第3話(運命の転換点—後編)
「…そうか、油断したか……なるほど、どうやら少し甘く見ているようだなぁ…まぁ、良かろう。喜べよ、女。今まで俺様の体を傷つけてきた女は、お前が二人目だ!なら今回は特別に、もう一度貴様に最後のチャンスをくれてやろう!」
「…?!…こ、これは……」
思い掛けず、あの男は、さっき父から奪った剣を、そのまま私の前に投げてきた!
「さあ、さっきみたいな可能性を、もっと見せてくれ!いまそれを使って、ここで俺様と一対一で勝負しろ!まあ、心配すんな、俺は絶対に武器を使わない。もしこの戦いで再び俺様を傷つけることができたら、そのものをお前に返して、生かせてあげる。そして俺たちもすぐにこの村を出ていく。しかし、できなければ……これからの人生で、俺の部隊のおもちゃになったことを覚悟しておけ!」
「ぉお~それ本当かよ?大将。よっしゃー、また新しい『友達』が増えてきた!あははは――!!」
【…寝言は寝て言え…負けて死んでも、私は決して…貴様らに屈服しない!!】
と言いながら、私は目の前に落ちていた剣を手に取り、攻撃を続けた。けど、その剣は重すぎて、正確には、私はあの剣を『引きずって』、彼に攻めてきた。やはり、自分に合わない重い武器を使った攻撃は、相手か簡単にかわされただけでなく、移動速度の遅さから、全身が隙だらけになった。それを何度か振っただけで、大量の体力を消耗してしまった!
くそっ!…この男、さっきは私に勝って生きるチャンスを与えたと勝手に口にしたが、実際には、私を連れ帰る前に、もっと私の惨めな姿を見たかっただけなんだ……
「?!あははは~—どうやらうまく使えないようだなぁ…ほら、もうちょっと頑張れよ、小娘。だってこれは、君の最後のチャンスだからなっ!」
「はぁ~はぁ~……まずい…重すぎて、これを使って敵を倒すことはできないんだ!このままじゃ、絶対に連れていかれてしまう。何とかして、まずはここから……」
万策尽きの私は必死で、自分の持っている剣に『気』を注入し、上から下へと、思いきり地面に叩きつけました。そして大量の土埃が舞い上がり、敵の視線を遮った瞬間、私は剣を掴んだまま逃げようとした。ですが…
「なんだ、今さらまだ逃げるつもりか…実に愚かなやつだなぁ――!」
砂に目がくらんだばかりの敵軍の首領が、なんと視線をさえぎられたまま、遠くから『空気砲』のような力強いパンチを前方に放った。その瞬発力とスピードは、一瞬で逃げ惑う私を倒していった。
【……?!くうああああああぁぁぁ~――!!】
くやしいけど、私はその激し衝撃で全身が痺れ、戦意喪失って動けなくなった。敵の攻撃を防いだ剣も、後ろに弾かれてしまいました。さっき舞い上がった土埃も、相手の強いパンチに穴を開けられて、ゆっくりと消えていきました。この戦いでもう終り、勝負が決まった…
…多分、これが私の運命なのだろう――
『クゥゥ……父さん、母さん…そしてマルコ……みんな、ごめん……私は…もう…』
稲光が光る。漆黑の夜に、雨はますます激しくなった。怪我をした私は、濡れた地面に横たわったまま、力が抜けて、絶望的な顔をして暗い空を見上げ、今起きたことをまだ受け入れられなかった。そして、ぼんやりとした視界の中で、敵がゆっくりと近づいてくるような気がした…
『…や…やめろ……誰が…助け……て…』
それから、私は意識不明の状態に陥った。次に起こったのことは、もう何もわからなかった――
「?!…おいおい~まさかこいつ……もう死んだか?」
一人の兵士が駆け寄ってきて、状況を確認した。
「さあな~多分まだ生きているだろう。もう手加減してやったからな……そんじゃ、そろそろ帰るぞ。まだ興味あるなら、さっさと拾って行こう」
「はい!……?!大将、危ない!」
兵士が気絶した餃子ちゃんを連れて、村を出ようとした瞬間、一人の少年が急に現れ、敵の強さにもめげず、自分の剣を抜き、相手に斬りかかった。しかし、奇襲がうまくいかないうちに、そばにいた従者がすばやく前に出て、大将に代わって、その一撃を防いでくれた。
「…答えろ――!ここのみんなを殺しにしたのは、お前達か!!」
少年は数歩さがってから、怒ったように大きな声で質問した。それを聞くと、兵士も吐き捨てるように聞き返しました。
「なんだ貴様…そりゃ見ればわかるじゃねぇのかよ、コラッ――!」
「…やっぱりお前らの仕業か……あの女の子はここの住人だろう。彼女をどこに連れて行くつもりだ!」
「はぁ?…ったく、そりゃお前と関係ねぇだろう!その格好…まさかどこかの護衛隊の兵士か、貴様」
「…ならこっちも、その質問に答える必要はない……」
「?!…てめぇ…調子こいてんじゃねぞ、コラァ!」
兵士たちは急に士気を高め、それぞれの武器を振りかざして、少年に攻勢を仕掛けた。
「…仕方がない。はああぁぁ――!」
その少年は冷静に手にした剣を振り、あっという間に敵軍の配下の兵士を全滅させ、大将と餃子ちゃんをかついだ兵士だけが生き残った。
「いや、嘘だろう…なんだこいつ。我々の仲間はなんと一瞬で……こりゃまずい。大将、早く逃げろ!」
「?!逃がすか…?!なっ…」
少年がその脱走兵を襲おうとした瞬間、振り上げた剣は敵の大将に受け止められた!
