿泊所のそばにある大木へ行くと、樹の蜜にカブトムシが群がっていて、子どもたちから歓声が上がった。
福島から参加した人も、母ちゃんずのメンバーやその家族も一緒になって楽しんでいた。
撮影やキャンプフィヤーでは、みんなステキが笑顔を見せてくれた。が、あるお母さんと話をしていると、
姪と姪の母親が津波で流されたこと。
姪が助かり、母親はいまだに行方不明なこと。
姪が周囲から「かわいそう」というスタンスでしか接しらせていないこと。
叔母として、それではそこの子の将来のためにならないと思い、一人で回りと平等に接していること。
すると、周りから「どうして、もっと優しくできないの」と言われること。
津波で流された子どもがいる家族には、二人だとひとりに何かあった場合に残った子が可哀想だから…と、もうひとり子どもを作る家が多いこと
を教えてくれた。
時折、目頭を赤くしながら……
そうして生まれた子には、放射能汚染の影響を心配して、保養キャンプに参加するのだ。
楽しく過ごしている影に、みんな3・11の悲しみを背負っている。
「かわいそうだけでは生きていけないんだよ」
と言った彼女の言葉が印象的だった。
その言葉は、姪っ子だけに向けられたものではない。
そして、その中で、彼女は逞しく生きてる。強くはないのかもしれない。けれど、そうするしかないのだ。
キャンプが終わり、福島へ帰るバスに乗り込むとき、保養キャンプに初めて参加したお母さんが大粒の涙を流した。
子どもたちは、福島では「触ってはいけないよ」と言われてるカブトムシが入ったパックを大切に抱えながら、台風の雨の中、帰って行った。
次の保養キャンプは、来年の春休み。
また、福島から遠く離れた保養キャンプで弾ける彼女と子どもたちを撮影して、いつか、その写真を見返した時、楽しかった思い出を、お母さんの愛情を思い返してもらえたらいいな。
8月11日から、母ちゃんずのお膝元、神奈川県相模原市の市民ギャラリー、アートスポットで、6年間、保養キャンプで撮影してきた写真の展示『心はいつも子どもたちといっしょ in 相模原』が始まる。今後、続けていく中で、新しい写真も加えながら、福島のお母さんと子どもたち、そして、母ちゃんずの想いと、保養キャンプの必要性を伝えていきたい。
ここにある笑顔は、すべて本物だと思う。
『心はいつも子どもたちといっしょ』Facebook
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