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第3部-1 「やりたいこと」を見つけるのではなく、手放す
第3部:自分の本当の意志を見つけるには?
まずは「外部から与えられた価値観」に気づく
私たちは「やりたいことを見つけなければならない」と思い込みがちです。しかし、その考え自体が社会や周囲の影響によって作られたものかもしれません。学校教育や職場の文化、家族の期待、SNSなど、外部の要因が私たちの価値観を形作っています。それに気づかないままでいると、「本当の自分の望み」ではなく、「周囲に認められる選択」を無意識に追い求めてしまうのです。
例えば、「安定した職業に就くべき」「成功とは高収入を得ること」という考えは、社会が作り出した価値観の一例です。こうした価値観を疑うことなく受け入れてしまうと、「やりたいことが分からない」と感じるのも当然でしょう。なぜなら、それは自分の内側から生まれた欲求ではなく、外部から植え付けられたものだからです。
私たちは幼い頃から、親や教師、友人、さらにはメディアの影響を受けながら価値観を形成していきます。例えば、親が「一流企業に入ることが成功だ」と信じている場合、その価値観を無意識のうちに受け入れ、そこに向かって努力するようになります。あるいは、SNS上で「好きなことを仕事にして自由に生きることが理想」と繰り返し目にすると、それが成功の象徴であると感じるようになります。しかし、これらの価値観が自分に本当に合っているとは限りません。
まずは、自分がどのような価値観を持っているのかを振り返り、それが本当に自分にとって大切なものなのかを見極めることが重要です。
自分にとって本当に大切なものを見極める方法
やりたいことを見つけるのではなく、余分なものを手放していくことで、本当に大切なものが浮かび上がってきます。そのための方法として、次のようなステップが考えられます。
1. 「こうあるべき」という思い込みを書き出す
まず、自分が「こうしなければならない」と思っていることをリストアップしてみましょう。「安定した職業に就くべき」「成功するには有名企業に入るべき」など、自分が持っている固定観念を書き出すことで、自分の選択に影響を与えている要因を客観的に見つめることができます。
ここでのポイントはただ考えるだけではなく、「書き出す」ことです。思いついたことを、全てノートや紙に書き出してみましょう。
2. それがどこから来たのかを考える
次に、その思い込みがどこから来たのかを考えてみましょう。親の価値観、学校教育、メディアの影響、過去の経験など、さまざまな要因が影響しているはずです。この作業を通じて、自分が無意識に受け入れてきた価値観に気づくことができます。
3. それを手放してみる
「この価値観がなくなったらどうなるか?」と自問してみることも大切です。「安定した職業に就かなくても、自分らしく生きられるか?」「高収入ではなくても、充実した人生を送れるか?」と考えてみることで、新たな可能性に気づくことができます。
また、「他人の期待に応えるために選択していないか?」と問い直すことも有効です。たとえば、親や社会の期待を満たすために進んだ道が、本当に自分の求める道なのかを冷静に振り返ることで、今後の選択の方向性が変わるかもしれません。
さらに、実際に「手放す」体験をしてみるのも良いでしょう。たとえば、週末の時間を「すべきこと」ではなく、「したいこと」に充ててみることで、自分にとって何が本当に重要なのかが見えてくることがあります。意図的に「やらなければならないこと」を減らしてみることで、自分にとって価値のある時間が何なのかを再確認できます。
4. 直感を信じる
多くの場合、私たちは「合理的な選択」をしようとします。しかし、直感的に「楽しい」「心が動く」と感じることには、大切なヒントが隠されています。幼少期に夢中になっていたことや、時間を忘れて没頭できることがあれば、それが自分にとって価値のある選択肢の一つかもしれません。
5. 小さな選択から始める
すぐに大きな決断をする必要はありません。たとえば、新しい趣味を試す、異なる価値観を持つ人と話してみる、小さな行動を積み重ねることで、徐々に「自分にとって本当に大切なもの」が明確になっていきます。
こうしたプロセスを繰り返すことで、外部から与えられた価値観ではなく、自分にとって本当に大切なものが何なのかが明確になっていきます。
次は、「決められない」ことを受け入れることの重要性について考えていきます。