「…どうやら、一応俺様と戦える奴が、ついに現れたようだなぁ~うん?…そうか。確かに立派な剣だけど…しかし、さっき捨てたのに比べれば、まだまだ足りねえよな!はあああぁ――!!」
そして次の瞬間、相手は黒い息を絡ませたもう片方の掌を伸ばし、少年の誇る剣を全力で折った!
「なっ?!ただ一撃で、僕の剣を…何等恐ろしい力だ、こいつ…」
「どうした、その顔。ほら、今まだ始まったばかりだぞ、クソガキ。さぁ、覚悟しろ――!」
そう言って、敵が全身からいきなり大量のエネルギーを放出し、その勢いで少年は慌てて後ずさりした。ところが大将は相手に息抜きをさせないよう、素手で少年に連続攻撃をかけてきた。
少年はその速さと瞬発力にたじろぎ、体に次々とダメージを受けていきました。結局、彼は相手のすさまじい力に敵わず、あっけなく倒れた…
「?!すっ…すっげえ、やっぱ大将は最強無敵だ――!」
「ほいおい~どうしたの、我らのヒーローちゃんよ。さっきの余裕と根性はどこに行ったの?あの眠り姫が君を待っているんだぞ!……おっ、まさかちょっと怪我をしただけで、もう駄目だのか?…ほら、そのみっともない剣を振り続けて、こっちに斬りかかって来い――!」
大将がふざけた口調で少年をからかっていると、彼は不屈の意志で、なんとか立ち上がりました……
「…貴様……どうして…なぜこんなひどいことをするんだ!」
「うん?そうだな、なぜだろうな~……なあ、もしそれはただ俺様の『趣味』と言うなら、お前信じるか?」
「?!…趣味…だと……」
「あのさ…この世界で余計な雑魚が多いと思わねえのか?ずっとうろうろして、実に目障りだ!勝者正道、敗者無用。それが俺様の貫く道だ!だから今は俺様と戦える面白い奴を探しながら、ついでにくだらんの『ゴミ掃除』をやっているんだ。まあ、ところで、さっきまでの戦いを見ると、お前は確か実力を持った奴だと認めるよ。ひょっとすると、どこの国の傭兵なのか?そこでもらったの賞金や報酬なんかで、お前にとって満足するのか?ほら、俺様の味方になったら…」
「黙れ――!!貴様らのような理不尽な悪党を、僕が必ずここで止めてみせる!決して、お前らに他の場所で悪い事を続けさせにはしない!」
「止めるって…お前一人か?ははは……あははははっ~――!!」
【……チッ。僕をなめるなあぁ――!!】
窮地に追い込まれた少年は、相手に壊された剣を自分の鞘に戻し、それから地面に落ちていた見知らぬ剣を拾いながら、敵の方向を向いていく!
「…さぁ~できるなら、やってみせろ――!」
この瀬戸際で、眩しい青い光が、突然漆黒の空を横切って、マルコに命中した。その一瞬、不思議なことが顕現した。
マルコの体はゆっくりと宙に浮かび、着ている服が少しずつ変わっていく。謎の光に包まれたマルコが宙に浮いて、彼女のそばから、両端に水晶玉をぶら下げた絹のようなものが現れ、まるで『女神様』のように、突然みんなの前に降臨してきた。
数秒後、命を落としたはずの彼女は、徐々に明るい目を開けて、自分の体調を確かめるように、ちょっと指を動かしてみた。続いて、彼女はあたりを見回し、まずは気絶していた少女と敵の従者を眺め、それから対戦している男たちに目を向けた。数秒後、小さな口から気温差による白い息が吐き出された。
『…ハァ~やっと間に合った……?!……うむ。どうやら、この体はまだ使えそうじゃなぁ…』
彼女は冷ややかな目つきで、上空から戦意を燃やしていた人間を見下ろし、ひとまず相手を無視する。それから、ずぶ濡れの彼女はゆっくりと小さな手を上げ、雨がぽたぽたと手のひらに落ちるのを見つめている…
そして、敵の大将がなんとこんな時に不気味な笑みを浮かべた…
【…へぇ~おいおい、一体どういうことなんだ、この夜は!変なことが次から次と……その気配、なかなかいい感じだぜ……あははっ~―!今度はついに面白いことに出会えたようだなぁ、俺様は――!!】
==つづく==
次回予告:
突如として復活したマルコは不思議な力を持って、少年と共に目の前の敵に立ち向かうのですが、苦戦している二人の前に、もう一つの謎の黒い影が現れました。それはいったい何なのでしょうか?
◇―【後記・作者からの話】―◇
はい!ということで、以上は物語の始まりです。これから主人公たちは世界各地を冒険し、いろいろな文化に体験したりしながら、様々な事件を解決していきます。これからの展開もぜひ楽しみにしてね^^!