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09.隠者(The Hermit)《タロットカード解説》


隠者(The Hermit)についての全体解説

隠者(The Hermit)はタロットカードの大アルカナの中でも、特に内省と自己探求を象徴するカードである。このカードは、孤独の中で真実を求める賢者や修行者を描いており、その姿は、外界からの雑音を排除し、内なる声に耳を傾けることの重要性を強調している。

隠者のカードに描かれている人物は、長いローブをまとい、手にランタンを持っている。このランタンは、真実や知恵、啓示を象徴し、暗闇の中で光をもたらす存在を表している。また、このランタンの光が示しているのは、自分自身や自分の道を見つけるための内なる光である。隠者は通常、一人で描かれており、このことは彼が孤立しているわけではなく、自らの意思で孤独を選んでいることを示している。彼の背後には山が描かれていることが多く、これは彼が精神的な高みを目指し、より深い理解や真実を求めていることを象徴している。

隠者は、物質的な世界よりも精神的な成長や知恵の追求を優先するカードであり、日常生活の中での喧騒や人間関係から距離を置き、自己探求や内省に時間を費やすことを示唆する。隠者のカードが示唆するのは、外部の指導や影響を受けるのではなく、自分自身で答えを見つけるべき時期であることだ。

隠者はまた、導師やメンターの役割も果たすことがある。彼は他者に知恵や洞察を提供するが、その方法は押し付けがましくなく、相手が自らの道を見つけるのを助けるような形で行われる。このカードが現れる時、導かれる側の人々は、自分自身の道を見つける手助けを求めているかもしれない。

さらに、このカードは、時間をかけて答えを探し、急がずにプロセスを進めることの重要性も示唆する。隠者の持つランタンは、すぐに全体像を明らかにするのではなく、あくまで一歩一歩進むことを促す。このことは、目先の解決策よりも長期的なビジョンや深い理解を求める姿勢を象徴している。

正位置の解釈

正位置の隠者は、内省、自己探求、精神的な成長を象徴する。外界の影響から距離を置き、自分自身の内面を見つめ直す時期を示唆する。また、静かに自分の心の中を探ることで、新しい洞察や知恵を得ることができる。

  • 恋愛: 恋愛においては、関係を一時的に見直す時期を示していることがある。パートナーとの距離を置き、自分自身の感情や関係の本質を再評価する時間が必要かもしれない。また、独りでいることが必ずしもネガティブな意味を持つわけではなく、自分自身をより深く理解するための重要な時間となる。

  • 人間関係: 人間関係においては、孤立感を感じることがあるかもしれないが、それは自己成長や内省のための時間として重要である。また、他者との関係を再評価し、真の友人や信頼できる人々との絆を強化する時期でもある。

  • 仕事: 仕事においては、自分のキャリアや目標について深く考える時期を示す。現在の仕事に対する満足度や今後のキャリアパスを見直すことが求められる。また、短期的な成功よりも長期的な成長や自己満足を重視する姿勢が求められる。

  • お金: 金銭面では、物質的な欲求を見直す時期を示す。過剰な消費や無駄遣いを避け、必要なものだけに焦点を当てることが重要である。また、金銭に対する執着心を手放し、精神的な豊かさを追求する姿勢が求められる。

逆位置の解釈

逆位置の隠者は、過度の孤立や内向きすぎる態度を示すことがある。自己探求が行き過ぎて、他者との関わりを避けたり、社会からの孤立を深めたりする危険がある。また、自分自身の中に閉じこもりすぎて、外界とのバランスを欠いてしまう可能性がある。

  • 恋愛: 恋愛においては、パートナーとのコミュニケーションが途絶え、孤立感を深めてしまう危険がある。自分の感情に閉じこもりすぎて、相手との関係を築くことが難しくなることがある。この時期には、意識的にコミュニケーションを取る努力が必要となる。

  • 人間関係: 人間関係においては、他者との関わりを避け、自分一人で問題を解決しようとする傾向が強まる。これにより、他者との距離が広がり、孤立感を深める危険がある。逆位置の隠者は、時には他者の助けや意見を受け入れることの重要性を示している。

  • 仕事: 仕事においては、自分一人で全てを背負い込み、他者との協力を拒む傾向が強まる。この結果、効率が悪くなり、ストレスが増加する可能性がある。チームワークや他者の意見を取り入れることが重要である。

  • お金: 金銭面では、過度の節約や貯蓄への執着が強まり、必要な投資や支出を避ける傾向が出てくることがある。逆位置の隠者は、バランスを取り、金銭的な問題に対して柔軟なアプローチを取る必要性を示唆している。

隠者のカードは、内省や自己探求の重要性を強調する一方で、それが行き過ぎた場合の危険性も示している。このカードが現れる時期は、自分自身と向き合うことが求められるが、同時に外界とのバランスを保つことも忘れてはならない。

動画解説

隠者は、周囲の喧騒を遮断し、内なる心をじっくりと見つめ直すことで、正しい道が見えてくることを教えてくれます。他者の評価や世間体に左右されず、自分自身を振り返り導き出した結論こそが真実の答えであるということです。

