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断ち切れぬ呪縛~元交際相手の影【鑑定小説】

これは、かつての職場で一緒だった沙保里さん(仮名)から聞いた話だ。

沙保里さんの人生には、常に漠然とした不安が影を落としていた。仕事もプライベートも順調に見えたが、心の奥底にはどうしても消えない不安が巣食っていた。その原因は、彼女の過去に深く根を張っていたある人物の存在だった。

ある日、彼女はその不安から逃れるために、占い師のもとを訪れた。未来を知りたいという思いでいっぱいだったが、占い師の言葉はぼんやりとしていて、何の救いにもならなかった。むしろ、未来には新たな出会いが待っていると言われ、その出会いが彼女にとって何を意味するのか、心に一抹の恐怖が生まれた。

その矢先、沙保里さんの前に現れたのは、かつての恋人、三島だった。三島とは数年前に別れていたはずだったが、その顔を見た瞬間、彼女の心に凍りつくような冷たい感覚が走った。三島はまるで忘れ去られた過去が再び生まれ変わったかのように、彼女の前に現れたのだ。

三島との別れは、決して穏やかなものではなかった。彼はかつて、彼女に対して異常なほどの執着を見せていた。彼が突然送りつけてきた不気味なメッセージや、無言電話の数々が、再び蘇ってきた。沙保里さんは、彼が再び自分の生活に侵入してくるのではないかという恐怖に襲われた。

その一方で、彼女の現在の恋人との関係も揺らいでいた。最初は熱烈だった彼の愛情も、今では冷め切ってしまったようだった。彼の無関心な態度や冷たい言葉が、彼女の心をさらに追い詰めた。この関係が続くべきものなのか、彼女の中に疑念が渦巻いていた。

占い師は彼女に、新しい出会いが待っていると告げた。しかし、その言葉は沙保里さんに安堵をもたらすことはなかった。むしろ、その「新しい出会い」が何を意味するのかを考えると、不安と恐怖が増すばかりだった。新しい出会いが、本当に彼女を救うものであるのか、それともさらに深い混乱をもたらすものなのか、彼女には分からなかった。

最終的に、沙保里さんは決断を下した。三島との縁を完全に断ち切り、現在の恋人とも別れることが、自分自身を解放する唯一の道だと信じたのだ。しかし、その選択が本当に彼女を自由にするのか、彼女の心にはまだ不安が渦巻いていた。

三島の影は、すでに彼女の生活に深く侵入していた。彼が本当に彼女の前から消え去るのか、それとも彼の影は永遠に彼女を追いかけ続けるのか。沙保里さんの心には、その不安が今も消えずに残っているという。新たな道を選んだ彼女だが、その先に待つ未来がどのようなものか、それはまだ誰にも分からないのである……

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