12.吊るされた男(The Hanged Man)《タロットカード解説》
吊るされた男全体解説
《吊るされた男》(The Hanged Man)は、タロットカードの大アルカナに属するカードであり、その象徴性は非常に深遠で哲学的なものを含んでいる。カードには、片足を十字架にかけられた男が逆さまに吊るされている姿が描かれている。この男は、不安や苦しみの象徴ではなく、むしろ受け入れと瞑想の姿勢を示している。
吊るされた男は、状況に対する受動的な対応や、逆境の中での内省を表す。彼は自らの意思でこの状況に身を置いていると考えられ、その目的は新たな視点や洞察を得るためだ。伝統的に、このカードは「犠牲」や「自己犠牲」、「受容」を象徴するが、それは単なる自己犠牲ではなく、高次の理解や精神的な目覚めに向けたものである。
背景の穏やかな色調や吊るされた男の穏やかな表情からは、この状況が必ずしも苦痛を伴うものではないことを示唆している。また、彼の頭部に光が差し込んでいる描写は、「啓示」や「悟り」を象徴しており、吊るされた状態で得られる新たな視点や知恵を暗示している。
吊るされた男は、人生における停滞や変化の時期を示すことが多い。このカードが現れるとき、それは何かを手放す必要があることや、古い価値観や考え方を捨てて、新しい視点を得るための時間を取る必要があることを示している。一般的に、このカードは行動する時ではなく、静観する時であることを示唆する。
正位置の解釈
恋愛:
恋愛において《吊るされた男》の正位置が出た場合、それは関係に対する新たな視点やアプローチが必要であることを示している。現状に満足していない場合、無理に状況を変えようとするのではなく、まずは状況を冷静に受け入れ、内省することが重要だ。また、相手の立場や感情を理解しようとする姿勢が求められることもある。このカードは、相手や自分の本当の気持ちに気づくことで、関係性をより深める可能性を示唆している。
人間関係:
人間関係全般において、このカードは相手の視点を理解することや、誤解を解くための努力を求める。衝突や意見の相違がある場合、それを無理に解決しようとするのではなく、少し時間を置いて冷静に考えることが必要だ。自分の価値観や考え方を一時的に手放し、他者の視点から物事を見てみることで、より良い関係が築ける可能性が高い。
仕事:
仕事の場面でこのカードが現れると、それは行き詰まりや変化の必要性を示唆している。現状に不満がある場合、無理に状況を変えようとするよりも、今は静観し、状況を俯瞰的に見つめる時期だというメッセージを伝えている。新たな方法や視点が見つかるまで、現状を受け入れることで、後々の成功への道が開ける可能性がある。
お金:
金銭面で《吊るされた男》の正位置が出た場合、今は大きな決断や投資を控える時期であることを示している。経済的な状況を冷静に分析し、無理にリスクを取らないことが重要だ。現状に満足せず、新たな収入源や節約方法を見つけるために、一歩下がって考える時間を持つことが求められる。
逆位置の解釈
恋愛:
逆位置で《吊るされた男》が出た場合、それは関係性の停滞や進展の遅れを示すことがある。相手に対する不満や、変化を求める気持ちが強まっているかもしれない。しかし、無理に状況を変えようとすると、逆効果を招く可能性が高い。今は焦らず、関係が自然に進展するのを待つ時期だ。
人間関係:
人間関係において、逆位置の《吊るされた男》は、誤解やコミュニケーションの停滞を示すことがある。相手の視点を理解しようとする努力が足りない場合や、自分の意見に固執しすぎることで、関係が悪化する可能性がある。このカードが出た場合、自分の態度を見直し、他者に対して柔軟になることが求められる。
仕事:
仕事面でこのカードが逆位置に出た場合、行き詰まりや停滞感が強く、進展が見込めない状況を示している。変化を求めて焦る気持ちが強いかもしれないが、今は無理に動かず、状況を冷静に見つめ直す時期だ。問題を解決するためには、新しいアプローチや視点を見つける必要がある。
お金:
金銭面で逆位置の《吊るされた男》が出た場合、経済的な停滞や不安が高まっていることを示す。焦って大きな決断を下すと、逆に損失を招く可能性がある。今は大きな投資や無理な支出を避け、冷静に状況を見極めることが重要だ。
動画解説
吊るされた男のカード、タロット大アルカナの12番に位置するこのカードは、自らを犠牲にしつつも、固定された状況を乗り越え、新たな視点や価値を得ることを象徴しています。
カードの図像に注目すると、若い男性が両手を縛られ木に吊るされているにもかかわらず、まったく苦しそうに見えません。むしろ微笑んでいるようにも感じられるのです。カード全体に広がる灰色の色調は、一見するとネガティブな印象を与えるかもしれませんが、実際にはそうではありません。このカードは、視点を変えることで新たな価値に気づくことができるというメッセージを伝えています。
例えば、これまで仕事やお金、出世のみを追求してきた人が、病気をきっかけに健康の大切さや周囲の人々からの支援に気づき、感謝の念を抱くようになることがあります。このように、価値観の変化を通じて、以前は当たり前と思っていたことが、実はとても貴重であることに気づかされるのです。
カードの背景に描かれた枯れた枝は、人生における挫折や失敗を象徴しています。これらの経験を乗り越えることで人は成長します。さらに、枯れた枝から新たな葉が芽生えていることから、失敗や挫折がやがて報われることを示唆しています。失敗を恐れる必要はなく、それが成功への道標であると考えれば、勇気が湧いてきます。
発明家エジソンが電球の開発に1万回失敗したとき、友人から諦めるように勧められましたが、彼は「失敗したのではなく、1万通りのうまくいかない方法を発見しただけだ」と答えた逸話は有名です。失敗を重ねた末に、彼は世界中の人々に恩恵をもたらす大発明を成し遂げたのです。このように、失敗や挫折が成功への鍵となることが、吊るされた男のカードに込められたメッセージの一部です。
さらに、このカードの男性の頭には後光が差しており、彼が得た発見や魂の成長が神聖なものと認められたことを示しています。彼の赤と青の衣服は、精神的な葛藤を表し、水のように柔軟でありながらも、自分の意思を曲げたくないという内面的な対立を象徴しています。
このカードの数字「12」は、再生と救済を表します。12は、太陽暦の12か月や、東西の占星術における12の星座や干支といった完結するサイクルの象徴でもあります。つまり、このカードは、すべての手を尽くしてもなお動きが取れない状況に陥ったとき、その状況から何を学べるかを考える必要があることを示唆しています。
また、12番目の魚座は古い周期の終わりと新しい周期の始まりを意味し、自己犠牲やスピリチュアルな目覚めを象徴します。魚座は2匹の魚が異なる方向に泳ぐ姿で描かれており、相反するものを調和させる難しさや、無駄をも示しています。魚座の特性が、この吊るされた男のカードに繋がっているのです。
カードの読み方として、正位置で出た場合、自己犠牲や身動きが取れない状態が強調され、新たな視点を得ること、内面的な成長が鍵となります。一方、逆位置では自己犠牲が愛からではなく、自分本位やエゴが強くなる傾向があります。無償の愛ではなく、見返りを求める行動は、結果としてうまくいかないことが多いでしょう。逆位置で出た場合は、自己の動機や行動が周囲のためになっているかを見直す必要があります。