私たちは、困難や苦しみに直面すると、その問題に囚われ、自分の目指すべき本質や目的を見失ってしまいがちです。そのため、常に自分が目指すべき位置を見失わず、目標を達成した未来の自分から客観的なアドバイスを受けることが重要です。
今の自分をより高い視点から見つめ直すこと、いわゆる俯瞰思考やメタ認知思考と呼ばれるものですが、隠者はこれにより自分の心の声を聞く時が来たことを教えてくれています。

このカードは実は「愚者」とも似ています。絵柄の雰囲気は暗く対照的ですが、「これから旅に出る」という観点では共通しています。また、「愚者」のカードにも描かれている雪山が「隠者」の絵柄にも描かれているのも共通点です。
78枚のカードの中で、雪山が描かれているのは「愚者」と「隠者」の2枚だけです。「隠者」がしっかりと地に足をつけている様子を見てください。「愚者」はワクワクした様子で今にも歩き出しそうですが、「隠者」は大地にしっかりと足をつけて立っています。これは、安定感や落ち着きを象徴しています。

さらに、「隠者」が持っているランタンの火は六芒星を表しています。六芒星は、正三角形と逆三角形の組み合わせで、人間の可能性や完成度の高い物事を象徴しています。また、火を灯す行為そのものが四大元素を操る意味も含んでおり、自分と向き合い、思考・感情・行動・環境を整えることで、願いを叶え周囲に影響を与えることを示しています。「隠者」のマントがグレーであることは、拒絶する必要がない、あるいはニュートラルであることを意味しています。

「隠者」のカードは、暗いイメージからもわかるように、孤独を象徴しています。孤独とは、世間から身を引き、一人静かに考えることです。外に向かうのではなく、周囲の声や雑音を一切遮断し、自分と向き合うカードと言えるでしょう。自分の内側を見つめ直すことは、自分探しの旅でもあります。

また、「隠者」には、経験から得た知識、そして宇宙の法則を知り尽くした深い知恵があります。「隠者」が持っている杖は、知恵を持ち、導きを与える指導力を表しています。

今まで紹介したカードの中にも、知性や知恵を象徴するものがありましたので、比較していきましょう。
1番の「魔術師」は、成長過程で得る知識やその応用力を表しており、学校での学びや知性を指します。
2番の「女教皇」は、生まれ持った本能的な知恵や直感に従いながらも、冷静に物事を論理的に判断する能力を表しています。
そして、5番の「教皇」は、モラルを基にした導きを示しています。

「隠者」も杖を持っていますが、これは火を象徴しています。「隠者」のランタンの火と杖の火、この2つの火は「卒業」を意味しています。火を2つ持つカードは、大アルカナの「世界」のカードでも見られ、これも完成や卒業を意味しています。
「隠者」のカードの場合、現実世界を卒業し、今までの自分を振り返ることを示しています。0番から9番のカードで、一旦現実世界を卒業するという意味が込められているのです。

「隠者」には「内省」というキーワードがありますが、これは自分の内側と向き合い、心の世界の旅に出ることを意味します。

そして、「9」という数字ですが、古くから9には魔法の力があるとされています。
9を掛けた数字は単数に戻すと必ず9に戻るという法則もあります。例えば、9×2は18で、1+8は9になります。同様に、9×3は27で、2+7は9です。この数字の特性からも、自分を見つめ直し、原点に立ち返ることが、あなたの夢を叶える秘訣であるとこのカードが教えてくれているのが伝わってきます。

次に、「隠者」が正位置で出た場合の意味を解説していきます。
これは、一旦高い視点から自分自身を振り返り、客観的な目で自分を見つめる必要があることや、困難を乗り越え鍛えられた自分がいることを示しています。
これまでの経験は実績となり、安心して進むことができるというメッセージや、自分の信じる道は、心の声を探求することが重要であること、慎重に一歩ずつ進むべきであること、焦らずにゆっくりと物事を俯瞰して考えるべきであるという意味が込められています。また、秘密や隠し事がある場合にも「隠者」のカードはよく現れます。不倫の恋や訳ありの愛などの場合にも、このカードが登場することがあります。

逆位置で出た場合には、現実逃避しすぎている、反省が足りない、経験や知識を生かせず失敗してしまう、視野が狭い、冷静さを欠いている、偏屈になっている、孤独に不安を感じている、あるいは秘密が露見するなどの意味があります。特に不倫の場合、逆位置で出るとその不倫がバレる可能性が高まります。

逆位置が出た際には、現実逃避してしまう本当の理由は何か、自分だけが良いと思い込んでいないか、周囲の状況が見えていないのではないか、一人よがりになっていないか、経験や知識を生かせていない原因は何か、周囲をきちんと俯瞰できているか、冷静に考えられているか、知恵のある人の意見を取り入れ、それを自分のものとして活かせているかを考えることで、解決の糸口が見えてきます。

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