大阪の冬
幼い頃は寒い季節が大嫌いで、一年中夏になればいいと思っていた。
大阪のような中途半端な気候は、北海道みたいに命を脅かすような寒さが来ないので、暖房も中途半端、おまけに木造の昔ながらの家屋は隙間だらけでとても寒かった。
50年前の小学生の男子はなぜか冬でも半ズボンをはかされていて、中学生になっても学生服の上はコートも無く、冬はいつも鳥肌になっていた記憶がある。大阪の冬の空はいつも曇天だ。おとなになっても冬嫌いは変わらず、冬の気持ちは曇天の空とシンクロしていた。
何年か横浜に住んだが、気温は低いけど晴れが多い関東の冬は大阪より暖かく感じた。寒い季節というよりは、大阪の冬が嫌いだったのかもしれない。
引っ越しを繰り返し、大阪に戻ってきた頃には、だいぶ様子が変わっていた。
沖縄でしか見たことがなかったイソヒヨドリが年中近所で鳴いている。
ベランダのハイビスカスが枯れないで冬を越した。
11月になっても、飼っているクサガメが冬眠に入らない。
霜柱や池に氷が張るのを見なくなった、野外の冬のアイススケートリンクも無くなった。
夕立というよりもスコールといったほうがいいような通り雨が多くなった。
冷房が嫌いで、クーラーは滅多につけなかったが、今年は夏の間冷房を止める日がなかった。幼い頃に憧れた「亜熱帯気候」になったような感じだ。
だけど暑くなってわかったことだが、海に囲まれていない大阪は沖縄になれない。大阪北部はほぼ内陸気候なので酷暑となる。陸地は熱しやすく冷めやすいのだ。
異常気象のニュースは絶えない、四季が二季になったとだれかが言っていた。今年の冬もどうなることか、気象予報士も予測しかねている感じだ。
今はまさに想像していなかった未来になっている。
好き嫌いじゃなく極端な暑さ寒さは命に関わる年齢になってきた。
十年後はどうなっているか?想像なんか出来ない。