早く芽を出せ柿の種【鑑定小説】
杏奈(仮名)が抱える心のゆらぎは、誰にも告げることができず、老齢の占い師の元に辿り着いた。
彼女は既婚者でありながら、ひとまわり歳上の男性に心惹かれていた。
彼とは共通点が多かった。推しが同じ、両手がマスカケ線、血液型が同じAB型、さらに中学の英語の先生まで同じだったり……
それらの偶然が重なり、杏奈にとって特別な運命の縁を感じさせるものだった。
杏奈が占い師に語りかけると、彼女の気持ちが手に取るように伝わってきた。彼女が求めるのは、彼の気持ちと、二人の関係がどのように進展していくのかという未来の指針だった。占い師は四柱推命と易を用いて、彼女の問いに答え始めた。
「相性は悪くないですね、中の上といったところでしょうか。しかし、出会った時期は恋愛を育む季節ではないようです。今は同好の士としての結びつきが強いようですね。あなたが感じる恋心は、彼にとってはまだ意識の外にあるものでしょう……」
占い師はさらに彼の現在の気持ちを易で読み解いた。易が示すのは、穏やかで信頼に満ちた関係。
「彼はあなたに対して深い信頼を寄せています。しかし、その感情は恋愛とは違うようです。彼の心にあるのは、少年のような純粋な好意です。プラトニックな関係とでも言いましょうか……しかし、そのことについて焦ることはありません。あなたにとっての恋の季節は必ずやってきます。」
杏奈が進展の時期について問うと、占い師はこう答えた。
「進展が訪れるのは2027年以降になります。今はまだ、彼の心に春の兆しが見えただけにすぎません。その春が彼に訪れるのが2027年です。あなたの恋が本格的に動き出すのは、彼がその春を迎えてからになるでしょう。」
占い師は、2027年には彼の家庭にも何かしらの変化がある可能性が高いことを示唆した。それは、杏奈にとっても運命の歯車が動き出すタイミングである。
「昔ばなしの『さるかに合戦』じゃないですが『早く芽をだせ柿の種、出さなきゃハサミでちょん切るぞ~』と自然に柿の実がなるのを待つことができず、焦って脅かしてでも芽を出させようというするような焦りは禁物ということです。今は芽が出るか出ないかの大切な時期です。水やりを徹底するする時期ですね。たとえば、川上で大きなおいしそうな桃を流した人がいたなれば、川下の人は桃がどんぶらこ~どんぶらこ~と流れてくるのをただ待つだけですよね。未来に芽が出ることがわかっている、桃が流れつくことがわかっているのですから、あとは自然に任せるしかないですよね。時が来れば、すべてが動き出します。桃が早く流れて来てほしいからといって運河を掘る必要はないんです。易は、進展ありと告げているのですから、余計な計らいは無用なんです。焦れば、なるものもならなくなってしまいます……」
占い師は、杏奈にさらに全体運を占い、こう付け加えた。
「あなたの運気は上昇期に入っています。2028年がピークとなるでしょう。今は、人生の中で最も良い時期を迎えているのです。ですからおおらかに、明るい気持ちで過ごすことが、幸運を引き寄せる鍵となるんです。焦らず、時を待つことが重要です。そうすれば、あなたの望む未来が訪れることになりましょう。」
杏奈は、占い師の言葉を胸に、焦らず彼との関係を大切にしながら、自然体で過ごしていくことを決意した。
彼女の心には、春が訪れる日を信じる穏やかさが宿っていた。
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