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レスポール スペシャルを買った日。

2019年、銀杏BOYZの武道館公演を友人と見に行った。二人とも地方から出てきていたので、ホテルを取って、終演後は飲みに行った。
翌日、友人はお茶の水で楽器が見たいという。田舎にはいい楽器屋が無いから、と。彼と何件か見て回り、彼はあまり迷わずにちょっと高めのアコースティックギターを買った。
大学時代、彼とは同じ軽音サークルだった。大学時代にも彼に付き合って、モズライトを求めてお茶の水に行った。あのときも即決だったな、と思い出した。
ギターを買う彼を見ていたら、自分も新しいエレキギターが欲しいと思った。

ずっと憧れていたのはギブソンのレスポールスペシャル。TVイエロー。いろんな人が使っているギターだが、僕の中のイメージは山口隆氏と真島昌利氏だ。
ギターを始めた中高生のころ、憧れていた二人。そのころに人気を集め始めたサンボマスターと、もはや生きる伝説となっていたマーシー。
二人ともいろいろなギターを弾くが、売れ始めたころに使っていたのはレスポールスペシャルだ。
欲しいなあと思っていたが、なかなか買う機会がなかった。

俺もギター買っちゃおうかな、と言うと、友人は買っちゃえ買っちゃえと煽っていた。
初めに入った某楽器屋にレスポールスペシャルが二本あって、見た目はその二本がばっちりだった。だが、値段が高い。もっと安くて同じような見た目のものは無いかな、と思って他にも何件か回ったが、カッコいいものは無かった。
初めの店に戻って悩む。高い。なんでこんなに高いのかさっぱり分からない。だけど、カッコいい。それはわかる。ぱっと見てカッコいいギターは、高いのか?なんて思うようになってきたころ、店員さんがやる気のなさそうな感じで試奏を勧めてくれた。
この店員さん、悪い人ではなさそうだが、あきらかに表情が「買う気ないでしょ?でもサービスだよ、試奏させてあげるよ、またお金持って来てね」ってなことを言っている。貧乏人の僻みかもしれないが。やる気のない態度が、ないがしろにされている気分になる。

ちょっと意地っ張りな部分が出てきてしまう自分。買ってやろうじゃないか。

じゃあ、試奏させてくださいと言って試奏するが、1本目は全くピンとこない。ネックの握り心地は太く、弾きづらいし、音も期待外れだ。高くてもこんなものか、カッコいいのは見た目だけか、やはりもっと安いものを探そうか…なんて思いながら2本目を弾いた。
驚いた。製品名としては全く同じギターなのに、ここまで違うものか。
Gibson Custom Shop Historic Collection 1960 Les Paul Special Single Cut VOS TV Yellow
というのが正式名称らしい。両方とも同じギターだ。
なのに、1本目とは全く別物だ。ネックの握り心地、弾きやすさ、音の響き方。すべてが心地いい。

かなり悩んでから、買うことを決めた。
ローンを組みたくなかったので、近所のコンビニATMでお金を下ろしてきて、現金一括で買った。あの店員さんは急に愛想が良くなった。やはり悪い人では無いらしい。

帰って、ギターが届いてからいろいろと調べた。手入れの仕方や扱い方、モデル名。そこで初めてカスタムショップというものを知った。どうやら自分の買ったギターは上位モデルだったらしい。レギュラーコレクションは廃番になっているらしかった。

何か月か経って、楽器屋のサイトを見ていたら、ギブソンレスポールスペシャルがレギュラーコレクションとして復活していた。自分の買ったやつの半分以下の値段だった。少し損をした気分になった。

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