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誘惑の庭園で咲く特別な花【鑑定小説】

香は銀行で日々の業務に追われながらも、心の片隅に一つの悩みを抱えていた。彼女の心を揺さぶるのは、3年近く続いている泰男との関係。二人はW不倫という複雑な関係に足を踏み入れてしまった。もともとは別々の支店で働いていたが、4月の異動で泰男が香の職場に来たことで、二人の距離はさらに縮まった。

だが、その距離感が逆に二人の関係を冷え込ませているようだった。同じ職場で顔を合わせることが日常となり、かつてのような情熱的なデートは一度もなかった。香は占い師に彼の気持ちを尋ねた。

「泰男さんの気持ちは確かにあります。ただし、彼は積極的ではなく、むしろ受け身です。あなたが背を向けている姿を追いかける彼の姿が浮かびます。しかし、それは情熱的な追いかけ方ではなく、どこかためらいがあるんです」

香はその言葉に胸を痛めた。彼にとって、自分はどんな存在なのだろうか。二人の間に、何か決定的な変化があったのではないかと、彼女は疑念を抱いていた。

「彼にとって、あなたは特別な存在であることに変わりはありません。ただし、彼が消極的な理由は、おそらく職場の関係が影響しているでしょう。銀行のような厳格な職場での関係は、特に慎重にならざるを得ませんからね」

この言葉を聞いて、香は少し安心した。彼女の不安は職場という環境が生み出したものであり、彼の気持ちが冷めたわけではないと理解できた。しかし、彼が他の女性に好意を抱いているのではないかという疑念は、どうしても消えなかった。

「泰男さんが他の女性に好意を持っているかどうかを見てみましょう……。お待たせしました。確かに彼には好意を持っている相手がいます。しかし、その関係が進展することはありません。なぜなら、彼にとってその相手は分不相応な存在だからです」

この「分不相応」という言葉に、香は少し驚いた。泰男が理想の女性を求めているということだろうか?占い師は続けた。

「これは多くの男性に共通することですが、良い女がいれば目が移るのが本能です。一途な男性は珍しいものです。しかし、泰男さんの場合、その相手とは付き合っているわけではなく、ただの好意に過ぎません」

この言葉を聞いて、香は自分の立場を再確認した。彼は恋多き男性であり、これからも様々な出会いを求めるだろうという事実が浮かび上がった。

「彼の命式を見ると、人から好かれる素質を持っています。道でよく道を尋ねられるようなタイプの男性ですね。そんな彼は、これからも魅力的な女性に出会えば、自然にアプローチをするでしょう。それは彼の本能に近いものです。ですが、あなたにとって泰男さんは特別な存在であることを忘れないでください」

香はこれまでの彼の行動を振り返り、その言葉の意味を深く考えた。泰男の消極的な態度は、職場での関係や自分自身の立場を守るためであり、決して彼の気持ちが冷めたわけではない。それでも、彼が他の女性に目移りするのは、彼の持つ自然な本能であると理解しなければならなかった。

それはまるで、色とりどりの花が咲き乱れる庭を散歩しているかのようなものだ。どの花も美しく、魅力的だと感じるが、それでも特別な花に目を奪われ、香りを楽しむ時間があるように。

香にとって泰男は、そんな庭の中の特別な花であり、その美しさに引き寄せられるのは自然なことなのだろう。だが、それが必ずしも永遠に続くとは限らない。彼女の心の中で、彼との関係に対する疑念が、今後どのように変化していくのかは、まだ未知数であった。

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